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つり人編集部2026年4月27日

知れば知るほど面白いナマズの生態学。ゲリラ豪雨も活用?驚きの繁殖戦略

愛嬌のある顔が特徴の大型淡水魚、ナマズ。田園の水路や小川だけでなく、近年は護岸されている都市河川にも進出している。対照的な環境に思えるが、どちらにも共通項があるのだ。 そんなナマズの生態を解き明かしていこう。

著者:工藤孝浩

解説◎工藤孝浩

海や魚に関する書籍やテレビ番組などの監修も数多く手がけるスペシャリスト。

目次

     

魅力的なナマズの生態

用水路のガサガサで採れた50cm超のナマズ

水ぬるむ季節、川べりに手網を突っ込んで小魚を採る「ガサガサ」は、子や孫とも楽しめる川遊びだ。私の場合、ガサガサで最高にアガる獲物はナマズである。ヌメっとした体に大きな頭、怖そうな大口に愛嬌ある小さな目。淡水魚でナマズほど魅力的なキャラは他にないと思う。

そして何よりも、出会いが衝撃的なのである。幅30cmほどの小川で50cm超のナマズが手網に入った時などは、口から心臓が飛び出すかと思うほど興奮する。

なぜ、こんな巨魚がこんな所にいるの?
ずっとここで暮らしているの?

網の中でのたうつナマズに次々と湧く疑問符。そんなナマズの不思議を解き明かしていきたい。

大型ナマズが採れる用水路
時期によっては、こんな用水路のガサガサで大型ナマズが採れる

振動や水流を感知?ナマズの捕食行動

図鑑には「夜行性の動物食性で、昼間は物陰などにひそみ、夜になると口ヒゲでエサを探し、どん欲に食べる。」と書かれているが、捕食行動は釣り人が最も知りたいテーマであろう。

私の職場では、大きなコンクリート水槽で30〜60cm超の中大型ナマズを飼育している。日中、ナマズたちはそれぞれお気に入りの塩ビ管に入ったままで、泳ぐ姿を見たことがない。大形肉食魚用のエサとして小型の冷凍アユ(職場で飼育し選別されたアユの有効利用)を与えているが、捕食シーンは見られない。アユからはよく臭いが出ており、隣の水槽のウナギは日中でも塩ビ管から出てきて食べるのだが、ナマズは反応しない。

アユへの関心が薄いので、タモロコやモツゴを泳がせておいたところ、アユを食べ残した夜にそれらの数が減っていた。死んだアユより活きた雑魚のほうが魅力的なようだ。

一般的に言われるように、化学物質をサーチするヒゲでエサを探すのなら、死んだアユの臭いが効くはず。それよりも、動く魚が発する振動やキラメキが捕食行動を促したのではなかろうか。

このエピソードは、ナマズは水の流れや振動を感知する側線器官や眼を使ってエサを探すことを示唆しており、伝統的なカエルをエサにしたポカン釣りや最近流行しているルアー釣りが釣果をあげていることとも符合する。

側線器官が目立つ個体
側線器官が目立つ個体。側線は体側中央を縦走するだけではなく、15本前後が背面を横断して網目状となる

尾ビレの形で判別可能!ナマズの雌雄(オスメス)の見分け方

ナマズの雌雄は、尾ビレの形で見分けられる。雄は尾ビレ後縁の切れ込みが雌に比べてやや深く、雌は切れ込みがごく浅いかほとんど無い。 産卵期には、体形の違いから雌雄を見分けることができる。雌は腹部が膨らみ、上から見ると巨大なオタマジャクシのように見える。しかし、エサを飽食した雄も同様な体形になるので注意が必要。

また、雌は雄よりも大型になる。成長の早さには雌雄差がないと考えられるので、これは雌が長寿なことによる。産卵場で観察されるペアは、通常は大型の雌と小型の雄の組み合わせだが、産卵に参加する雌は高齢魚が多く、雄は若齢魚が多いことの現われである。

雄のナマズの尾ビレ
雄のナマズの尾ビレ(後縁部の切れ込みがやや深い)
雌のナマズの尾ビレ
雌のナマズの尾ビレ(老成魚のため擦り切れているが、後縁部の切れ込みが認められない)

産卵期は4〜7月。増水した「氾濫原」を利用する独自の繁殖戦略

産卵は4〜7月の増水期に、夜間に川から水田や用水路に入り込んで行なわれる。雌の体に雄が巻き付き、そのままの体勢で背が出るような浅い場所を泳ぎ回りながら卵を広くばらまく。直径5mm近くもあるゼリー層に覆われた卵は泥や水草の上にまき散らされたまま発生を続け、わずか2日あまりでふ化する。ふ化仔魚は大きくしっかりした体つきで、すぐにエサを摂りはじめる。

ナマズが水田で産卵するようになったのは、稲作が広まって湿地帯が水田へと変えられたここ2000年ほどのこと。それ以前は、洪水時に水に浸かる陸地(氾濫原)に泳ぎ出て産卵していたと考えられる。卵は短時間でふ化し、すぐに泳げてエサも摂れる仔魚は洪水の水が引くまでに川に戻り、陸上にとり残されることはない。

イワシからマグロまで、海水魚の産卵は産みっ放しが普通だが、狭い水域に多くの魚が暮らす淡水魚は、さまざまなやり方で卵を保護する。川底を掘って卵を埋めるサケ類、石の裏に産みつけるカジカ・ハゼ類、鳥のような巣をつくるトゲウオ類から二枚貝の体内に産むタナゴ類まで。コイやフナ類でも、水草の葉裏や植物の根の茂みに産みつける。

ナマズのような産みっ放しでは、他の魚が多くいる所ではほとんどの卵が食べられてしまう。捕食者がいない場所として、増水時に一時だけ水に浸かる氾濫原に乗り出して産卵するようになったと考えられる。

水田で育つナマズの稚魚
水田で育つナマズの稚魚(全長2cm)これより小さなステージでは3対のヒゲをもつ

水田を代わりの産卵場に。稲作とともに繁栄したナマズの歴史

人間が川に堤防を築いて洪水を押しとどめると、ナマズは産卵場を失うことになる。しかし、同時に人間が造った水田が代わりの産卵場として機能したのである。ナマズは、川と水田とを、用水路を介して行き来しながら稲作とともに長く繁栄してきたのである。

しかし近年、田園地帯では「ナマズが減ってしまった」との声が多く聞かれる。その一番の要因は、水田の給排水を効率化するために、ポンプで水をくみ上げたり、水田と用水路との落差を大きくする圃場整備によって、ナマズの行き来が難しくなったためにほかならない。

また、増水という環境かく乱を繁殖に利用してきたナマズであるが、近年頻発するゲリラ豪雨や激甚化する水害は、ナマズの適応範囲を超えてしまったのかも知れない。

ナマズが水田へ移動する用水路
産卵期のナマズは川から用水路を通って水田に移動する。近年は圃場整備のため魚にやさしい素掘りの用水路が激減している

都会の都市河川でナマズが増加中?ゲリラ豪雨がもたらす意外な産卵場

都会の川
都市河川では親水護岸に改修されたり、河道内に植生が回復して、ナマズが住みやすくなっている

近年、私が住む横浜をはじめとする各地の都市河川ではナマズが復活しており、意外な場所でナマズ釣りが楽しめるようになっている。

まず、下水道の整備によって水質が向上し、ナマズのエサとなるさまざまな生物が増えてきたことが第一の要因であろう。そのうえで、田園地帯とは対照的に、都市河川ではゲリラ豪雨のような激しい環境かく乱が新たな産卵場を創出している可能性を指摘したい。

都市部の川は、水量の増減が激しいうえ、水が溢れることは絶対に許されない。そのために、十二分な河道幅をもたせた河川整備が行われる。平水時は陸化した広い河道に細い流れがあるだけだが、増水時には河道内の広い陸地が水に浸かって絶好の産卵場が無数に形成されるものと考えられる。

これは私の仮説であるが、謎多き都会のナマズの生態はとても興味深く、好奇心をくすぐるものである。

複断面化した都市河川
河道内に、常時水が流れる低水敷と増水時に水没する高水敷とを備えた複断面化した都市河川。平水時は陸化している高水敷が産卵場になる可能性がある

※このページは『月刊つり人2021年7月号』に掲載した記事を情報更新・再編集したものです。

ナマズ 環境レポート 淡水の釣り

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列島をゆるがすコロナウイルス。けれども、日増しに暖かくなる春の日を、じっと家にこもって過ごすのはやっぱり体によくない。その点、手軽な海の釣りは、風も気持ちよく、大人も子どもも、思い切り深呼吸しながら時間を過ごせる。ウミタナゴ、メジナ、クロダイ、カレイ、アオリイカ、カサゴ……。元気な魚たちが泳ぐフィールドで、がんばろう、ニッポン! そのほか、3名手の渓流解禁レポート、里川で見つかる美味しい道草、みちのくタナゴ旅など旬の釣り満載でお届け。

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