関西の川、湖沼、海であらゆるジャンルの釣りをする仲谷聡さんが、富山県の小矢部川にアユルアーの旅に出た。初場所をランガンスタイルで探り、ノベルアーも楽しんだ。
関西の川、湖沼、海であらゆるジャンルの釣りをする仲谷聡さんが、富山県の小矢部川にアユルアーの旅に出た。初場所をランガンスタイルで探り、ノベルアーも楽しんだ。
写真と文◎編集部
天然アユも多く、良型が狙える富山県・小矢部川
「年間110日、休みの日は全部釣りです。とにかくやりたい釣りが多すぎて、ひとつの釣りをなかなか極めることができません(笑)」
そう話す仲谷聡さん(60)は大阪府大阪市で生まれ育った。ヘラブナ釣りが大好きな父親の影響で釣りを始め、子どもの頃はタナゴ、テナガエビ、ホンモロコといった小もの釣りに熱中し、ブラックバスに魅せられるとルアーとフライを同時にやるようになったというからユニークだ。
サーフキャスティングの本格的な投げ釣りにものめり込み、アマゴやイワナをねらう渓流釣りはルアーもやればフライとテンカラも楽しみ、大阪湾のアジ、タチウオなどの船釣りにも熱心である。またカワムツをルアーで釣る「カワムツング」や琵琶湖の「ケタバスミノーイング」など、清流や湖沼の小魚をルアーで釣ることにも親しんでいる。
どんなターゲットを釣るのにも工夫と遊び心を忘れず、その自由な発想で生み出したゴールデンミーン(中央漁具)の製品は多い。そして5年前から魅せられているのがアユルアーだという。
「カツイチさんが仕掛けた『リアユ』というアユルアーがあります。監修者の久保浩一さんに誘われて始めたのが最初で、以来バス用ルアーなどさまざまなルアーを試しながら、今では夏を満喫する釣りのひとつになりました。何がいいって釣果を出すのに朝マヅメや夕マヅメといった限られた時合に縛られず、ド日中の適当な時間に行っても楽しめるのがありがたい(笑)」
これまで安曇川や愛知(えち)川といった琵琶湖の流入河川や奈良県吉野川上流部(川上村)の中奥川を中心にアユルアーを楽しんできたが、今夏ぜひとも訪れてみたいと思っていた川が富山県の小矢部川だった。
「掛かるアユが良型で天然も多いと聞いています。日券がなくとも年券が4000円と格安なのがうれしい。私は船釣りも楽しみますが、遊漁船では1日1万円以上の釣行費がかかります。アユ釣りは同じくらいの値段で年券が買えるので安いもの。今夏は釣ったことのない新鮮な川に通い込んでみたいです」
仲谷さんは新機軸となる振り出し式のアユルアーロッド「ブレインストーム鮎BSAC‒110」とルアーも楽しめる万能ノベザオ「イージースティック」を車に積んで小矢部川にやってきた。

アユルアーは専用ルアーじゃなくても釣れる?
最初に訪れたのは福吉橋の上流である。両岸に駐車スペースがあって入川しやすい。土手からは川底の各所で食んでいるアユの姿が確認でき期待も膨らむ。
「想像していたよりも釣りやすそうな川ですね」とロッドを伸ばす。なぜ振り出しモデルを考案したかと聞けばアユルアーもランガンで楽しむことが多く、車に積むのも持ち運ぶのも振り出しモデルがあれば便利と考えてのこと。全長は11フィート。ロッドは長いほうがルアーの操作もしやすく攻略範囲も広がると仲谷さんはいう。リールは「アンバサダー2500C」。軽いルアーも扱えるようにフィネス用のチューンをしている。ラインはPE0.4号、リーダーはフロロカーボン1.2号を2mほど取る。
仲谷さんのルアーボックスにあるのはミノーが中心だ。専用ルアーによくあるリアルなアユカラーがほとんど入っていない。カラーは「見やすいかどうか」が選ぶ基準。またラパラ「カウントダウン9」やバスルアーのシャッドやミノーも1軍ボックスにある。
「アユルアーは専用ルアーが充実する以前から楽しんでいましたからね。いろいろと試してきたんです。カラーもリアルだから釣れるというわけではないというのが僕の考えです」

最初にセットしたのはPALMS「エスケード100MDF」。中央漁具オリジナルカラーであるイエローウインという背中がチャートで腹がパールホワイトの目立つカラーだ。瀬肩に立ってくるぶしくらいのチャラ瀬の中にダウンに流し込んでいく。リーダーには3つの目印が付いている、視認性の高いミノーと目印によってルアーの位置がよく分かる。ロッドを立て気味に構えて左右に泳がせるようにする。
「ガツガツと追われている感触があるんですが、なかなか掛かりませんねえ」
食んでいるアユはルアーの周りにたくさん見える。しかし追い気が強いのかといえば、そうでもないらしい。この日の小矢部川は普段の水量の半分くらいに減水しており、ナワバリを張るアユが少ないようす。群れになって食んでいるのだ。
そこで仲谷さんはチラシバリをワンサイズ大きな7.5号に替えた。ほどなくして水底に閃光が走って掛かったがバレてしまう。少しずつルアーの位置を変えながら探っていると目印が震えて、下流に向かう。掛かったのだ。そうして抜き上げたのはルアーと同サイズの小型である。「天然遡上が多すぎるのか小ぶりですねえ」と苦笑い。それでも1尾目はうれしいものだ。


遊部大橋下流で連発
昼食を取ってからは遊部(あそべ)大橋の下流に来た。ここでもギラギラと食んでいるアユの姿が多く見えた。しかも型がよい。
期待を胸にルアーを投げ入れると、その瞬間に見えていたアユが消えてしまった。このエリアは投網を打つ漁師さんや友釣りファンも多いことからアユの警戒心が高まっているのだろう。
仲谷さんは木化け石化けでルアーを操作する。群れアユが多く潜みやすいだろう小深く掘れたスポットにバス用ジャークベイトのエバーグリーン「フェイス87」を留めて、群れが来るのを静かに待った。やがて再びギラギラと食むアユの姿が多くなった。仲谷さんは群れを散らさないようにアプローチすると水底にギランと閃光が走り目印が下流に向かってすっ飛んだ。
「これは良型です!」とバレないようにロッドを寝かせてしっかりと曲げて、緩い流れに寄せてから抜き上げた。背掛かりの20cmクラスを手にして仲谷さんは相好を崩した。その後もギラギラと食んでいるアユの位置にルアーを入れては2尾、3尾と追加。

ルアーだからこそ探りやすい支流:ノベルアーで夕バミをねらう
夕方は支流を探ってみようとなり向かったのは山田川だ。ここは小矢部川の支流ながら、庄川のダムから農業用水が入り水量が本流よりも豊富である。川幅が狭いため友釣りはやりにくく、網も入りにくい。ルアーのほうが探りやすい流れである。ここで仲谷さんは「イージースティック」5.4mでノベルアーをやってみる。ルアーでアユを掛けたらそれをオトリにして友釣りも楽しもうという目論みもあった。
16時を回り、夕食みの好機を迎えた。到着したポイントでは食むアユの姿も多かったが、ルアーを入れて探り始めるとまたアユの姿は消えた。山田川のアユも人影に怯えるような状態らしく、アタリは遠い。
仲谷さんはじっくりと丁寧に筋を探っていく。そして食みアユが見え始めた石周りにステイをさせているとガツンという手応えと同時に「イージースティック」が弧を描いた。抜き上げたのは18cmほどだったが、オトリには充分使える。
「最近はルアーをやって、後半は友釣りをする釣行が多いんですよ。私のよく行く関西の釣り場では万能ザオのイージースティックでも充分すぎるくらい友釣りに使えます」
しかしこの日は残念ながら友釣りでの釣果はなかった。例年の小矢部川は8月に入ってから釣果が上向く。終盤には尺アユも有望な大アユ釣りが堪能できる。
仲谷さんは好機を迎えたタイミングの再訪を誓いロッドをたたんだ。

※このページは『つり人 2025年9月号』を再編集したものです。