数々の大物と対峙してきた本流釣りの名手・千島克也さんが、大型のアマゴ、ニジマス、イワナがねらえるといい、通うのが天竜川だ。60cmオーバーのニジマス2尾と尺アマゴを釣りあげた春の一日をレポート。
数々の大物と対峙してきた本流釣りの名手・千島克也さんが、大型のアマゴ、ニジマス、イワナがねらえるといい、通うのが天竜川だ。60cmオーバーのニジマス2尾と尺アマゴを釣りあげた春の一日をレポート。
写真と文◎編集部
夢見る大物がねらえる天竜川の本流トラウト
本流釣りの一番の醍醐味はやはり大型魚をねらえることだろう。イワナやヤマメ、アマゴが渓流ではお目に掛かれないような大きさで泳いでいる。海から遡上してくるサクラマスやサツキマスも本流釣りの対象魚である。
「ガツガツガツっと手もとに伝わってくるアタリは渓流や里川にはない本流のヤマメやアマゴならではの面白いところですね」と語るのは渓流、本流釣りの名手、千島克也さん。利根川でも数々のサクラマスを釣りあげてきた千島さんが、近年足を運んでいるのが、長野県の天竜川である。
天竜川は、長野県の諏訪湖を水源として太平洋に注ぐ。上流域は「暴れ天竜」と呼ばれるほど水勢が強く、日本有数の急流河川だ。支流へ産卵のために遡上していく天竜川で育った大型アマゴは「天竜差し」と呼ばれ、釣り人からも人気が高い。千島さんもその一人で、立派なアマゴ、イワナ、ニジマスの3魚種がねらえる川はなかなかないと話し、足繁く通っている。
.jpg?width=649&height=432&name=04_DSC_9745%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
春のエサはミミズ一択
ゴールデンウイークの中日に天竜川へやってきた千島さんが用意したエサはミミズのみ。「この時期はちょうど田圃の代掻きが始まる頃なんです。代掻きが始まると川に流れ込む泥水の中にミミズが混じっていて、魚たちはこれをよく食べているんですよ。他のエサには見向きもしなくなることもあります」
.jpg?width=649&height=432&name=06_DSC_0683%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
天竜川が流れる伊那市の特産品といえばザザムシだ。ザザムシとはクロカワムシのことで、こちらも渓流魚の常食ではあるが、田仕事で川が濁るこの時期はミミズのほうが好反応だそうだ。
ミミズの刺し方はアピール力の大小で二通り。先端に刺すとミミズの動く幅が大きくなり、中央に刺すと幅は小さくなる。千島さんはその日の状況に応じて使い分けている。
.jpg?width=649&height=432&name=07_DSC_0699%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
サオは千島さんの愛竿、遡P-395M(ダイワ)、仕掛けはフロロカーボン1.25号の通しでハリは渓流用の9号だ。手尻は70cm〜1mほど取っており、魚が掛かった際にサオを立てやすくなることでのされにくくなっている。
ねらいは意外と緩い流れ
この日の朝は冷え込んだが、日の出とともに釣り場へ向かう千島さん。最初のポイントは大久保ダムより少し上流のストレートな流れだ。千島さんは波立つ上流側ではなく、流れの落ち着いた下流側からねらい始めた。
「どの川でも波立つような流れの速いところよりも、流れが少し緩くなったような場所のほうがいいことが多いです。この川で言えばダムで育った魚が遡上してくるわけなので、それほど流れに強いわけではないんじゃないかと考えています」
魚がいる川底にエサを漂わせるために、オモリを底に当てながら流れよりもゆっくり流していくと小さなアタリがあった。何度もアタリがあるようで、ようやく掛けたのは28cmほどの銀毛アマゴだった。
「アタリが曖昧な感じで、アマゴじゃないと思っていました。食い方からして活性はかなり低いようです」
.jpg?width=768&height=432&name=03_DSC_9858%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
9m竿を満月にする60cmニジマス
地形を探りながら徐々に釣り下っていく。田仕事が始まったのか川の水が少し濁ってきた。
「濁りがほどほどに入ったほうが期待できますよ」
樋のように掘れている場所を見つけた千島さんは、そこに魚が溜まっていると考えて丁寧に流していく。抑え込まれるようなアタリに合わせるとサオが大きく絞り込まれ、大きな魚体が3度も連続して飛び跳ねた。ニジマスだ。
千島さんは急いで下りながら腰を落としてサオを目一杯曲げ込む。最初の瞬間的なダッシュは耐えることができたが、今度は流れの中で張り付いてなかなか寄ってこない。ドラグのないノベザオでの一本勝負は魚と釣り人どちらにもかなりの負担が掛かる。力のこもったやり取りの末、千島さんに軍配が上がった。タモからはみ出しながら取り込んだニジマスはヒレピンの60cmだった。
-1.jpg?width=649&height=432&name=02_DSC_9965%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0)-1.jpg)
「このサイズはめったに釣れるものじゃないんですが、天竜川はアマゴだけじゃなくてこういう魚もいるんですよ。生半可な仕掛けだとあっさり切られちゃうので仕掛けを太くしておいてよかったです」
魚の回復を待つ間に仕掛けを入れると、再びサオが満月にしなった。派手な突っ込みはなかったもののランディングしたのは64cmのホウライマス。これだけの大型ニジマスがいるようでは、アマゴは違う場所にいると予想して移動することとなった。
.jpg?width=768&height=432&name=10_DSC_0042r%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
ダム上では尺アマゴ
次に向かったのは大久保ダムのインレットとも言えそうなダム直上の流れだ。この日は減水しており、普段よりも広く探れる。川の色は朝と比べて大分濁ってきた。千島さんは川の中央に走る馬の背を歩き、流心をねらって釣り下っていく。ガツガツとしたアタリではなかったものの合わせるとアマゴ系特有のローリング。軽くいなしてタモ入れしたのは待望の尺アマゴだ。朱点が美しい個体に千島さんもやり切った表情を浮かべる。
「今日は出来過ぎな日でした。朝釣れたニジマスもそうですが、みんなこの下のダムで育ってから遡上してきた魚なんです。だからどの魚もあれだけ幅広で太っているんですよ」
.jpg?width=649&height=432&name=16_DSC_0589%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)
その後は大久保ダムの下流へ移動してみたものの予報通りで9mの本流ザオを振るのは難しいほど風が強くなり、納竿となった。天竜川は毎年5月ごろから徐々に釣れだすようになるそうだが、今年は水温が低いのかどうやら遅れ気味のようす。記事が掲載される頃には本格的に釣れだすようになるのではないだろうか。豊富なエサをたくさん食べて育った見事な体躯の「天竜差し」をねらいに本流へ足を運んでみてはいかがだろうか。
.jpg?width=649&height=432&name=14_DSC_0651%20(%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%A0).jpg)