伝統的工芸品でもある毛バリとともに長い歴史を刻んできたアユの毛バリ釣り。発祥の地・北陸から今では全国各地へ伝承されている。雅な毛バリコレクションとにらめっこするように野アユのご機嫌をうかがう釣り姿は、動の友釣りに対して、静の釣りと言える。アユの毛バリ釣りならではの古きよき情緒を感じてみてはいかが?
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文◎澤渡紀子(日本アユ毛バリ釣り協議会会長)
写真◎澤渡紀子、つり人編集部
東京都杉並区在住。約20年前、アユ毛バリ釣りの第一人者であった父・澤渡要のお目付け役(?)として入門。日本鮎毛バリ釣り団体協議会2代目会長に就任。
毛バリ釣りは、アユに口を使わせる釣り
長い歴史の中でデザインされてきたアユを釣るための毛バリ。その銘柄は数千種を下らないと言われている。現在でも愛用されている古典の名作毛バリだけでも数え切れないほどあり、さらには年々新作も追加されている。
播州・加賀・土佐が誇るアユ毛バリの3大産地
これらのアユ毛バリは伝統的工芸品に認められている兵庫県播州の播州毛バリを中心に北陸石川県金沢の加賀毛バリ、四国土佐の土佐毛バリが3大産地として有名だ。北陸などの一部地域には、組合などに属さないプロのアユ毛バリ師が存在するほか、趣味で巻いているアマチュアのアユ毛バリマニアもいる。
アユ毛バリの造り
アユ毛バリは、ハリの軸頭を丸く固めた漆玉に金箔を貼った金玉(最近はビーズ玉も多い)があり、その下にミノ毛が巻かれたもので基本的に構成されている。胴の部分は色鮮やかな各種の羽根やラメカラーの光りものを組み合わせて個性的なデザインが施され、ハリ軸の腰には2本1組のツノを出すことが特徴だ。アユ毛バリの全体的な色彩は赤系、黒系、茶系(中間色)の3色に大別されている。
アユが毛バリを食う理由とアタリバリを探す面白さ
アユがなぜ毛バリに興味を示して食ってくるのかについては川虫説や石コケ説、反射食い説など諸説があるものの決め手はない。しかし、シーズン初期の若アユやナワバリ意識を持たずに群れで遊泳している遊びアユ、さらにナワバリ意識が薄い早朝や夕方の時間帯によく毛バリに対する活性が高まることは確かだ。
数え切れない毛バリの銘柄の中から河川や天候、時間帯、水況など諸条件を考慮しながら、その日その時のアタリバリを探し当てるゲーム性がアユ毛バリ釣り最大の面白さといえるだろう。ちなみに、日本伝統のアユ毛バリを洋式のフライフィッシングに置き換えるならば、水中を漂わせて誘うウエットフライと考えてもらえばイメージしやすいかもしれない。
アユ毛バリ釣りの主要河川と釣り場、釣期
5月から7月にかけて、全国でアユの毛バリ釣り、友釣り、ルアー釣りが同時解禁される。毛バリ釣り禁止河川もあるので注意したい。
関東から東北まで、アユ毛バリ釣りの人気河川
アユ毛バリ釣りの人気河川はいくつかあり、関東エリアでは栃木県の那珂川と鬼怒川、神奈川県の相模川が3大河川。東海エリアに目を向けると駿河湾に流れ込む大井川や富士川、天竜川などが挙げられる。本場北陸では、富山県の神通川や庄川を筆頭にして、石川県にかけて幾筋もの中小河川があり、地元勢に人気が高い。東北では青森県の赤石川や追良瀬川、秋田県の真瀬川などが有望河川だ。
近年は、大出水などの水害によって大規模な河川改修工事が行なわれた結果、アユ毛バリ釣りの主要ポイントである淵やトロ場といった水深が深くて流れの穏やかな川相が半減してしまった河川が多い。
解禁から落ちアユまで、時期ごとの釣れ方の変化
アユ毛バリ釣りの釣期は友釣りやアユルアーと同様で、解禁日から秋の落ちアユ期まで。解禁から約1ヵ月間のシーズン初期はアユの大きさが13~16cmと小ぶりながら、育ち盛りの若アユは美味しそうな毛バリをめがけて簡単に飛び付いてくれるはず。その後、梅雨が明けて盛夏になるとアユの食いが極端に渋い時期に入る。土用隠れと呼ばれるが、秋9月以降になると、アユ毛バリ釣りでは落ちアユねらいとなり、再び好期を迎える。産卵を控えた時期だけにアユの釣り味は盛期に比べて落ちるものの、20cm以上の良型ぞろいの数釣りが楽しめる。
アユ毛ばり釣りの仕掛けと竿
アユ毛ばり釣り入門の第一歩として、「東京鮎毛バリ釣り研究会」(松島正尚会長)がホームページで公開している「推薦毛バリ10種」が参考になる。八ツ橋、青ライオン、清水、黒髪、夕映、エリ黒、暗ガラス、二日月、赤熊、岡林という10種の毛バリは、同研究会の当たりバリデータから厳選したもので、近代の名作バリが揃っているため、毛バリ選びに悩まずとも釣果を得やすい。
また、近年のアユ毛バリの傾向としてはラメカラーを多用した派手なものが大人気。河川別やシーズンごとの当たりバリは地元の釣具店に立ち寄ったり、毛バリ釣りのベテランに聞いてみたりと積極的に最新情報を入手するとよい。
片テンビン式の仕掛けと専用ザオの選び方
アユ毛バリ釣りの仕掛けは片テンビン式が主流だ。関東スタイルは片テンビンに下バリ1本を結び、上バリとして2~3本をセットしている。しかし、使用してよいハリ数や上バリの有無は河川や地域によって規制があるので、釣行先の漁協や漁連のホームページで確認してほしい。
サオは市販の全長10~12mのカーボン製アユ毛バリ釣り専用ザオを使う。専用ザオの常用オモリは4~7号で、上下方向にサオを動かす誘いができ、微妙なアタリを察知できるシャキッとした先調子で設計されている。川幅が狭い中小河川では、8~9m級のアユコロガシザオを流用することも可能だ。
玉網・引き舟・ウエーダーの3点も忘れずに
専用ザオ以外の必要な道具立てとしては、取り込み用の枠径25~30cmの玉網、釣れたアユを入れておく生かしビクもしくは友釣り用の引き舟、川に立ち込むためにフェルト底のウエーダー3点が必要となる。
基本的な釣り方とポイント
まずは、サオ先近くのミチイト調節器からミチイトを繰り出し、オモリが川底に付いた状態でピンと張ってから、サオ先が水面から数10cm上で保持されるように調節する。この際、ポイントの流速に見合ったオモリの号数を選び、通常は5~6号を使うことが多い。
サオを上下させてアユの就餌を誘う基本操作
基本的なサオ操作は、上手に振り込んだ仕掛けを川の流速に同調させながら、30~40cmの振幅でゆっくりと上下に動かしてアユの就餌を誘うことが一連の手順となる。
アタリの出方と向こうアワセのコツ
シーズン初期の若アユのアタリは上げ下げ操作の途中にサオ先をノックするように手元まで明確なシグナルが伝わり、意外と簡単にハリ掛かりしてくれる。ところがナワバリ意識が強くなるシーズン盛期を迎えるとアユは一気に賢くなり、サオ先の微妙な重さが増すだけの乗りアタリと呼ぶ当たり方に変化してしまう。どちらにしても、アユの毛バリ釣りでのアワセはアタリを感じたらサオの上下操作をピタリと止め、次に伝わる引き込みアタリを待って、向こうアワセでフッキングに持ち込むことが肝心だ。
取り込みの手順と一日の中で変わるポイントの読み方
アユ独特の鋭角的な引きを楽しみながら、抵抗が収まったところで取り込み態勢に入る。この際サオ先がブレないように注意しながら、手もとから1節ずつサオを縮めつつアユを引き寄せ、最後は玉網で取り込む。
同じ淵やトロ場の中でも一日の中でアユの付き場は少しずつ変化していく。食いが渋ってきたら立ち位置をずらしてみることも大切。朝と夕のマヅメ時は水深が浅い淵尻近くのカケアガリ、陽が高い日中には流れの強い淵頭や最深部といったように、ポイントを読むこともアユ毛バリ釣りの楽しさのひとつだ。
※このページは『つり人 2026年7月号』に掲載した記事を再編集したものです。


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