「友釣りビギナーにぜひ釣ってもらいたい」と猿渡俊昭さんが太鼓判を押す川が板取川上流だ。浸かるだけで癒されるほど透明度が高く、天然遡上の多い今夏は追い合うアユの姿が各所で見られる。
オモリの出番が多いのは深場や流れのきつい瀬だ。その役割はオトリを沈めることが一番の目的だが、追われても逃げにくい効果が副産物としてある。九頭竜川で常時オモリを使うという君野貴文さんは、オモリによるオトリの拘束効果を活かした釣りを展開していく。
写真と文◎編集部
オトリを緻密に管理して泳がせるテクニック
鳥取県八頭郡若桜町に住む君野貴文さんは千代川水系をホームグラウンドに釣技を磨いた。痩身長躯の体型でシラサギのごとく静かな足取りでポイントに立つと、オトリを緻密に管理して泳がせるのが得意技だ。一方で白波逆巻く急瀬、荒瀬も涼しい顔で立ち込んで一歩も下らず良型をぶち抜いてタモに飛ばす瀬釣りの技術も持ち合わせる。瀬もトロも深場も浅場も釣りこなすオールラウンダーだ。7月下旬のこの日は福井県九頭竜川中部漁協管内に君野さんの姿があった。
「九頭竜川は第二のホームと言ってもよいくらい通ってきた釣り場です。遡上が少ない年には大型がサオを絞って楽しいですし、天然アユがたくさんいれば型を揃え、数を掛けるのが面白い。この2年ほどは来ていませんでしたが、久しぶりに訪れるとやっぱり濃密な天然アユと太い流れに魅了されますね」
そう話す君野さんは7月27日に開催された「九頭竜中部LADIES杯」で優勝した坂本真里奈さんのセコンドとしても活躍していた。坂本さんに伝授したのは2号のオモリでくるぶしくらいの浅瀬や分流を釣りこなす釣法だ。この釣り方をものにした坂本さんは決勝の90分間に21尾ものアユを揃えたのだから凄い。ここでは君野さんの九頭竜川攻略に密着した。
筋をきっちり引き上げ下らず取る
大遡上に恵まれた今期の九頭竜川は7月下旬で10~23cmとサイズがバラバラ。例年であれば型ねらいなら鳴鹿堰堤上流、サイズは小さくなるが数が釣れる鳴鹿堰堤下流といわれるが、今期はどのエリアも同じような状況だ。
君野さんと訪れたのは北島鮎大橋の200mほど下流の瀬だ。まずは深場から探ってみようと瀬落ち付近に立ってサオを伸ばす。道具立てはシマノ「スペシャル競SC」8.5m、水中イトはサンライン「ハイテンションワイヤー」0.08号を6m、ハナカン回りはフロロカーボン0.8号のワンピースで長さは40cm、ハリは「龍の爪」7.5号4本イカリ。1号のオモリをハナカンから25cmほど上にセットしている。
「九頭竜でオモリを外すことはありません。昔はどんな瀬でもオモリを付けずに釣ることにこだわった時期もありました。けどオモリでオトリの動きをある程度拘束しておいたほうが、追われた時に逃げにくく掛かる確率がアップするように思います」
君野さんは流れに対してサオを45度前後の鋭角に構え瀬を釣り上がることが多い。
「九頭竜川は広大ですが、まとまってアユの掛かる筋があります。そういう連発する筋を見つけられたら、上ザオ気味に鋭角の構えで引き上げたほうが筋に沿って釣りやすい。あと掛けたアユは動かずに取りたい。下ザオ気味の鈍角では掛かった時にノサれやすく下って取らなければいけなくなります」

深場のほうが反応は遠い。掛からないわけではないがオトリが替わっても連荘しない。ポツポツと掛けながら徐々に上流に釣り上がっていく。掛かるサイズは14~17cmと小ぶりであるが、今期の九頭竜川はこのサイズもオトリにしなければ循環ができない。小型でもオトリにして丁寧に操作をすれば追ってくる野アユはいる。そして突然23cmクラスも掛かってくる。ポンポンと抜き上げやすいサイズばかりと思っていたところ君野さんにもそんな良型が掛かった。掛かったアユが流れに乗って君野さんの愛竿をグイグイと曲げ込んでいく。抜き上げた魚は思わず「でっか!」と大声を出してしまうほどの良型だった。

2号のオモリを目印に
君野さんはテンポよくポイントを移してやがて右岸の浅場に目がいった。そこは多少なりと落差のある段々のチャラ瀬である。
「ここなら2号オモリを使った浅場の釣りを見せられそうですよ」
そう九頭竜LADIES杯で効果のあった釣り方である。君野さんのオモリ使いは通常の瀬釣りであれば1号もしくは1.5号をメインに使うが、水深15~20cmの浅場であれば2号の重さが好適という。
「要は野アユに追われたオトリが逃げないようにするオモリです。浅場のオトリが泳ぎやすい場所では追われてもオトリが逃げて掛かりにくいことが多々あります。それが2号のオモリを使って拘束すると掛かる魚が増えてくる。1.5号、1号と軽くすればオトリが止まらず流されたり泳ぎ過ぎたりしてしまい逆に3号、4号と重くすればオモリの重さに引っ張られてオトリが手前に寄ってしまいます。オモリを暴れさせないように神経を使う細やかな操作は必要ですが、慣れると女性でもできます」
2号の黄色いオモリはオトリの長さ+5cmほど上にセットした。
「オモリを目印にして釣るので、必ず目立つ色を使ってください」君野さんが立ったのはくるぶし程度の水深である。立てザオで操作すればオモリは水面より上に出てしまうが「オモリが水面より上にあってもオトリが逃げにくくなればいいんです」と君野さんは言う。

釣り方の3つのポイント
まずは白泡の中をねらってみると即座に18cmクラスが掛かった。段々瀬のツボに入れると瞬時に反応するアユがいて君野さんはテンポよく掛けてはタモに飛ばした。
「自由にオトリが走り回れば釣り残しが生まれます。的確にポイントを撃って野アユを拾いやすいのがこの釣りのメリットです。基本的にサオを立てて、穂先の真下を釣ってください。それが一番オトリを管理しやすい状態です」
そして2号オモリのドチャラ釣法で最もアユを拾いやすいのが流れの落ち口。いわば小さな瀬肩といえるスポットで水通しがよい場所だ。オトリをしばらく留めておけば、すっ飛んでくる野アユがいる。しかしこうしたスポットはオトリを留めるのが簡単ではなくサオ抜けになりやすい。
「天候によっては上手くできない釣り方です。オモリが見えにくい曇天時やサオを安定して保持しにくい強風時は難しくなります」
極端な浅場ながら掛かるアユのサイズは極小ではない。オトリごろの18cmクラスが揃ったのも印象的だった。
最後にこの釣り方の要点をまとめておく。
- オモリを目印にして釣る。目立つカラーが必須
- ピンスポットに留めて追われてもオトリが逃げないようにする
- 適した水深は15~20cm。落差があったり細流だったりとアユの密度が濃くなるスポットで威力を発揮する
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※このページは『つり人 2025年10月号』を再編集したものです。