アユの活性が上がりづらいローライト&低水温の条件下では、わずかな変化に気付けるかが釣果を左右する。ミノーならではの引き抵抗の軽さが、感度を高め、アユルアーの醍醐味も際立たせてくれる。
ねらって掛けるのがアユルアーの魅力という田崎翔さん。アユルアーでの釣果を伸ばす一助となっているのが、専用ロッドの長さと張りだと話す。川相の大きく異なる2河川でその使い勝手を見せてもらった。
写真と文◎編集部
トラウトフリークがハマるアユルアー
渓流からサクラマスまで解禁期間は全国各地の川へ飛び回る田崎翔さんは、オフシーズンにはエリアも楽しむ根っからのトラウトフリークである。そんな田崎さんが近年ハマりつつあるのが、アユルアーの釣りだ。相模川を筆頭として全国的に人気が高まり、今年はルアーの使用解禁や区間を拡大した川がかなり増えた。田崎さんは主に奥多摩漁協管轄の多摩川によく通っており、最初はなかなか釣れない日も続くこともあったが、今ではねらいどおりに釣れるようになってきたそうだ。それでも「まだまだ修行中です」と笑う田崎さんだが、頻繁に川に立つ中で、釣果に結びつく要点がいくつか見えてきたという。
ハリの使い分けと選択
まずはハリ。ルアーで渓魚をねらう際も田崎さんはかなりこまめにフックを交換しているが、アユルアーも同様だ。ハリ先の鋭さを保つためにこまめにチェックすることは当然だが、ほかの釣りと同様に、適材適所で使い分けるということで釣りが快適になるという。現在アユルアーの主流はイカリと比べて掛かりやすいとされるチラシ。チラシしか使わないという人も多いだろうが、まずは簡単に、イカリとチラシの使い分けから始めるといいだろう。田崎さんはどちらも用意して状況に応じて交換していく。ハリの形状はまだまだ検証の余地があるようだが、田崎さんはチラシなら満開チラシ、イカリなら一角を愛用している。友釣りのトーナメンターが愛用していることで話題となったダブ蝶も気になっているそうだ

しかし、田崎さんがハリ以上に拘っているというのがロッドである。ハリと同じように釣果に直結するアイテムだと感じている。
ロングロッドで広い川から好ポイントを手早く見つけ出す
7月末、田崎さんは群馬県前橋市に位置する利根川の群馬漁協管轄エリアと栃木県鹿沼市を流れる黒川の小来川(おころがわ)地区へ訪れた。水量豊富で広大な利根川と小さな里川である小来川。川のタイプは対極と言ってもいいかもしれないがどちらのフィールドでも釣れるようになると釣り場はグッと広がる。
まずは利根川へ向かったが、石の色がよくない。どこもくすんでおり、連日の酷暑の影響か垢腐れも見られる。アユルアーには難しい状況に見えるが、ひとまず群馬漁協管理棟の前からエントリー。
広大な利根川の流れの場合、一点集中してねらうよりもまずは広範囲をザッと探って反応のいい場所を探したい。田崎さんが使用するロッドはワールドクラスヴィスタWCV96SL-5Jスィートトラップ(フェンウィック)。9フィート6インチという長さはある程度飛距離を出しやすく、メンディングで手前の流れをかわしたり、ルアーポジションの微調整も容易。ポイントをテンポよく探っていける。
チャラ瀬、深瀬など転々とアユの付き場を探るがどこに行っても青ノロが引っかかってくる。ミノーを深く潜る鮎ゲームシュマリ88MRから鮎ゲームシュマリ110Fに交換しても変わらない。ねらいのポイントに青ノロがなくても回収中に引っ掛かってしまうからである。毎回外すのはかなり難儀だ。まずは青ノロが少ない場所を見つけるためにランガンしていく。

フェンウィック WCV96SL-5J スィートトラップ
World Class Vista(ワールドクラスビスタ)は、自由な発想をもとに多彩なターゲットやメソッドに適応するマルチピースロッドシリーズ。さまざまなラインナップの中でもWCV96SL-5Jスィートトラップはアユゲーム専用に開発されたモデル。田崎さんはスピニングモデルを使用したが、ベイトモデルもある。

ロッドの張りが決め手の一尾
下流の瀬は反応がなかったので一旦川から上がり、歩いて上流へ移動。手前に寄っている流心の奥にあるヨレを見つけた田崎さん。横切るようにトレースすると明確なアタリが出たが、惜しくも掛からず。すぐに田崎さんはハリを交換して、再び同じコースへ投げるとすぐにヒット。手前の強い流れに入ってもバットパワーを活かして素早く寄せ、意のままに引き抜いたのは背掛かりした20cm。
「ハリをチェックしたら先端が鈍っていたんですよ。イカリに交換して青ノロが引っかかる可能性を減らしつつ、もう一度アユにルアーを見せて挑発することができました」
ポイントを横切るようにルアーをスイングさせる場合、一投の中で何度もアタリが来ることは稀。一回のチャンスできっちりフックアップさせたいものだ。
「意外と掛かりが変わるのがロッドの張りです。ベリーからよく曲がるタイプだと緩い流れにいるアユのじゃれつきは掛けやすいものの、瀬でのスピード感のあるアタックはブランクが吸収してしまうのかあまり掛からない印象です。ルアーを流れに留める柔軟性をティップに持たせ、ベリーからバットは張りを持たせたところ、瀬でもよく掛かるようになりました」
先調子になることで操作性は向上し、キャスト精度も上がる。一度当たったコースへのキャストも決まりやすい。追い気のあるアユを見つけてから、ねらって掛けにいくこともできるのである。

チューブラーの高感度で気付く小さな違和感
次に訪れたのは黒川の小来川地区。アユルアー可能エリア内には渓流相もあり、美しい景観の中で楽しめる。さっそく川に降りてみると水が冷たい。こちらは青ノロに悩まされることもなく、石の色もよさそうだ。しかし、最初のポイントは小さいウグイが掛かっただけで反応が見られないので板荷リバーサイドランド前へ移動。ここは駐車場もあり、友釣りファンもよく訪れるポイントのようす。土手の上から覗くと良型のアユが食んでいるのが見えた。
試しにそのアユを釣ってみようとするがなかなかミノーに反応しない。いろいろなアクションを試し、早巻きが一番反応していたが、ナワバリから離れるとすぐに追うのをやめてしまう。そうこうしているうちに記者には一瞬掛かったように見えたが抜けてしまったようだ。
「アユは見えていませんでしたが、確かに変な違和感がありました。これもアタリなのかぁ。新しい発見ですね」
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見えているアユを諦め、先ほどまで友釣りファンが探っていた下流の流れをねらってみる。ロッド一本分もない幅の流れだが、ロングロッドを活かして少し離れた位置から細かく正確にトレースコースを刻んでいく。白い石の前にルアーが差し掛かった時、田崎さんがアワセを入れた。するとロッドが曲がり込み、元気なアユが小さな流れを走り回る。張りを活かして流れからスパッと抜き上げたのは体高のある21cmだった。
「チューブラーは小さいアタリも気付きやすいですね。ボトムの感触は鮮明にわかりますし、今回の違和感みたいに小さなアタリも見逃さずに掛けられました。あのアタリはスルーしていたらきっと掛からなかったと思います」
アユルアー専用ロッドの独特な長さと張りは、広大な本流でも渓流相の里川でも活躍する。ロッドの役割を今一度意識してみてほしい。
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※このページは『つり人 2025年10月号』を再編集したものです。