未経験者が最初に触れる釣りとして理想的なのが、宝石のような淡水魚をねらう「タナゴ釣り」だ。専門店「たなきち」店主・田中育男さんが管理釣り場のタナゴ釣りに誘なう。

写真と文◎月刊つり人編集部
1946年創刊の雑誌「月刊つり人」を始め、数々の釣りに関するコンテンツを作成してきたつり人社の編集部。
タナゴ釣りが初心者向けの理由
「タナゴ釣りは、まったくの初心者が最初に触れる釣りとして理想的なんです。釣り人口が減っている今だからこそ、釣り雑誌もそういう釣りを紹介しなきゃ」
熱を込めてそう語るのは、手賀沼のほとりに店を構えるタナゴ釣り専門店「たなきち」の店主で、タナゴ釣りの普及に奮闘する田中育男さんだ。
「この前も、近所の高校に通う女の子がふたりで来てくれてね。『釣りをやってみたい』って、家にあったサオを持ってきたんだけど、見たらヘラザオとリールザオ(笑)。それで始めるのはちょっと大変だから、うちの初心者セットを案内して、ポイントも教えたんです」
たなきちの初心者セットは未経験者限定で2200円。サオ、仕掛け、エサがすべて揃っており、特別な準備はいらない。ふたりは実際にタナゴを釣りあげることができ、帰り際にも店に立ち寄ってくれたという。
タナゴ釣りは道具立てが簡潔で、足場も安定した場所が多い。生きエサを使わない点も、初めてサオを握る人にとって心理的な負担が少ない。加えて、タナゴという魚そのものが持つ造形の美しさも特筆すべき魅力だ。身近な水辺に、これほど精緻な色彩をもつ魚が生きている。その事実に驚かされる人は少なくない。ハッとする体験から水辺に興味を持ってもらえるのは経験者として嬉しいものだ。
たなきち
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・Tel 047-197-3457
・住所:千葉県我孫子市緑2-11-33島根ビル103
・交通:JR我孫子駅南口から徒歩15分。バスの場合は我孫子駅南口1番バス乗り場から「若松」バス停で下車
釣り堀なら手軽に楽しめる
一方で、野生のタナゴをねらう場合ポイント探しという壁が立ちはだかる。水路や小河川の状況は年々変化し、魚影を見つけるまでに経験を要する。そのハードルを取り払い、すぐに釣りそのものに向き合える場所が、管理釣り場である。
田中さんに案内されて訪れたのは、千葉県香取郡多古町にある「夢工房東」。手賀沼から成田空港を越えた先に位置し、3か所の桶(プール)釣り場、造成池、水路を利用した自然釣り場を備える、国内有数の規模のタナゴ管理釣り場だ。
迎えてくれたのは社長の宇井弘邦さんと、インストラクターのポン太こと稲元信哉さん。稲元さんは「ポン太工房」としてタナゴ用仕掛けの製作・販売も行なっており、ここで無料レンタルできるタックル一式も稲元さんが用意したものだ。
夢工房東
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3つの桶(プール)釣り場に加え、造成した240平米の池と、隣接した水路を利用した約120mの釣り座も整備されている。もともとは養殖業者だっただけあって、鏡鱗のバラタナゴなど観賞魚として人気の美麗な系統もおり、隔離された桶と池の釣り場では釣ることができる。水路には外来種となる個体は入れず、二枚貝を増やし自然繁殖に力を入れている
・住所:千葉県香取郡多古町方田22
・営業時間:9:00~17:00
・定休日:水・木曜日
・釣り料金:1日1500円(貸しザオ、エサ込み)、魚持ち帰り3尾まで可
・URL:https://www.instagram.com/yumekoubou.higasi/
まずはシンプルに始める。タナゴ釣りの道具とエサの基本
釣り方は、最初から難しく考える必要はない。ここでは、初めての1尾にたどり着くための基本だけを押さえておこう。
サオ
プールや水路などの狭い釣り場では2~3尺(約60~90cm)。池では4~5尺(約1.2~1.5m)が扱いやすい。いずれもレンタル可能だ。田中さんは江戸和竿師・竿中作の和ザオを持参していた。
仕掛け
入門にはシモリ仕掛けが適している。親ウキの下に複数のイトウキが連なるタイプで、ウキがゆっくりと沈んでいくシモリバランスに調整する。冬場なら、1秒に2~3cm沈む程度が目安だ。
「タナゴは動いてるエサに反応する魚で、止まると興味をなくしてしまうからシモリ釣りになる。釣りをしていると仕掛けが水に馴染んで浮力が減るから、それを考慮して調整するといいよ」

そう話しながら仕掛けを投入する田中さん。この日はウキのトップがなかなか沈まなかったが、「まぁ今日はこれでいいでしょう」と、そのまま釣りを続ける。
「最初は完璧じゃなくていい。やりながら覚えればいいんです」
ハリは極小のタナゴ専用バリが理想だ。田中さんは0.15mm径のステンレス線で自作したものを使用。
レンタルタックルの仕掛けはポン太さん謹製の浮力調整済みのもので、もちろんハリも性能充分。オモリは中通し式を採用したのがこだわり。振り込み時、水中でイトが立つとオモリに遅れたエサがゆっくり沈む。これがアピールになるのだが、オモリが遊動することでその動きを強調してくれるという。
エサ
エサは粉末タイプの練りエサが扱いやすい。田中さんはたなきちや夢工房東で購入できる六角工房の「六角餌」を薦めている。集魚効果が高く、ハリに小さくまとまり落ちにくい。小型のタッパー容器に、水と粉末をおよそ1:1で混ぜる。
「分量はだいたいで大丈夫。軟らかすぎたら粉を足せばいいし、パサパサなら水を足せばいい」
田中さんはここにマヨネーズを足す。冬の乾燥した指先にエサがこびりつくのを防ぐための油分を加えることと、定番エサの卵の黄身練りの効果も併せ持たせることができる。これをダンゴ状に丸めて、ハリで引っかくようにつける。
「アタリがないときはハリ先のエサの色を見て。白くなっているとアミノ酸とかが流れ出してしまったサイン。仕掛けを上げたら毎回新しいエサを付けてね」

アワセは手前に引く
この仕掛けにエサをつけて振り込めば、仕掛けがじわじわと沈んでいく過程でタナゴが食いつく。ウキ下の目印を注視していればスッと下に引き込まれたり、逆に止まったり、横に振れたりといった反応が出るはずだ。
反応が出ないときは、少し位置をずらして振り込んだり、沈むスピードを調節したり、より深いところまで沈めてみたり、といった変化をつけてみよう。
コツが必要なのはアワセである。他の釣りのようにサオ先を跳ね上げるようにするのはNGだ。タナゴの口が切れて乗せられない。腕全体でサオ尻のほうに引くようにすると数を伸ばせるだろう。

この日、応用的な誘いが必要だったのが池での釣り。水温は6℃。水温が低いなりに安定すれば食いが立つのだが、前日の冷え込みで大きく下がった直後だったので、活性が低かった。手前をねらうと掛かるのはクチボソばかりという状況で、田中さんとポン太さんは沖の底付近に固まっていると読んだ。そこで、オモリが底に付くまで沈め、着底したエサに寄ってきたタナゴが食いつくのを待って聞きアワセで釣果を伸ばした。アタリを掛けにいくのではなく、食いついたタイミングを想像して仕掛けを上げる。そこでハリ掛かりしなくても、エサの上下動が誘いになる。冬にオカメではなく在来タナゴをねらう際に参考になるはず。
まったくの初心者にも、釣りの楽しさと魚の魅力を体感させてくれるタナゴ釣り。仕掛けを振り込み、反応が出るまでいろいろ試し、アワセを成功させて魚体を手中に収める。その一連の動作を安心して繰り返せる管理釣り場は、最初の1尾に出会うための確かな舞台。ここで得た楽しさをぜひ掘り下げてみてほしい。

※このページは『つり人 2026年3月号』に掲載した記事を再編集したものです。

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