アングラーによるプレッシャーの高まりや異常な高気温による水温の上昇など、渓流ルアー釣りを取り巻く環境は年々タフ化する傾向にある。そんな状況でも渓流ルアー釣りを楽しむヒントがここにある。

まとめ◎宇野章則
季刊『鱒の森』のメインライターとして活躍するフリーランスの編集人。著書に『新渓流ルアー入門 渓流ミノーイングのベーシック丸わかり!』がある。
目次
ヒラ打ちを嫌う魚には「アピールを弱めたスローな誘い」を
この20年ほど渓流ルアー釣りの世界では、連続トゥイッチによるミノーのヒラ打ちが基本戦術となっている。しかし、本来であれば魚をいい感じに刺激してくれるはずのミノーの激しい動きが、ヒットをむしろ遠ざけているように感じられる状況は結構多いものだ。誰もが実践する定番の誘いだからこそ、ハイプレッシャーの状況では「ヒラ打ち」そのものが魚をスレさせるリスクとなり、また、低活性の魚がミノーの激しい輝き・動きを嫌っている可能性が考えられる。
そんな時に試してみたいのが、あえてアピールを弱めた誘いだ。ルアーはフラッシングを強調したヒラ打ちタイプではなく、スタンダードな細長シルエットのミノーを選択。そうすることで同じ連続トゥイッチでもミノーが発する輝きを適度に和らげることができ、さらにトゥイッチの入力を弱めれば低活性の魚でも追いやすくなる。またその場合、細長シルエットのミノーのなかでも高浮力かつローリング系のバルサミノーが、操作のスピードを緩めても見切られにくくなるのでおすすめ。「ちゃんと動いてる?」と不安に感じるくらいスローな誘いでも魚は食ってくれる。
低活性の救世主!スローシンキングミノーのドリフト釣法
困ったことに最近の渓流フィールドは、夏から秋にかけての渇水と高水温がデフォルト。そうしたタフコン攻略の手立てとして注目を集めるルアーがスローシンキングミノーだ。高浮力に由来するロッドワークやリーリングに対するレスポンスのよさが特徴で、ゆっくり操作しても充分にアクションさせられるうえ、生命感を損なわないまま水中を漂わせることができるため低活性の魚でも食わせやすい。
普段の釣りを全体的にスローダウンさせられるだけでもメリットは大きいが、ルアーを引くと魚が逃げるような極端に渋い状況ではドリフトでの使用がイチオシ。リーリングはイトフケを巻き取る程度に留め、たまに震わせるくらいのソフトなトゥイッチを入れながらミノーを上から下に流すとヒットが期待できる。完全なアップストリームはミノーに掛かるテンションを見失いやすいので、基本はクロスに近いアップクロスキャストだ。そのうえでラインが水面に浸かないようにロッドティップを高く上げつつドリフトすると、トレースラインとラインテンションのコントロールがずっと簡単に行なえる。
バイトを引き出すルアー「サイズダウン」の有効性とメリット
チェイスがあるのに相手がなかなか口を使ってくれない、あるいは口を使ったとしても掛かりが浅く、あっという間にフックアウトする魚が続くような時は、ルアーのサイズダウンも効果がある。5cmミノーを使っていたのなら4.5cmへ、4.5cmを使っていたら4cmといった感じでルアーのボリュームを小さくすると拾えるバイトが増えるはずだ。
これには渓流魚の口の大きさが関係していると考えられ、もともと口の小さなアベレージサイズのヤマメやイワナが低活性になると余計に口を大きく開かなくなるので、そのため小さなルアーのほうがバイトした相手の口に収まりやすくなるようだ。また、一般的にミノーはボディーが小さくなるほど泳ぎのピッチが細かくなるので、渇水などでポイント規模が全体的に小さくなった状況で誘いやすいメリットも大きい。警戒心が高くナワバリを離れたがらない1尾をピンスポットでねらう際にも、短い距離で細かくアクションさせられる小型ミノーはチャンスが広がる。
知っておきたいスプーンでボトムを転がす方法
低水温やハイプレッシャーで活性を下げている魚は、水面方向へのレンジ変化にシビアになりがち。ルアーの1~2枚下層をチェイスする魚が続く時や、あるいは好ポイントであるにもかかわらず反応がない時は、使うルアーを重くしてトレースレンジを下げる方法が常套手段だ。なかでも深場をじっくりトレースできるのがスプーンのドリフトで、流れに同調させると時間をかけてボトムレンジを探れる。
その場の水深と水勢にもよるが、ボトムレンジを転がすことを考えるとスプーンは5~7gのウエイトが必須だろう。アップ~アップクロスの角度で着水させた後、水中のラインを先行させてスプーンの浮き上がりを抑止。その際、ロッドティップで「トン、トン」とアクションを加えていくが、スプーンそのものではなく水流に引っ張られてできたラインの弧を跳ね上げる意識を持つとレンジキープが容易になる。アクションの強弱、間の取り方で細かなレンジコントロールも可能だ。
流れの押しなどの兼ね合いがあるので必ず叶うわけではないが、スプーンを転がす際はライン先行でのドリフトが理想。水流によって生じたラインの弧を動かす感じのロッドワークができると、浮き上がりを抑えつつスプーンをアピールさせられる。
ちなみに、同様のボトムレンジを探るにあたってはエキストラヘビーシンキングミノーも1つの選択肢。ただ、この場合のスプーンの優位性は釣り人側の入力に頼らず、水流と自身のフォールによって充分にアクションしてくれる点だ。スプーンは低層に沈んでいる低活性の1尾を、より低速で誘う釣りに適したルアーなのである。
マーキングナイロンなら難しいレンジキープが簡単
レンジにシビアな1尾をねらうにあたっては、ルアーを浮き上がらせないことが何より重要。そこでおすすめなのが一定の間隔で2色を配したマーキングナイロンラインだ。ナチュラルカラーと視認性の高いビジブルカラーのツートーンになっているため、水中を泳ぐルアーの位置を水平方向だけでなく垂直方向にも把握しやすいメリットがある。

特に効果を発揮するのが、トゥイッチをかけながら対岸側の流れを縦にトレースする場面。水面上のビジブルカラーの露出部分や、あるいはツートーンの継ぎ目の位置を一定に保つ意識を持ちながらトゥイッチすることで、浮き上がりを抑えつつルアーを確実にアクションさせられる。また、低活性の魚は1回で食ってこないことが多いが、フォローキャストの再現性を高められる点もマーキングラインの使用で得られるアドバンテージ。ターゲットが反応した位置とレンジを高精度でトレースできれば、ヒットの確率は必ず高まる。
渇水の勝機はシャローに見出すべし
渇水の川ではポイント規模が小さくなる一方で、活性を下げた魚が簡単に口を使ってくれないことでチェイスが長引く傾向がある。なので、カケアガリを越えてシャロー~ドシャローまで相手がルアーを追ってくる状況が想定できているかが実は勝負の分かれ目。低活性ながらも浅瀬までチェイスする魚はヒットの可能性が高く、そうした1尾をものにできればタフコンの川でも楽しい時間が過ごせる。
まず前提として注意したいのは、期待値の高い深みに加えてシャロー~ドシャローまでを1つのポイントとして捉え、自身の立ち位置を決めること。そのうえで、魚がカケアガリを越えて浅瀬に侵入してきた際は、ボトムに当たらないようにレンジをコントロールしながらルアーを最後まで引き切りたい。この状況では底に「コツン」とルアーが触った瞬間にターゲットが我に返ることが多く、また、特にドシャローまで追ってきた魚はルアーの減速に嫌気を示す傾向が強いので、これらのリスクを回避するうえでも不用意にポーズを入れたり、派手にトゥイッチを加えるよりはリーリングを続けたほうが無難だ。
そのため、ルアーはただ巻きで充分に魚を誘えるものが好ましく、意外とおすすめなのが低速でもブレードがよく回転するタイプのスピナー。ロッド角度の調整でドシャローを最後まで引き切ることができ、かつただ巻きで充分なアピールを発揮するのでピックアップ寸前までバイトが期待できる。ミノーなら浅瀬をゆっくり引けるスローシンキングが扱いやすく、レギュラーリップのフローティングはトゥイッチを加えても底に当たりにくいので、よりトリッキーな動きで誘える。
タフコンで使えるスピナーのホバリング
渇水増水にかかわらずチェイスらしいチェイスがない状況では、引き抵抗の強いスピナーをホバリングさせる戦術も有効。ねらいのスポットにダウンクロスでスピナーを導いたら、流れの押しを利用してゆっくりトレースし、場合によってはダウンでステイさせるのもアリだ。この場合、アグリアTWのような引き抵抗の強いスピナーがコントロールしやすく、多少レンジが上ずっても下から食い上げてくる。
スプーンフックを使用した変則ミノーチューンのすすめ
タフコン時の魚は総じてバイトが浅く、ヒットしてもファイト中にポロポロと外れてしまう状況がよく起こる。そうしたバラシのストレスを軽減する策として試したいのが、ミノーのテールアイにスプーンフックをセットする変則チューンだ。なぜスプーンフックを使うのかというと、渓流ミノーにマッチする市販のプラグ用シングルフックに現状、極端な細軸がないため。シャープな細軸フックを使うと突っつくようなショートバイトでも拾えるケースが増え、かつスプーンフックはホールド力に優れるのでバレにくくなる。
この変則チューンの注意点は、横向きアイのスプーンフックを縦向きにセットするには、テール側のスプリットリングを2連結にする必要があること。当然、シャンクが長いスプーンフックをスプリットリングの2連結で使用するとフロントフックと干渉しやすくなるが、そこは掛かりのよさとのトレードオフと考えたい。ちなみに、魚の口に収まりやすい4cmクラスのミノーであれば、テールのみのワンフックでも充分に釣りになる。また、スプリットリングは平打ちタイプの#000を連結しようとすると非常に手間がかかるので、サイズが大きくなってしまうがファインワイヤーの#00がおすすめだ。
食わなかった魚へのアプローチ方法
仮にルアーに触れなかったとしても、タフコンの川ではルアーにアタックする活性を維持した魚は貴重な存在。適切なフォローができれば次のキャストでヒットする可能性は充分にある。
口を使う素振りを見せた1尾が結局バイトしなかった理由はさまざま考えられるが、次のキャストで心がけたいのはルアーを魚に近づけることだ。ルアーチェンジや釣り方の違いでより勢いのあるチェイス、より強いバイトを引き出そうとするよりも、ここでは初手のアプローチにポジティブな反応が得られたことをチャンスと捉え、相手が詰め切れなかった間合いをこちらから詰めたほうが結果は出やすい。同じルアーを少し上流に着水させてカウントダウンで送り込み、若干レンジを下げたうえでコンタクトポイントを通過させたり、あるいは、少しゆっくり引いてルアーを追いやすくしたり。まずはシンプルにルアーを魚に近づけることを意識し、セカンドチェイスからのヒットをねらってみよう。
ショートバイト対策!ナイロンラインの「掛からなさ」を活かす
ヒットした魚が数秒でフックアウトする状況が続く時、PEラインの低伸度が原因になっていることがある。見ていると低活性の魚は口をほぼ閉じた状態でルアーにちょっかいを出していることも多く、その際にハリ先が相手の体に触れるとPEラインの低伸度が仇となり中途半端に刺さってしまう場合があるようだ。こうなると口やその周辺以外の硬い部分にハリ先が乗っているだけのフッキングになりやすく、そのため魚が暴れ始めた数秒でフックアウトしているらしい。
その点、伸びのあるナイロンラインは軽い接触程度では中途半端にフッキングしないので、バレに繋がる浅掛かりをオートマティックに回避してくれるメリットがある。ルアーとのコンタクトに魚が驚いてさえいなければ、次のキャストで再チェイスが期待でき、またそのような連続のチェイスはヒットに発展する可能性が高い。ショートバイトが目立つタフコン時には、ナイロンの「掛からなさ」がむしろ武器になるのだ。もちろん、ラインの伸びはヒット後のバレにくさにも貢献。適度に相手の反撃を吸収するためファイト中にテンションが抜けにくく、余裕を持ってランディングに持ち込める。
プレッシャーを避けた魚が潜む「一級ポイントの前後」をねらう
厳しいフィッシングプレッシャーにさらされている川では、「え、こんなところに?」という小さなスポットに良型が入っていることがある。おそらく淵やヒラキなどの一級ポイントは誰もがルアーを通すため、日々のプレッシャーを嫌う魚が避難してくるのだろう。淵やヒラキにも魚はストックされているはずだが、そうしたある種「プレッシャーに耐えられる魚」はルアーに反応させにくいので、小場所に入っている魚を積極的にターゲットに据えると尾数が稼げる。
ねらい目となるのは、好ポイントの前後。たとえば、淵ならその落ち口上流が「前」にあたり、「後」は下流のカケアガリを越えた平瀬などだ。いまひとつ反応が乏しくフィールド全体にプレッシャーの影響を感じる時は、そうした好ポイントの前後にあるなんてことのない緩流ポケット、岩陰、対岸のエグレといった小場所を丁寧に探ってみたい。
※このページは『つり人 2026年3月号』に掲載した記事を再編集したものです。



