シマノ・サポートアングラーの米澤ユウジさんとショータ・ジェンキンスさんはともに釣行頻度が高く、長時間・長距離の移動を伴うフィッシングスタイル。そんな両名が着用するフットウエアは、シマノが“日本の渓での最適解”とうたう『DSストレッチウェーダーPRO Z』と『ジオロック ウェーディングシューズ PRO』だ。実際の釣りで感じたメリットや、これまでのウエーディングと比べて変わった部分、使い込んだからこそ分かった細かな便利機能まで、それぞれの視点から話を聞いた。

文◎North Angler’s編集部
北海道での釣りをメインに、北海道の自然を体感するキャンプの情報や、フィールドを守るための環境問題にも光を当て、多角的な視点からアウトドアライフを提案している「North Angler’s」の編集部。
フィールドと使用頻度
――まず、どんなフィールドで着用しましたか?
米澤 主に渓流で、全体の9割くらいです。残りの1割ほどが湖。釣り自体は通年ですが、4~11月がメインになります。釣行回数は週3~4回で、年間100~150回近く。『DSストレッチウェーダーPRO Z』は発売されてから約2年なので、これまでに100回くらいは着用していると思います。
僕の場合、川を釣り上がっていくスタイルが中心です。午前中から夕方まで一日釣ることも多く、1回で平均7~8km、長いときは15kmくらい歩きます。
ショータ 僕は一番多いのが中禅寺湖で、ほかに湯川、鬼怒川源流域、本流や渓流などです。今年はモンゴルにも遠征していて、歩いた距離だけでいえば、そこが一番長かったですね。
中禅寺湖では岬など、ある程度ポイントを絞って立ち込む釣りが多いです。4~5月は水温がかなり低いので、ずっと水中に立ち続けるわけではなく、陸に上がって休みながら釣ります。一方、本流や渓流では長距離を歩くことが多い。今年だけでも約60回は使っていて、週2~3回のペースです。
右/ショータ・ジェンキンス 中禅寺湖を中心に、国内外でトラウトフィッシングを楽しむアングラー。5歳の頃に身近な川でクチボソを釣ったことが、釣りとの出会いだった。現在のスタイルにつながる大きな転機となったのは、イギリスで出会ったパイク。その魚への強い憧れからトラウトへの興味を深め、今は釣りを仕事としながら、国内外のフィールドで腕を磨いている
ストレッチ素材だから、しゃがんでも背中が突っ張らない
――以前のウエーダーと比べて、とくに違いを感じたのは?
ショータ 一番大きかったのは、しゃがみやすさです。以前使っていた伸びないウエーダーだと、しゃがんだときに背中が突っ張って、腰まわりがパンパンになる感じがありました。それが原因で腰が痛くなることもあったんです。
このウエーダーは生地が伸びるので、しゃがんでも背中が突っ張らない。足も上げやすくなりました。逆にいうと、長距離を歩くこと自体は以前のウエーダーでも、それほど歩きにくいとは感じていなかったんです。だから僕の場合は「歩きやすい」というより、「しゃがみやすい」、「足を上げやすい」という部分の違いが大きいですね。
米澤 僕もストレッチ性による動きやすさはかなり感じます。渓流では岩をまたいだり、倒木を越えたりする場面が多い。太い木が川に倒れていて、大きく足を広げてまたがなければならないこともありますが、そういうときに突っ張った感じがほとんどありません。
とくに気に入っているのは、魚の写真を撮るときです。トラウトを撮影する際は、水面すれすれまでしゃがんだり、膝を深く曲げたり、足を広げたりと、意外と無理な姿勢になります。大きな魚なら、水中に片膝をついて魚を持つこともある。硬いウエーダーだと腰やお尻、膝まわりに負担がかかりますが、これは生地が動きに合わせてくれるので、撮影時のストレスがかなり少ないですね。
長距離でも疲れにくい。ソックス部と足首が動くシューズ
――長時間・長距離の釣行では、どんなメリットを感じますか?
米澤 やはり疲れにくさですね。7~8km、長ければ15kmくらい歩くので、ウエーダーのちょっとした動きにくさでも、積み重なると負担になります。岩を越える、足を上げる、しゃがむといった動作がスムーズなので、長時間履いていても余計なストレスが少ない。
もうひとつ、ソックス部も長距離を歩くうえでは重要だと思います。クロロプレンの部分は、長時間歩いたあとでも靴下まわりが湿って不快になるような感覚がほとんどありませんでした。ここは意外と大きなメリットです。
ショータ 僕の場合は、ウエーダーだけでなくシューズとの組み合わせも長距離歩行では重要だと感じています。
秋や6月くらいの渓流では、長い距離を歩いて釣りをして、帰りは川通しで下ってくるケースがあります。そういうとき、足もとをギチギチにホールドする硬いブーツだと、足首が動かないぶん膝に負担がかかることがありました。
『ジオロック ウェーディングシューズPRO』は足首をしっかり支えてくれる一方で、可動域も残されている。横幅も自分の足に合っていて、長く歩いても膝の痛みを感じにくくなりました。
バネのような加工を施したストレッチ重視の横イトに対し、強度重視の太い縦イトが表側に盛り上がるようオリジナル4層生地のメインファブリックを構成。卓越した耐摩耗性を持ちながら、つっぱり感なく楽に足を曲げ伸ばしできる。
ソックスは日本製の高品質クロロプレンを使用。長期間使用してもクロロプレン内部の気泡がつぶれにくく、「穴が開いていないのに足裏部分に水漏れを感じる」といった症状に悩まされることも減る
透湿性は「普通」。それでも厚着の時期は汗冷えしにくい
――透湿性や蒸れについてはどうでしょう?
米澤 ここは正直にいうと「普通」かなと思います。ゴアテックス製のウエーダーと比べれば、少しそちらのほうが上かなという印象です。ただ、他社のフラッグシップモデルと比較しても遜色はありません。長時間歩いても、ベチャベチャになるほどではないです。ストレッチ性や耐久性といった部分も含めて考えれば、充分実用的な透湿性だと思います。
ショータ 僕はとくに寒い時期の釣りで違いを感じました。中禅寺湖は4~5月が中心で、ポイントまで40~50分歩くことがあります。そのときはパフジャケットなどを着込んでいるので、歩けば当然暑くなる。
以前のウエーダーだと、歩いたあとに背中がビショビショになったり、膝裏あたりに汗をかいて、そのまま水に入ると汗冷えすることがありました。でも、このウエーダーではそういう感覚がかなり少ない。1時間半ほど林道を歩いて帰ってくるようなときでも、以前ほど汗をかいた感じがありません。
真夏に「涼しい」という意味ではないですが、厚着をする時期に汗を逃がしてくれる点にはメリットを感じています。
ソールがしなって岩をとらえる
――歩いているときの、足もとの感覚はいかがですか?
ショータ ソールが硬くて、ほとんど反らないようなブーツだと、岩を足裏全体で「面」としてとらえる感じになります。ところが『ジオロック ウェーディングシューズPRO』はソールに適度な柔軟性があるので、つま先や土踏まずのあたりまで使って岩をとらえられる。
たとえば岩を下りるときや、少しつま先を引っ掛けて登るときに、その違いがよく分かります。以前使っていた硬いビブラムソールのブーツは、ソールが厚くて剛性も高かったので、つま先を使って岩をとらえるのが難しかった。このシューズは自分の足をより自由に使える感覚があります。
――『ジオロック ウェーディングシューズPRO』で気に入っているところは?
米澤 まず本体がかなり堅牢です。僕の場合、釣行回数が多いので、これまでのシューズだとフェルトを張り替える前に紐が切れたり、シューレースホールが傷んだり、表面が剥がれたりすることがありました。
でも、かなりの回数を履いているのに、今のところ本体が壊れて使えなくなるようなことがない。色が褪せるなど、見た目の劣化も少ないです。壊れにくいだけでなく、風合いが変わりにくいところも気に入っています。
ソールは交換式。渓流の基本はカットピンフェルト
――実際にはどんなソールを使っていますか?
米澤 一番多いのは「カットピンフェルト」です。汎用性が高いので、基本はこれ。最近は「カットラバーピンフェルト」もよく使っています。本来は磯向きかもしれませんが、今年導入してみて、渓流でも意外と便利に感じました。あとは、渇水して石に藻やヌメリが出やすいときや、水温が高い時期には「羊毛フェルト」を選ぶこともあります。
ショータ 僕も現状は「カットピンフェルト」が中心です。ビブラムソールについては入手した時期の関係で、自分のメインフィールドで充分に使えていないので、まだそこは評価を控えたいですね。
ジオロックはソールを簡単に交換できるから、フィールドや季節に応じて使い分けられるのがいい。釣り方だけでなく、足もとの条件まで考えて組み合わせを変えられるのは面白いと思います。
寒い時期はBOAが楽。部分的に緩めたいならシューレース
――BOAの使い勝手はいかがですか?
米澤 脱ぎ履きがとにかく楽です。とくに寒い時期は、紐を結ぶだけでも手が冷たくなるので、BOAの手軽さは大きい。締め直しも簡単なので、準備時間を短くできます。
ショータ 僕もBOAは便利だと思います。中禅寺湖の4月は水が冷たくて、釣りをしていると指先がかじかんでくる。そんな状態で紐を結び直すのはかなりつらいですが、BOAなら手袋をしたままでも操作できる。締め直しが簡単なのは助かります。
米澤 ただ、最近は僕、シューレースタイプを選ぶことも多くなりました。
BOAは全体を均一に締め込むのにはすぐれている一方で、たとえば「甲の部分だけ少し緩めたい」というような部分的な調整がしにくいんです。長距離を歩いていると、足の一部分だけに違和感が出ることがあります。紐なら、そこだけ緩めるといった細かな調整ができる。僕の場合は長距離を歩く釣りが多いので、その微調整が重要なんです。
実際、周りのアングラーに話を聞く限り、BOAに少し抵抗を感じる人もいます。締め込みが均一なので足が痛くなることがあるとか、ワイヤーが切れたときが不安だという声ですね。そういう人には、このシューズにはシューレースタイプ(『ジオロック ウェーディングシューズ』)もあることを知ってほしいです。価格もBOAタイプより少し抑えられていて、ベースとなる素材や性能は共通なので、選択肢としてもっと知られていいと思います。
使い込んで分かった耐久性と使い勝手
――耐久性についてはいかがですか?
米澤 生地は厚手で、かなり丈夫だと思います。僕はヤブ漕ぎをすることも多いので、ウエーダーにとっては決して優しい環境ではありません。それでも、ほかのウエーダーと比べるとピンホールが開きにくいと感じています。もちろん、絶対に穴が開かないわけではありません。ただ、同じような使い方をしていても、開きにくいというのは実感しています。
長く使いたい人にとっては、購入後2年間のピンホール無償修理サービスがあることも安心材料になると思います。ハードなフィールドで使う人ほど、こうしたアフターサービスの意味は大きいですね。
ショータ 僕も今年かなりの頻度で使っていますが、今のところシームから水が入ってくるようなトラブルはありません。年間を通してウエーディングする人や、遠征などで連日使う人にとって、耐久性は重要だと思います。
肩ベルトは上に引き上げて締める
――ほかに、使い込んで気づいたポイントはありますか?
ショータ ウエーダーの肩ベルトですね。最初はとくに意識していなかったのですが、ワンシーズン使ってみて、これは便利だなと思いました。
肩のバックルを開いて緩めたあと、ストラップを下に引くのではなく、上に引き上げるようにすると、ウエーダー全体がスルスルと締まっていく。それからバックルを留めればいいので、微調整がすごくしやすいんです。従来の差し込み式のバックルだと、ちょうどいい位置に合わせるのが意外と面倒でした。でもこれは片手でも調整しやすい。
ウエーダーは季節によって中に着るものが変わります。速乾シャツ1枚のときもあれば、厚手のフリースや化繊の防寒着を着て、その上からレインウエアを重ねることもある。そうすると肩ベルトの締まり具合も少しずつ変わります。そこを細かく調節できるのは、長く使っているからこそ分かったメリットですね。
おすすめは長距離を歩く人、釣行頻度が高い人
――最後に、どんな釣り人におすすめしたいですか?
米澤 長距離を歩く人、アップダウンの多い川を釣り上がる人にはおすすめしたいです。あとは、僕のように魚の写真を撮る人。しゃがんだり、水面すれすれまで姿勢を低くしたりすることが多い人には、ストレッチ性のメリットがかなり大きいと思います。
もうひとつは、安価なウエーダーをシーズンごとに買い替えるのではなく、ひとつのものを長く使いたい人。生地の耐久性に加えて、ピンホール修理のアフターサービスもあるので、過酷な環境で着用する人には向いていると思います。
ショータ 僕も、釣行頻度が高い人にはとくにおすすめしたいです。長距離、長時間歩く人にも合っていますし、ソール交換が簡単なので、頻繁に釣りをするほどジオロックのメリットも大きくなる。
それと、ウエーダーのサイズ選びで悩んでいる人にも注目してほしいです。ソックスサイズの別注対応サービスがあるので、「足のサイズに合わせて全体が大きくなってしまう」、などといった悩みを解消しやすい。自分の体に合ったサイズを選びやすく、よりすっきり着られます。
ウエーダーもシューズも、釣りに行く回数が増えるほど小さな違いが効いてきます。実際に使い込んでみて、動きやすさや耐久性だけでなく、ソール交換や調整のしやすさまで含めて、長く使うための道具としてよく考えられていると感じます。
※このページは『North Angler’s 2026秋号』に掲載した記事を再編集したものです。



