冬になると思い出すあの味。寒さが極まるほど旨くなる魚。この時期ならではの釣りの楽しさ。とっておきの寒の味はまさに十人十色。今回は千葉県富津の「クロダイの刺身」をご紹介します。
包丁にまとわりつくほどの濃厚な脂
解説◎坂井勇二郎(さかい・ゆうじろう)
この記事は月刊つり人2021年3月号の記事を再編集しています
冬になると思い出すあの味。寒さが極まるほど旨くなる魚。この時期ならではの釣りの楽しさ。とっておきの寒の味はまさに十人十色。今回は千葉県富津の「クロダイの刺身」をご紹介します。
坂井勇二郎(さかい・ゆうじろう)
千葉県君津市在住。千葉サーフ会長。根っからの投げ釣りマニアの大もの志向で記録ねらいにこだわる
冬のおすすめ。クロダイの刺身
これはまだ初冬の脂の乗り始めのクロダイの刺身。 1月ともなれば白子と見まがうほどの脂をまとう
クロダイ釣りは、春の乗っ込みのコマセ釣り、夏の落とし込み、秋の磯釣りなど季節によってさまざまな釣りが成り立つ。自分の釣りスタイルである投げ釣りでもオールシーズン釣ることができる。そして年間を通じて食してみると、季節による身の状態、味の違いがよく判る。その年間の中でも、12〜4月は、海水温が一番低い時期だからさまざまな魚に脂が乗り、甘みが増す。寒ビラメ、寒ブリ同様、この時期のクロダイの身が好きだ。もちろん、「脂が強すぎて、ちょっと」という方もあると思うが、タイ類の脂は青ものほどのしつこさはないので、万人に好まれると思う。
クロダイは春に卵のうを大きくして産卵する。産卵のタイミングは個体差があり、数ヵ月にわたる。同じ卵を持っているクロダイでも、「旨い不味い」の差は4月あたりから始まり、3月いっぱいは抱卵していても脂が落ちない。5月になると卵に栄養を取られるのか、身の味は落ちてしまう。つまり、この号が発売される厳冬期の1月が間違いない季節ということ。
この時期のクロダイは、内臓を取るために腹を割くと一瞬「白子?」と思うほどの白い大量の脂が腹からドロドロと出てくる。人間でいえば内臓を覆っている中性脂肪だ。このメタボ体形のクロダイの身が甘くて旨い。
2020 年11月に会員の関さんが布引海岸で釣ったクロダイ
食のワンポイント
釣ったクロダイは、その日のうちにウロコを取りはらわたを出す。充分に水気を取り、キッチンペーパーで覆って水切りトレーにのせて冷蔵庫へ。翌日、三枚おろしにしてキッチンペーパーで包み、ラップを巻く。翌々日以降、刺身に。
夕マヅメにヒットすることが多い。このようなメタボ体形のものほど旨い
釣りのワンポイント
冬場はノリを食べているものが多く、富津周辺ではどこでも釣れる。釣りやすいのは、岬南面の布引海岸や下洲港など。
振り出し投げザオ、ドラッグ付き投げ専用リールを2 セット用意し、砂浜ならサンドポール、堤防なら三脚に立てかけて待つ釣り。ミチイトはナイロン3 号、ハリス4 号、ハリは丸海津16 号。オモリ25 号の全遊動仕掛け。エサはイワイソメ、ユムシ。時間は日没前1時間〜日没後2 時間で、その時間に満潮が重なると浅い釣り場ではより確率が高くなる。また、ウネリが入って濁った直後も好条件となる。
なお、周辺ではクロダイ以上にキビレが釣れる。キビレはこの時期、クロダイほど脂は乗らないが、45㎝以上の大型のものほど美味しい。ちなみにキビレの旬は9 月頃。
富津海水浴場のある布引海岸は周年クロダイとキビレがねらえる
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