越冬に向けて充分な体力を付けるため、駿河湾のクロダイは堤壁に着いたカラスガイや甲殻類などを荒食いする。ねらうは港の壁際。クロダイとの近距離戦を楽しもう!
荒食いの秋はヘチ釣りで好釣果
レポート◎伊藤 巧
この記事は『つり人』2019年12月号に掲載したものを再編集しています。
越冬に向けて充分な体力を付けるため、駿河湾のクロダイは堤壁に着いたカラスガイや甲殻類などを荒食いする。ねらうは港の壁際。クロダイとの近距離戦を楽しもう!
伊藤 巧
昭和44年生まれ。愛知県在住。美味い魚を求めて東奔西走。クロダイのカカリ釣りとアオリイカのヤエン釣り、ビワマスのレイクトロウリングが大好き。今年はサーフの尺アジ釣りに燃える予定。下手釣り集団チーム白馬車&江戸前なめろう隊所属
濁れば上層でアタリが連発
秋真っ盛り。海中では魚たちが冬の準備に追われている。越冬に向けて充分な体力を付けるため、駿河湾のクロダイは堤壁に着いたカラスガイや甲殻類などを荒食いする。例年10月下旬は、各港で朗報が飛び交うヘチ釣りの好期だ。シンプルな道具立てで挑むクロダイとの近距離戦は実にスリリング。特に駿河湾最大規模の清水港は、クロダイの放流事業が盛んで魚影が多いこと に加え、ヘチ釣りが盛んな関東に比べて釣り場のプレッシャーも薄い。表層が濁っていれば、ビギナーでも複数釣果が得られる。
山に囲まれた秋の清水港はロケーションが素晴らしい。雲が切れれば富士山を拝みながら釣りが楽しめる
そんな夏から好調が続く清水港で好釣果を連発している釣り人が、かめや釣具清水店の暮林康弘さん。ヘチ釣りのエキスパートとして知られ、今シーズンも半日で18尾の釣果を筆頭に数釣りを満喫している。秋らしい爽やかな陽気に恵まれた9月19日、暮林さんは「濁ってさえいれば警戒することなく上層で食ってくるので、時速5尾前後のペースで釣れますよ」と清水港に繰り出した。
朝の5時、まずは人の少ない鉄道岸壁にエントリー。普段は透明度の低い清水港だが、この日は驚くほど潮が透けており、岸壁際を泳ぐクロダイが見え隠れしている。射程内に近づくまでに悟られて姿を消すことから、今回に限っては少々攻略が厳しそうだ。
暮林さんが持参したエサはカラスガイ。去年同様に駿河湾ではカラスガイの着生が芳しくなく、暮林さんは東京湾で採取してきたカラスガイを水槽で飼育している。大切そうにブクを差し込んであるタッパーからほどよいサイズの粒を選び、さっそく繊維掛けにして堤壁に落とし込んだ。
壁際に沿わせるようにカラスガイを落としていく。濁りが入っていれば上層で食ってくる
この日使ったカラスガイとフジツボ(イミテーション)の付け方。中でも繊維掛け(左)を多用していた
船の陰に打ち込んで見える40㎝をキャッチ
午前8時の満潮に向けて潮が上げてくる中で手早く岸壁を流し、鉄道岸壁から巴川筋に入ったところで最初のアタリ。ゴミがラインに干渉していたので判断が遅れて素バリを引いてしまうが、底近くまで落とせば食ってくるようだ。そして満潮間近の午前7時過ぎ、ちょっとした深みに差し掛かったところでラインがフケた。カラスガイが底に届く直前に36㎝が食ってきた。
巴川筋は起伏に富んでいて流れが目まぐるしく変化する。オモリをこまめに打ち直してていねいに探り、見事ヒットに持ち込んだ
何とか満潮前に本命を拝んで一安心。魚に傷を付けないようタモ網を使って手早くリリースして、潮位が高いうちに大型を手にするため折戸の運河に移動する。水深が1mないような浅場で就餌している年無しクロダイを捜しながら仕掛けを打ち込んでいく。しかし、あちらこちらに姿は見えても食わせられない。「やはり今日は透明度が高いので警戒しているようです」と、足もとを泳いでいく50㎝超えのクロダイを指差しながら苦笑い。
満潮から下げに入ったので、大きくエリアを変えて水深がある江尻漁港に移動。すると船溜まりに無数のクロダイ。55㎝はあろうかという大型の姿も。こちらの気配を悟られる前なら上層で食うと読んだ暮林さんは、カラスガイをスローに沈下させるため、オモリの打ち方を工夫してカラスガイが横を向いて沈むようにバランスを調整。リールからラインを多めに引き出して係留してある漁船の際に打ち込むと、勢いよくラインが走った。見えていた年無しも反応していたが、食っていたのは勢いよく追いかけていった40㎝だった。
江尻漁港の船溜まりには無数のクロダイが浮いていた。気配を消してアプローチすれば食わせることができる
「この釣り方は、鼻先にカラスガイを打ち込むとクロダイが驚いて逃げてしまうので、尾ビレ寄りに打ち込むことが食わせの秘訣です。クルリとクロダイが反転すれば食ってきますよ」とのこと。
こうして厳しい状況ながらも複数釣果を手にできたので、お昼過ぎに納竿とした。これから秋が深まるにしたがってクロダイの活性も上がり、数型ともに望めるので、ぜひ清水港のヘチ釣りで好釣果を上げていただきたい。
潮が透けている日はクロダイの警戒心が高いので、カラスガイをゆっくり沈めることが大切。ただし、沈下をスローにするにしたがってアタリも小さくなるので、わずかなラインの変化を見逃さないこと
これから秋が深まるほどに太ってくるので、一層パワフルなファイトを味わうことができる
イチオシギア
サンライン『黒鯛ISM落とし込み野武士』
風や波によるラインのフラつきが少ない高比重フロロカーボン素材を採用した落とし込み専用ライン。耐摩耗性に優れ、カラスガイやカキ、フジツボが着生する岸壁でも細号柄で勝負できる。視認性に優れる艶消しオレンジ。100m巻き
かめや釣具清水店
住所:静岡県静岡市清水区長崎南町1-46
営業時間:月〜木:9〜22時、金:9〜24時、土祝前日:4〜24時、日祝日:4〜20時
問合先:☎054・344・1191
◆釣り場情報
交通●東名高速・清水IC を出てR1・静清バイパスを由比方面に東進。すぐの庵原交差点を右折して、突き当たりの袖師交差点を右折。南下しながら各釣り場へ