40年前にシマノから発売されたベイトキャスティングリール「バンタム100」。アルミボディーながら当時としては軽量な自重と高い性能で人気を博した。
効率度外視の製法で生まれた継ぎ目なき鎧
Basser編集部=文
「バンタム」の名前は軽くない
40年前にシマノから発売されたベイトキャスティングリール「バンタム100」。アルミボディーながら当時としては軽量な自重と高い性能で人気を博した。
そんな名機を現代の技術で蘇らせる。もちろん「バンタム」の名を冠する以上、中途半端なモノづくりはできない。そこで開発チームが目指したのは、他モデルを圧倒する剛性の実現だった。
バンタムMGL
ギア比は5.5:1、6.2:1、7.1:1、8.1:1 をラインナップ。自重は215 ~ 225g。スプール径は34mm でイト巻き量は12Lb が130 m、16Lb が100 m。ハンドル長は直径82mm(ギア比8.1:1 モデルのみ90mm)。3万9000 円+ 税
しかし、シマノリールのラインナップはすでに剛性・精度ともに高いものばかり。堅牢なリール作りは優れた金属加工の技術をもつシマノのお家芸だからだ。
それでもなお、さらに頭ひとつ抜け出したボディー剛性を手に入れるため、企画チームは「コアソリッド」という、ボディーを一体成型する製法を提案。そうすることでパーツ同士の継ぎ目で生じるガタつきが軽減され、剛性は飛躍的に向上する。しかし、これは技術チームが頭をかかえるほど「非効率」な方法だったという。開発担当の方は次のように語った。
「一体成型の技術がなかったわけではありませんが、この製法は効率が悪いので、手間とコストがかかります。現在の主流はメインフレームとレベルワインンドプロテクター、そして左右のサイドプレートを別々で作り出し、プラモデルのように組み合わせる方法で、それが最も効率的。それに対し、コアソリッドボディーはできあがったフレームの内部に細かいマシンカットを施さなければならないので、製法としては非効率的なんです。ですが、『これまでにないモノを作りたい』という我々の熱意により、コアソリッドボディーの開発にGOサインが出たのです」
歪みのないボディーによって相乗効果的に性能が向上
コアソリッドボディーがもたらすのは高い剛性だけではない。タフなボディーは、内部機関の性能を100%引き出すことにもつながる。そのよい例が「マイクロモジュールギア」だ。従来のものよりも歯が細かく設計されたマイクロモジュールギアは、歯と歯の噛み合わせが密になり(噛み合い数は従来のもので1~2枚、マイクロモジュールギアは4枚)、より滑らかな巻き心地と強い巻き取りパワーを実現した。しかし、これにはリスクもある。
「マイクロモジュールギアは、たしかにギア同士がしっかり噛み合っている状態であれば巻きのシルキーさと力強さにおいて高い性能を発揮します。ですがこのギアは歯数が多く細かいぶん、ひとつひとつの溝が浅い。つまり、ギアの噛み合わせがずれてしまうと、空転やギアの欠損に繋がります。そのためにはピニオンギアを固定する『XSHIP』機構や、歪みの出ないボディーが不可欠なのです。コアソリッドボディーによって、このギアシステムの性能がさらに引き出されます」
大型ルアーの遠投性を追求したMGLスプール
このリールには飛躍的な軽量化と低慣性化を実現したMGLスプールが搭載されている。「慣性」とは、静止している物体が静止し続けようとし、また運動している物体が運動し続けようとする力のことである。つまり、MGLスプールとは軽い力で回り出し、軽い力で止まる特性を持つ。それにより軽量ルアーのキャスト時でも素早くスプールが立ち上がり、遠投や低弾道なキャストが可能になる。
ここでひとつの疑問が生じる。バンタムMGLに装備されたMGLスプールのイト巻き量は16Lbで100m。16Lbで80mの「メタニウムMGL」に比べて、より重量級のルアーに基準を合わせていることは明らかだ。
では、重量級ルアーに低慣性スプールは必要なのか。重たいルアーであれば、キャスト後は慣性(スプールが回り続けようとする力)が働いたほうが遠投は可能ではないのだろうか?
「たしかに、慣性の理論からするとそういった考えも浮かぶと思います。結論から言えば、重量級ルアーであっても明らかにMGL(低慣性)スプールのほうが飛びます。風の影響を受けない東京ドーム内で散々テストをしたのでこれは間違いないです。その理由は、重量のあるスプールは、回り続けようとする力が強いぶん、結局ブレーキを強くしてやらなければいけません。それよりも低慣性スプールに弱ブレーキで気持ちよく回り続けてもらったほうが飛距離は出るのです」
発売から1ヵ月、すでに生産が追いつかないほどのヒットを記録している「バンタムMGL」。40年前に生まれた名機へのリスペクトにあふれたシマノ技術の粋をその手に感じてほしい。
シマノ
2018/3/26