タイラバは手軽でシンプル。なのによく釣れるルアーである。そしてポイント探索の楽しみをプラスできるボートフィッシングは、この釣りの釣趣がさらに倍増する。
魚を捜す面白さをプラス!ボートタイラバの世界
写真と文◎編集部
タイラバは手軽でシンプル。なのによく釣れるルアーである。そしてポイント探索の楽しみをプラスできるボートフィッシングは、この釣りの釣趣がさらに倍増する。
この記事は月刊『つり人』2021年6月号に掲載したものを再編集しています
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タイラバなら自分で操船でも楽しめる
静岡県沼津を拠点に活動する中村宗彦さんはタイラバに魅せられて10余年になる。とりこになったきっかけはプレジャーボートフィッシングだ。沼津市に住む釣友でボートオーナーの水上成郎さんと、最初はタイラバではなく、ひとつテンヤ釣法からマダイ釣りにチャレンジ。
沼津に面する駿河湾は海底変化に乏しい。広大なフラットエリアの中からタイラバで探り当てた一尾は格別の喜びがあるというのがテイルウォークに勤務する中村宗彦さんだ
しかし、ひとつテンヤは軽い。一般的に3号(約11g)~15号(約56g)を使う。快適に釣りができるのは水深40mくらいまでだ。沼津周辺の海域は少し沖に出ただけで90~130mと深い。潮が速くなれば軽いテンヤを底付近に留めておくことが難しくなる。
その点タイラバは深場も探りやすい。中村さんと水上さんがタイラバを試してみれば、沼津周辺では深場ほどマダイの釣果は安定することが分かった。さらにはエサを気にせず、手返しよく探れるのもメリット。こうして沼津でタイラバの威力を実感した中村さんは、テイルウォーク製品の営業や開発で国内のみならず世界中の海を釣り歩くようになった。
多くのプレジャーボートが浮かぶ沼津の海。釣友と会えば情報交換
「アジア圏では韓国、マレーシア、タイ。ヨーロッパ圏ではフランス、イタリア、トルコ、ギリシャ、スペイン。それにアメリカでもタイラバで釣っています。タイラバに反応する魚は世界各地にいます。タイ系の魚だけでなく根魚や青ものもよく釣れる。なにせシンプルな釣りですから、各国の釣り人はとても興味をもってくれるんです。ワールドワイドに展開できる釣りだと実感しています」
と中村さんは言う。こうしたタイラバ自体の釣趣に魅せられているほかにも、ボートフィッシングとの相性のよさも中村さんがこの釣りを楽しんできた理由のひとつ。
朝日が輝く凪いだ海。初夏はボートフィッシングが心地よい季節である
「船長任せではなく、ポイントを自ら当てるのはやっぱり楽しくて奥が深い。タイラバという釣りは一ヵ所で爆発的な釣果が出る釣りではありません。当たらなければ動いたほうがいいし、手返しよく動ける釣りだとも思います。私と水上さんがメインで探る大瀬崎から田子の浦を結んだ内側はショアライン以外は海底変化に乏しく、延々フラットです。このだだっ広い海でマダイに口を使わせるのは奇跡と思うこともありますが、ヒットさせた時の喜びはかなり大きいんです」
そう言う中村さんは芦ノ湖をベースに幼いころからバスフィッシングを楽しみ、トーナメントにも参戦している。魚を見つけ出す感性はバスフィッシングをベースに磨いたという。
魚探に注視しながらポイントを絞り込む
マダイの反応は底付近に出る。潮の動き(ノット数値)や水深変化は常に注目
横から風が受けるようにドテラ流し
4月初旬、水上さんの愛艇の基地である静浦港で中村さんと落ち合った。日の出とともに110馬力のプレジャーボートをスロープからおろす。
静浦港が水上さんのボートの基地
「ポイントはすぐそこです」
水上さんの言葉どおり、港から10分ほど走ると底から5mほど上にマダイらしい反応が出た。釣り始めのポイントは水深が90m。潮の動きは緩く0・5ノット程度である。
ボートは船体の横から風が受けるようにドテラ流しにする。釣り人は風向かいに立ち、タイラバを落とす。こうすれば船が流された時にラインが斜めになる。リトリーブ速度の加減やヘッドの重さを調整すれば底付近のレンジ(タナ)をキープしながら広範囲を探れる。
潮目に乗ってしまうと著しく潮の動きが緩くなる。その際にある潮にボートを乗せてドテラで流していく
中村さんはPE0・8号のミチイトにリーダーにフロロ5号を20mほど取る。リーダーは75gのタングステンヘッドを通して、その下にはタコベイト、カーリーテールのネクタイワーム、さらにネクタイとフックを同調しやすくするためのチョン掛けタイプのワームもセットした。つまりヘッドとフック以外はすべてワームのみのパーツを使用。カラーはグリーンで統一している。
この日の中村さんのタイラバはワームをメインに組み合わせた。タコベイトにネクタイワーム、そしてハリがたなびくネクタイと同調しやすいようにチョン掛けワームもセット
ワームはタイラバをボリューミーにし、かつ輪郭をくっきりと見せる。中村さんはタコベイトの足がフックに被らないように少し短くカットして使う。シリコンラバーに比べればフグに齧られても残りやすい
中村さんが「グリーンの力」と言うくらいシルエットが際立ち多くの魚が反応するグリーン。サバがあまりに食ってくる時はカラーチェンジも有効でこの日はオレンジにするとサバアタリが減少。さらにヘッドを重くしてサバの泳層を突破させる
「ワームをメインで使うのはシリコン製の薄いラバーに比べ、ボリューミーで全体の輪郭がくっきりと出るからです。加えてグリーンを好んで使うのはシルエットが際立ちやすいから。深場の暗い海底でタイラバの存在感が高まるんです」
最初のアタリは水上さんに来た。鮮やかなエラを広げて水面を割ったのはホウボウである。今度は中村さんのサオが曲がった。タイらしい三段引きはなく、途中で抵抗感が増した。風船のように膨らんで上がったのはヨリトフグ。この魚が群れなすとスカートやネクタイがいくつあっても足りないくらい噛みちぎっていく。特にシリコン製のスカートやネクタイは消耗が激しいそうだ。
「フグが釣れる場所は移動をすべきか迷います。そこは何かしらの要因で魚にとって居心地のよい場所だと思うからです。フグが釣れ続いた後でマダイのアタリが来ることも珍しくありません」
後編「着底から5巻きに集中!」へ続く……
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