都市部の海にも大型サヨリが回遊する好機。攻めのカゴ釣りで爽快に！ スリリングに！ 美味しいサヨリを釣って食べてみませんか。
キャスティングとリーリングで誘うサヨリ釣り
この記事は月刊『つり人』2023年１月号に掲載したものを再編集しています
サヨリに特化した浦安釣法とは？
サヨリは美味魚である。ほどよく脂が乗った白身は昆布締めやフライが絶品で寿司種にも使われる。細長い姿態から身が少ないように思えるが、冬から春にかけては30cm超に成長し、サンマと見まがうほどである。分布は本州沿岸のほぼ全域だ。東京湾の湾奥部にも回遊し、人気のエリアが千葉県浦安周辺。その名も「浦安釣法」と呼ばれるカゴ釣りが盛んで、老若男女がサヨリ釣りを楽しむ。
浦安のサヨリ人気をけん引してきたのが「工房浦安」という仕掛けメーカーである。創業者の故・友常忠男さんはシマノジャパンカップ投げ釣り選手権の全国大会で活躍したこともある投げ釣りのエキスパート。実釣で生まれた多彩なアイデアを手作りでカタチにし、投げ釣りファンやサヨリ釣りファンが知る人ぞ知るアイテムを手掛けてきた。そのひとつが「サヨリン」シリーズだ。サヨリ釣りに特化した遠投カゴ仕掛けで浦安界隈では「これを使わなきゃサヨリは釣れない」と言う愛用者も多い。
では、浦安釣法とはどんな釣りなのだろうか。
まず、仕掛け自体は以下の通り。
カゴ釣りといえば一般的にコマセカゴを背負える大型ウキを遠投し、仕掛けを潮に乗せて流したり、漂わせたりする釣り方だ。
一方、浦安釣法は遠投後ゆっくりとリーリングして手前にサビき続ける釣りである。それはシロギスの投げ釣りのようでもあり、表層をリーリングしながら探るトップウォータールアーのような要素もある。サヨリがヒットすると、水面が爆ぜたり、ピョンと跳ねてテイルウォークをしたりする。興奮のヒットシーンが楽しめるのだ。
サヨリは表層を群泳するため、エサは常に水面付近になければならない。仕掛けを止めずにサビき続ける理由は、仕掛けをなびかせてエサを表層に漂わせるためでもある。またサヨリは目がよく警戒心も強い。だからハリスは0.8号と細く、ウキからハリまで２ｍ以上の長いハリスを用いる。この長いハリスは魚がエサを食い込んだ際、サビき続ける仕掛けの抵抗を緩和する効果もある。
ハリスの長い仕掛けを遠投すれば当然絡みやすい。遠投できることはもちろん、仕掛け絡みを解消するために考えられたのが「サヨリン」だ。改良を重ねた最新型が「スーパーサヨリンⅡ EX」。絶妙な角度を付けたテンビンがセットされ、キャストの飛行時も着水時もハリスが絡みにくいのだ。またコマセカゴが全遊動なのも特筆もので、食い込みをさまたげず、アタリが大きく出やすい。
30cm以上の大物をねらう
浦安市総合公園と高州海浜公園は、浦安周辺の主なサヨリ釣り場である。
コロナ禍で都市部の釣りが注目されるなか、湾奥のサヨリ釣りも非常に人気が高まった。そして湾奥のサヨリファンが集う中心地といえるのがこの２つの公園といってもよい。当地ではサヨリの釣果は９月から上向き出す。しかしシーズン初期は数が釣れても小型のエンピツサイズばかり。「カンヌキ」と呼ばれる30cm以上が回り出すのは例年11月からだ。冷え込むほど数は減るが型はよくなり、概ね４月くらいまでカンヌキが有望だ。３～５月は40㎝に迫る大型も釣れることもよくある。11月上旬、サヨリのサイズが上がってきたということで浦安釣法を愛する４名が、浦安総合公園でサオを並べた。
ビシッと美しいフォームでサオを振り抜き、余裕で100ｍは飛ばしているベテランが幸田将明さんだ。浦安生まれ浦安育ちの幸田さんは創業者の友常さんとも交流が深かった。当然、浦安釣法の造詣も深い。
「キャスト時のタラシ（穂先からカゴまでの長さ）は１ｍ。多くの人は右方向に仕掛けが飛びがちです。左45度くらいに飛ばすことを意識して投げるのがコツで必ず後方の安全を確認してから投げてください。リーリングは一定速でゆっくりと、サオが重いので柵にサオを乗せて巻くと安定して巻けます。コンコンとアタリがあってもすぐに合わせちゃいけませんよ。グンと魚の重みが乗って穂先が入るまで待つこと。いつ合わせるかという駆け引きもまた浦安釣法の魅力です」
とは幸田さん。お隣の根岸政三さんは１年前から浦安釣法を楽しんできた。多彩な釣りのエッセンスを応用して仕掛けにも一工夫を施すアイデアマンである
「これまでアユ、タナゴ、マグロといろんな釣りをやってきたけど、サヨリ釣りは繊細さもあればダイナミックさもあって実に奥が深い。すっかり魅せられちゃいましたね」
このふたりのベテランに手ほどきを受けながら楽しそうにキャストをしているのが原千晶さんである。
躍り上がったサヨリに笑みがこぼれる原さん
「サヨリが美味しすぎるのがきっかけで、釣りを始めたんですよ」
そう言う原さんは2020年に千葉県一宮町に移住した。友人に誘われ近所の外房の海でサヨリを釣る機会があった。初めての釣りで道具はレンタル。それでもサヨリがポツポツと釣れた。そして自分で釣ったサヨリを食べ、その滋味に驚いた。以来「なんで今まで釣りをやらなかったのだろう」と多彩な釣りを楽しむようになったという。外房各地の港にアジやサヨリを釣りに行くうち出会ったのが、今回のメンバーを招集した久留隼人さんだった。久留さんも生前の友常さんと親交があり、多くの人に浦安釣法の魅力を知ってもらいたいと自身のYouTube「はやとちゃんねる」でも発信している。
久留さんも良型を連発させる
「サヨリはニッチな釣りです。イワシミンチを溶いた水コマセ を使ってノベザオで足もとを釣る手軽な 釣り方もありますが、浦安釣法はまた違 った釣趣があります。きっとサヨリ釣り がもっと面白くなるはずです」
と久留さんは言う。なぜ遠投が必要かといえば、サヨリはベイトフィッシュでもあり、岸際の浅場にいるとスズキなどのフィッシュイーターに追い込まれやすいからと持論を語る。足もと付近でもヒットすることはあるが、それは沖から引き寄せた魚であることが多いそうだ。
サヨリ釣りの趣
「コマセは魚を寄せるためでもありますが、カゴを重くして仕掛けを飛ばしやすくするんです。実際コマセを使わなくてもサヨリは釣れるんですよ」
と久留さん。付けエサはジャリメ。回転しないように真っ直ぐに刺すのがコツで、細身のワームでも釣れるという。
付けエサはジャリメが基本。石粉を使うと手が滑らずに付けやすい
エサのタラシは1cm。ハリスまでこき上げて付けるとアピール度が高い。真っ直ぐに刺すことがキモである
コマセに使うのはマルキユー「サビキ君」。手が汚れずにカゴに詰められる
コマセカゴの空けぐあいは小さいコマセ穴を１/ ２程度開けるのが目安。つまりコマセはほとんど出さなくてもよい
幸田さんによればサヨリの釣果が集中するのは明るい時間帯で午前よりは午後のほうが数は伸びる傾向があるそうだ。この日の潮回りは大潮前の中潮で９時30分に干潮を迎える。午前の時合は「上げっパナの10時過ぎだろう」と話をしていたところ、潮止まり直前の８時30分に原さんがアタリをとらえた。
幸田将明さんは浦安釣法の伝道師的存在
「すぐそこ！ 手前でヒットしましたよ！」
と興奮しながら言う。このように足もと近くで食ってくることも多々あり、沖のどのラインでアタリが集中するなか、その日その時の傾向がある。そしてこの日、最もアタリがよく出たのは岸から40ｍほど沖だった。
上げ潮が利き始めると幸田さんの予通りバタバタと面白いように釣れ出した。「今日はいいですね～」と週２ペースで浦安釣法を楽しむ幸田さんが一投一尾のヒットを楽しんでいる。「これは大きい」と根岸さんが釣りあげると、「いや僕のほうが大きいです」と久留さんも釣りあげる。「ウキが見えないけど、手もとにツンツン来て、なんか釣れちゃいました！」と原さんがさらに大きなサヨリを釣りあげて盛り上がる。30.２cmのカンヌキサイズを筆頭にあっという間にクーラーの底が見えなくなるほどの釣果が出た。
浦安で生まれた浦安釣法はサヨリの回遊ポイントであれば全国で通用する。サヨリ釣りの趣がより深く味わえて楽しいこと請け合いだ。
あわせて読みたい
・釣り用防寒着おすすめランキング17選｜コスパ最強の人気アイテム
・釣り用クーラーボックスおすすめ20選｜高コスパ製品が多数！
・メバルのルアー釣りおすすめタックル23選｜仕掛け・釣り方も解説！
