テナガエビ釣りで「束釣り(100尾超え)」は当たり前。そんな名人が明かす釣果の秘密は、置き竿スタイルにあった。今回は名人の釣果を支える置き竿スタイルの釣り方や、仕掛け・エサなどの工夫を紹介。
テナガエビ釣りで「束釣り(100尾超え)」は当たり前。そんな名人が明かす釣果の秘密は、置き竿スタイルにあった。今回は名人の釣果を支える置き竿スタイルの釣り方や、仕掛け・エサなどの工夫を紹介。
写真と文◎編集部
テナガエビ名人は置き竿スタイル
かつては都内の釣具店に勤務しており、アユ釣りやハエ釣りの競技会で優勝を含む多数の好成績を収めていた橋本春雄さん。テナガエビ釣りではいかに数を釣れるかにこだわっており、テナガエビ釣りで釣果が100尾を超えるのは「当たり前」のことだという。取材日も朝8時から午後1時過ぎまでの釣りで束釣りを達成。
取材日も余裕の100尾超え……!
その秘密はヘラブナ釣りで使う座イスに3本の置き竿をセットし、一定の間隔を保って上げていくという独特のスタイルにあった。
「基本はタイム釣りです。アタリを見てひとつひとつ掛けていくのでなく、アタリが出る状況を作ったら、あとは一定の間隔で竿を上げ下げする。このリズムを崩さないことが大切です」
テナガエビ釣りではエビがエサをつまんでから口に運ぶまでの「間」をとる必要があり、ウキ釣りの場合はウキの動きを見てタイミングを計るが、橋本さんは3本の竿を順番に上げることでオートマチックにこの「間」を作っているのだ。
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「3本の置き竿には意味があります。一定のリズムを作るのに、2本でも4本でもなく、やはり3本がやりやすいからです。そしてちょうどいい『間』がとれます。私の場合、竿は常に右から左に順番を変えずにチェックします。気まぐれで気になった竿を上げないのがポイント。1つの竿に反応があって、エビがそろそろ掛かっているかなと思ったら、頃合いを見てその竿を上げるわけですが、そこで釣れていてもいなくても、1本の竿を上げたら次は隣の竿を確認し、さらに残りの1本の竿も同じように確認します。1本の竿を引き上げて、エビを外すなりエサの状態をチェックしてふたたび仕掛けを投入したら、必ずその流れで残りの2本の竿についても作業する。この繰り返しです」
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仕掛けとエサへの工夫
1日100尾釣るコツは、置き竿スタイルの釣り方以外にも仕掛けとエサにもある。
自作仕掛けを使用
竿は3本とも同じで、量販店で売られている2.4 mの清流ザオ。手元の上の節にストッパーを自作してあり、1 節短い2.1mで使うことが多い。
仕掛けは、道糸から順に以下のパーツで構成される。
・シモリ玉: 道糸に、目印や仕掛けを立たせる役割を担うシモリ玉を2つ通す
・中ハリス: 道糸の末端に極小のサルカンを結び、そこから中ハリスとしてフロロカーボン1.2号を20cm弱ほど接続
・オモリとハリス止め: 中ハリスの先に、自動ハリス止めを結び、そのすぐ上にガン玉を打ってオモリとする。自動ハリス止め上部にはウレタンチューブを被せる。「そのほうがオモリの近くで仕掛けが不自然に曲がらず、全体がまっすぐになる気がする」とのこと。
・ハリスとハリ: 最後に、自動ハリス止めにハリス付きのハリを接続
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この仕掛け全体の浮力は、シモリ玉2つが水面で気持ち縦に並ぶ程度に、ガン玉の重さで調整する。取材日には4Bのガン玉が1個使用されていた。
また、もう一つの選択肢として、虫ピンを曲げて作った自作の小型テンビンも使用する。アーム部分を極端に短く設計しているのが特徴で、これにより、テナガエビが潜む狭い隙間や穴の奥へと、スムーズに仕掛けを送り込むことができる。
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エサについての工夫
使用するエサは、テナガエビ釣りの定番であるアカムシだ。しかし、釣果を左右する重要な工夫は、エサそのものではなく、その「刺し方」にあると橋本氏は語る。
一般的な「チョン掛け」(アカムシにハリ先を少しだけ刺す方法)では、エサの両端をテナガエビにかじられ、うまくハリ掛かりせずにバラしてしまうことが多いという。
この問題を解決するのが、「通し刺し」だ。アカムシの頭部の下からハリを入れ、体の中心を通すように刺すことで、バラシを大幅に減らすことができる。
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竿置きは自作も可能
橋本さんは、ポイントを定めると特製の釣り台を設置し、その上で市販の竿置きを使用するスタイルを貫く。この釣り台は、不安定な足場でも脚ががっちりと食い込むようカスタムされており、誰もが容易に真似できるものではない。
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しかし、別日に取材した新谷一大さんは、簡単な自作の竿置きによって、置き竿スタイルのテナガエビ釣りを楽しんでいる。
新谷さんのスタイルは、歩きながらテナガエビのアタリを探り、有望な場所を見つけると置き竿にシフトする。この釣り方において市販の竿掛け台は、足場の良い護岸では有効だが、消波ブロック帯などでは安定性に欠ける。また、複数の竿を放射状に並べるには、点在する消波ブロックの穴を狙うのに不向きな上、重くて移動が大変というデメリットもあった。
そこで、前述の課題を解決するために考案されたのが、この自作竿置きだ。作り方は驚くほど簡単で、ワイヤーステッカーをゴム板に貼り付けるだけ。これを竿に固定すれば、簡易的ながら様々な釣り場に対応可能な竿置きが完成する。
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ほとんどの場合、この竿置きを竿尻に1つ付ければ問題ないが、丸型の消波ブロックなど特に不安定な場所では、竿の中間地点か穂先の根本にもう1個追加すると安定感が増すという。大小2つのサイズを作れば、ほとんどの場所で対応できるとのことだ。材料と作り方の詳細は以下の通りである。
材料
・ワイヤーステッカー
竿尻用:直径16~18mm、中間用:直径 6~8mm、穂先寄り:直径3~4mm
・スポンジゴム板
竿尻用:10(厚さ)×30×300mm、中間・穂先寄り:5(厚さ)×30 ×300mm
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作り方
竿尻用の場合は、厚さ10mmのスポンジゴム板を100mmほどの長さに切る。ワイヤーステッカーの両面テープを剥がして、スポンジゴム板中央に貼るだけ。
中間、穂先寄り用は、厚さ5mm のスポンジゴム板を50~70mmの長さに切り、同じくワイヤーステッカーを中央に貼る。
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この手軽な自作竿置きがあれば、気軽に置き竿スタイルを試すことができるだろう。次回のテナガエビ釣行では、ぜひこの名人の工夫を取り入れて、一匹でも多くの釣果を目指してみてはいかがだろうか。
※このページは『つり人 2020年8月号』の記事を情報更新・再編集したものです。