沖釣りファンの間で「姉さん」の愛称で親しまれるエキスパート、三石忍さんと旬の魚を追いかける。 今回のテーマはずばり、女性でも「イイね!」と言える沖釣り釣行。 お相手は春告魚の異名を持つメバル。 生きイワシを泳がせ食い込む間を楽しむ繊細な駆け引きに、笑顔が満開。
おすすめ時期:2~3月
つり人編集部=写真と文 晴れ間が差した午前9時。三石さん(右)と今井さんがほぼ同じタイミングでヒットさせた。型が揃うのはイワシエサの効能である
沖釣りファンの間で「姉さん」の愛称で親しまれるエキスパート、三石忍さんと旬の魚を追いかける。
今回のテーマはずばり、女性でも「イイね!」と言える沖釣り釣行。
お相手は春告魚の異名を持つメバル。
生きイワシを泳がせ食い込む間を楽しむ繊細な駆け引きに、笑顔が満開。
この記事は『つり人』2016年4月号に掲載したものを再編集しています。
イワシの接岸とともに
東京湾、相模湾でメバル乗合が解禁するのは2月1日。潮が冷たく釣りもの少ない厳寒期も生きエサにアグレッシブな反応を示す肉食魚。それがメバル。東京湾では主にモエビ、相模湾ではカタクチイワシをエサにする船宿があり、この日訪れたのは古くからイワシメバルを風物詩にする神奈川県の佐島港。
三石さんは佐島のイワシメバル釣りは初挑戦。同船する今井寿美礼さん、金子マミさん、島布民代さんも同じく。泳がせ釣りといえば、追われたイワシがバタバタと暴れる前アタリや、充分に食い込ませるまでの間がスリリング。また、エサが大きいので良型が揃うのも魅力的。

今回お世話になったのは鶴蒔英紀さんと岩崎明仁さんが切り盛りする『鶴丸』。ポイントは航行10分の佐島から芦名沖の水深5~20m。起伏がある岩礁帯だ。

「この辺りにイワシが接岸するのは例年12月くらいから。それが今年は接岸が遅くてね。1月に入ってようやく獲れるようになりました。イワシが獲れなきゃエサがない。ギリギリ解禁に間に合った感じだよ。いつも解禁当初はツ抜けが当たり前なんだけど、今年はパっとしないな。ただアベレージは22㎝くらい。最大で26㎝。型はまずまず。正直なところ一潮、二潮あとのほうが釣果は上向くと思うよ」
そう鶴蒔船長は解禁日のようすを話してくれた。メバルの産卵期は概ね12~1月。産卵後しばらくは食い気がぱったり止まることも珍しくない。船長いわく今期は海水温が高く産後の一服が長引いているのではないかと推測する。

アタリがあれば待つ。送り込む
オモリは15号。2本バリのドウヅキ仕掛け。ハリスは1号で、生きイワシが泳ぎやすいように60㎝と長めに取る。ハリはメバルやヤマメといった細軸だ。サオは穂持ち部分まで軟らかい2・4mクラスのサオが長い仕掛けを扱いやすいが、操作性を重視するなら1・8m程度でよい。三石さんの愛竿はライトゲームに適した万能ロッド、がまかつ『ライブラ』。


「エサ付けを丁寧に、まめにタナを取ること。あとはイワシが仕事をしてくれるから」
と三石さん。イワシはなるべく小ぶりを使ったほうが食い込みやすい。中には大ぶりのイワシもいるので注意して選びたい。
イワシの装餌法





メバルは岩礁帯を好むものの、根から離れてエサを追う。基本のタナは底から1m。三石さんのタナ取りは海面近くまで穂先を下げてオモリを着底させ、座った時に穂先が正面にくるように構える。これで底からおよそ1mのところにオモリが来る。
メバルは上を向いて群泳し、エサが頭上を通過すると食らいつく。反転して一気にねぐらに持っていくような食べ方はせず、深追いもしない。イワシに何度か噛みついて、弱らせてから食い込むのである。
「この釣りではアワセという概念を捨て去ってください。ゆっくりスローに誘って、アタリが出ても完全に食い込んで穂先が入るまで待つんです」

そう話すのは中乗りの岩崎さん。合わせない。ということは向こうアワセで掛かるのを待てばよい。微妙なアタリを察知せずとも、ビギナーが釣果を得やすい釣りといえる。
ファーストヒットは今井さん。ガンガンと衝撃が走った穂先が一気に海面に刺さった。底付近ではなかなかの手応えを見せたが、間もなく力尽きる。浮上したのはカサゴである。
「いいサイズですよ(笑)」
尺近い肥えた魚体に今井さんはにっこり。カサゴはイワシメバル釣りの第2の本命ともいえる。口が大きいのでイワシを吸引しやすく比較的簡単にヒットしやすい。この1尾を皮切りに金子さん、島さんも良型カサゴを釣りあげる。「父と兄が釣り好きで、沖釣りにハマったのは5年くらい前です。シロギス釣りを熱心にやるようになって、去年はマグロを釣りました。カサゴ、うれしいです。それにしてもイワシメバルって繊細です。グンと来ると、つい合わせちゃいます(笑)」と島さん。
そのころ三石さんが穂先の異変をとらえていた。
「追われているね」
不規則なリズムで穂先が暴れる。グングンと穂先が突っ込むがすぐに戻る。ここでゆっくりエサを送り込むと、再びグン。待つ、送り込むを繰り返し、1分ほど経過しただろうか。そこで、穂先が絶えず引き込まれる本アタリの到来。フッキング。水面まで続く、鋭い疾走の後で黄金色の魚体がゆらり。メバルだ。

「どんだけ待たせんの! ってくらい待ちました(笑)」
メバルはクロ、アカ、シロの3種がいて、沿岸で最もよく見られるのはクロメバル。個体によっては金色に輝き、三石さんが手にするのもおそらくクロメバルだ。当地では「金メバル」といって食味がよいそうだ。
メバル凪。ねらうは中層
「いやだ、また合わせちゃった(笑)」
と金子さん。目の覚めるような強いアタリを見ると、つい反応してしまうようだ。
「せっかちだからなマミちゃんは」
と三石さんが指摘。そこで金子さんはアタリがあっても、今井さんとおしゃべり。サオから意識をそらすことで、アワセないようにする作戦。これが功を奏した。本アタリの強い引き込みでサオを手にし、やり取りを開始。キュンキュンと走る小気味よい引きを楽しんでいると、25㎝クラスの良型メバルがタモに収まる。
待望の1尾を手にした金子さんが「メバルってかわいいよね」と言うと、三石さんが「目がチワワっぽいのよ」と答える。確かにクリクリとした大きい目玉は愛嬌があるではないか。
日が高くなると青空が広がる。穏やかな海面に陽光がきらめいた。昔から「メバル凪」と言うがメバルはシケているより凪いでいるほうが実績は高い。その理由は波で仕掛けが躍り、操作がままならないがゆえに釣れないとも考えられる。が、メバルは荒れた海で活発にエサを取りにくく岩陰に身を潜めやすいという定説もある。
三石さんは2尾、3尾と本命を増やす。メバル以外は掛からない。

「ただ待っているだけじゃアタリは出ないの。タナを緻密に取り直して、アタリが遠いと思ったら仕掛けを上げてイワシの泳ぎを確認する。弱っていれば、フレッシュなエサに付け替える。底ばっかりねらっているとカサゴしか釣れないし、根掛かりも多くなる。メバルは中層で食わすのよ」


ゆっくりとメバルとの対話を楽しむように釣っていると、あっという間に沖上がりの14時は目前。今井さんは最後の流しは下バリのみにイワシを付けて投入。と、どういうわけか、エサの付いていない上バリにメバルがヒットする珍事が生じた。
「なんで~?」


澄んだ潮、海中に届く太陽の光、キラリと反射するハリが小魚にでも見えたのだろうか。この1尾を最後に帰港となった。
「メバルといえば煮付けでしょ」
「アクアパッツアやカルパッチョもいいよ」
「このサイズなら刺身もイケる」
と、早くもアフターフィッシングの食卓に思いを馳せる4人。イワシメバルの盛期は3月まで。産後の一服が過ぎれば、釣果もどんどん上向くはず。佐島の風物詩、春告魚との静かな駆け引きをぜひ。



●問合先:鶴丸(℡ 090・8722・6710)要予約
●出船時間:10 ~ 3 月= 7 時、4 ~ 10 月= 6 時
●乗合料金:1 万円(エサ、氷付き)
●レンタルタックル:500 円~
●交通:横浜横須賀道路・衣笠IC で降りて、三浦縦貫道に入る。R134 に出た所で右折・看板にしたがって佐島港。鶴丸の出船場所は分かりにくいが、ゲートのある大楠漁協に入って。左に進むと突堤があり、ここに車を停め、荷物を下ろしてから駐車場に移動する
2017/2/24