福井県若狭湾の遊漁船「雲丸」が確立したバチコンスタイルは、今や全国のスタンダードに。 本稿では、バチコンのパイオニア雲船長が推奨する「レバーブレーキリール」の有効性と、エキスパート東真吾氏が実践する「ゼロテン釣法」を徹底解説。ギガアジの微細なアタリを捉え、確実にフッキングに持ち込むためのタックルバランスとワームローテーション術を公開。

写真と文◎つり人編集部
1946年創刊の雑誌「月刊つり人」を始め、数々の釣りに関するコンテンツを作成してきたつり人社の編集部。
バチコンを提案した遊漁船「雲丸」のスタイルとは
東京湾でも人気が過熱中のバチコン。リーダーに捨てイトを編み付ける変則ダウンショットリグ「逆ダン」を使い、乗合船などのボートからバーチカルにアジをねらう釣り方だ。2010年代初頭に、この釣り方を世の中に提案し広めた第一人者が福井県で遊漁船F-cloud・雲丸を営む雲智和さんだ。
雲丸の釣りものはバチコンのほか、ナイトティップランでねらうアオリイカやイカメタルで、そもそもイカが釣れないときに似た道具立てのタックルでアジをねらってもらえないかと考えたのがきっかけだという。
「深場に映るアジをどうやって釣ろうかなと考えたときに、ルアーで釣ったろ!という発想でいろいろ試していたんです。最初はキャロでねらったんですが全然釣れない。そこから逆ダンの形になって、フックもジグヘッドにしたほうがいいとわかって、いまの形になった。それが10年以上も変わらず使われていて今では全国各地に広がっているのは感慨深いですね」と雲船長。
今回、その雲丸に同乗して取材をする機会を得た。アングラーは雲丸の常連でヤリエのフィールドスタッフも務める東真吾さんだ。東さんは神奈川県在住で、バチコンを楽しむのは東京湾がメインだが、片道5時間の福井にも足繁く通い雲丸のスタイルを自分のものとしてきた。そのタックル立てや考え方は東京湾でも大いに釣果に貢献してくれているという。
レバーブレーキのメリットは絶大
雲丸のスタイルはタックル立てにも特徴がある。まずリールはレバーブレーキタイプのスピニングを使う。レバーブレーキとは人差し指で操作するレバーによって、ローターの逆回転を自在にオン・オフすることができる機構だ。人差し指でレバーを手前に引けばローターとハンドルが自由に逆転可能となり、さらに引けば任意の強さで逆転にブレーキをかけていくことができるというもの。レバーをスプール側に押し込めば逆回転がロックされ通常のスピニングと同じように使えるというリールだが、雲船長が「これじゃなきゃやってられませんよ」と言うほどのメリットとは?
「ハンドルを逆に回しながらゆっくり安定したスピードでリグを落としていけることですね。それにアジはよく反応しますし、実際落とし込み中にアタリが出ることも多いですよ。ハンドルをもったままですから、そのアタリにもすぐ巻き合わせで対応できます」と雲船長。
落とし込みの速さは2~4秒にハンドル1回転ほど。このスピードをキープしたまま落とし込むのは通常のスピニングはもちろん、ベイトのサミングでも難しい。
ゼロテン釣法での優位性
東さんもレバーブレーキが欠かせないという。東さんが得意とするのはゼロテンでの誘い。オモリを海底につけラインを張らず弛めずの「ゼロテンション」とした状態を基準に、そこからわずかに弛めたり張ったりして誘うテクニックで、カワハギ釣りなどで頻繁に使われるが、バチコンでも基本のひとつだ。
「海底の起伏に合わせて底を取り直しやすいのがレバーブレーキですよね。起伏が激しいポイントを探ることが多い東京湾ではとくにこのメリットが生きています」と東さん。
底取りはベイトリールのクラッチワークでも対応できるが、ゼロテンをキープするにはリールが下に来るスピニングタックルの持ち方のほうが楽のだ。
ロッド選びとタックルセッティング
ロッドはシャクリを入れればバット付近まで曲がるくらいの柔軟なものを雲船長はお客さんに薦めている。
「軟らかいサオのほうがバラしにくいですから。それに硬いサオは疲れます。それでやってられんとなってしまうと釣りもつまらなくなってしまいます。泥棒竿(雲船長が監修したロッド)にジギング用の太めのリールシートを採用したのもそのほうが疲れにくいからです」
一方の東さんは積極的にアタリを掛けにいけるパリッとした張りのあるロッドが好きだというが、それでも柔軟なタイプのロッドには必要性を感じている。
「オートマチックに食い込ませられるのが柔軟なロッドです。今日は小浜湾内の小さなサイズで数をねらえるポイントを探ってから、若狭湾に出てサイズをねらうということだったので、小さなサイズ用にこのタックルを使うつもりで準備してきました。でも、大物が掛かったときのやり取りも楽しいです。
バチコン4つの誘いパターン
この日のバチコン船は17時出船の23時沖上がり。小浜湾内で小サイズが釣れているが、湾外ではまだ釣れていない状況。若狭湾の秋のバチコンは数をねらうのが難しい。水温が高く群れが散ってしまっているからで、盛期は産卵で特定のエリアに集まってくる5~6月だ。それでも東さんのように関東から通い込むアングラーがいる理由は、湾外で釣れればかなりいいサイズが期待できるからだ。これから季節が進んで冬になると波の高い日本海には出られない日が続き、小浜湾内限定でなら釣りになるがアジのサイズは下がる。
当日はあいにくの雨模様のなか17時に出船し、予定通りまずは小浜湾内のポイントを探る。水深は21m、オモリは20号とのアナウンス。アジの反応はボトムから2m上まで出ている。
東さんはさまざまな誘いのバリエーションを繰り出して探っている。ロッドワークを駆使した誘いのバリエーションは次のようなものだ。
- 短く、素早く1回シャクって2秒程度ポーズ
- 短いシャクリを連続して行なう
- 大きなストロークでゆっくりリフトしてフォール
- 20~30cmくらいの幅で段階的にティップを持ち上げる
着底はソフトに
ボトムから5~10mくらい上に反応が出ることもあり、逐一船長がアナウンスしてくれる。その高さまでリーリングによるスローリトリーブで巻き上げる誘いも多用した。そのポジションで数秒ポーズしたのち、巻き落としでボトムを取り直す。
「激しくオモリが着底すると、それに驚いてアジが散ってしまう感覚がある」と東さん。レバーブレーキを駆使した巻き落としによるソフトな着底は、それを防ぐのにも有効だろう。
しかし、じわじわと持ち上げている最中に1回アタリがあっただけで、小浜湾内ではほかのお客さんにも本命のヒットはなし。近くにビシアジの船も浮いていて、そちらは時々サオが曲がっているのが見えるのでアジはいるのだが、どうにもルアーに食いつかない。
雲船長は見切りをつけ、19時には湾外へ移動した。水深59m。風と雨が強まってきたが、アジの反応は凪よりも期待できるという。ちなみに雲丸は定員30人の大型の双胴船で安定性が高い。ロール方向に揺さぶられにくいので釣りもしやすいし誘いの操作も安定して行なえる。さらに後方の釣り座はテーブルとベンチが据え付けられた広いスペースに布張りの屋根もあり雨でもかなり快適だ。ビギナーが荒天の日に当たってしまっても安心である。
ワームローテも重要
湾外のポイントは水深が深くアジのサイズも大きめとあって、東さんはパワーが強めでリーダーを太くしたタックルを準備しており、移動直後はそちらのタックルを使っていたが、結局柔軟な泥棒竿で組んだタックルに持ち替えることになった。
「リーダーが細いほうがいい気がして」とのことだったが、軟らかいロッドの追従性を生かして揺れる船上でのテンションキープもやりやすそうに見えた。
「サイズが大きいからジグヘッドは太軸にしてね」と雲船長からアナウンス。東さんは湾内の小サイズ用に結んでいた細軸・外向きフックの「アジ爆ジグヘッド」0.2gから、太軸の「アジメバガチヘッド」0.4gへチェンジ。
ワームはアジングの定番「アジ爆ワーム」で東さんがバチコンで愛用する大アジ対応の2.8インチをセットした。ハンドポワードで素材が柔らかいアジ爆ワームは、アジの口に入った時に折れ曲がりやすくフッキングを妨げにくい。また、ヘッド部分に設けられた2ヵ所のクビレの部分でカットすることでサイズ感を簡単に調整することができることで評価が高い。
「やはりワームのカラーやサイズ感で反応に差が出ると思います」と話す東さんは、「カラーとサイズがあってればすぐに反応が出ますから」ということで、反応が無い時間帯は2~3回投入して手ごたえがなければワームをチェンジしていた。
ギガアジとの遭遇
中層で1回アタリを感じたのち、ボトムを取り直し着底後のワンジャークで深いアタリが出た。赤い泥棒竿が大きく曲がる。何度も船の下に突っ込もうとする引きをいなしてネットインしたのはジャスト40cm。大興奮で撮影している記者に「こんなん普通や!」と雲船長。これが若狭湾のバチコンだ。
東さんはこの後もワームをローテーションしながら2尾を追加。いずれもギガアジと呼んでいい40cmアップの型ぞろいだ。アタリの数は少なくてもこのサイズが複数釣れてくれれば大満足だ。
これからの季節は荒れる日本海への出船は難しく小浜湾内限定の日が多くなるが、若狭湾エリア以外でもレバーブレーキを駆使したタックル立てはもちろん有効。これからバチコンを始める人も、ぜひ参考にしてみてほしい。
※このページは『つり人 2026年1月号』の記事を再編集したものです。


