水中のタイラバの軌道や姿勢やネクタイの動きを庄山英伸さんが解説する。タイラバはヘッドから着底する。浮力の違いと水への抵抗の違いから半固定式を除いて、ヘッドとネクタイは少し離れていることが多く、わずかな差であるがヘッドとネクタイの落下速度や動き出しに誤差が生じることも多い。
頭の中にも鮮明に描きたいタイラバ水中イメージ
写真と文◎庄山英伸
タイラバをやったことがない人が頭の中に描く水中イメージは、船の真下に真っすぐに落ちたタイラバが、同じような軌道を描いて真っすぐに上昇してくる、そんな感じかもしれない。しかしそれは実際の軌道とはだいぶ違うはずだ。水中のタイラバの軌道や姿勢やネクタイの動きを庄山英伸さんが解説する。
この記事は月刊『つり人』2021年6月号に掲載したものを再編集しています
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庄山英伸
福岡県北九州市在住。玄界灘におけるタイラバのスペシャリスト。船からの落とし込みのほか、かつてトーナメントにも夢中になったバスフィッシングがバックボーンにあり、リグや状況に応じた最適なタックルを使い分けやベイトに合わせたパターンフィッシングを得意にする。
水面下のタイラバ。ここから着底まで、そして着底してからをどのようにイメージするかがこの釣りの面白さだ
着底からリトリーブはネクタイの状態変化がキモ
水の中のタイラバの状態を推測してみたい。ここでは、ヘッド+ネクタイスカート+フックにワーム装着という基本的なスタイルで解説する。それでは遊動式と半固定のそれぞれを考察してみよう。
当然ながらタイラバはヘッドから着底する。浮力の違いと水への抵抗の違いから半固定式を除いて、ヘッドとネクタイは少し離れていることが多く、わずかな差であるがヘッドとネクタイの落下速度や動き出しに誤差が生じることも多い。その違いを誘いに用いることはとても有効だと私は考えているため、着底後すぐのリトリーブ速度はめちゃくちゃ速い。クルクルと3~4回転は速巻き回収並みのスピードでリトリーブする。
ヘッドが音を立てて着底。ヘッドに引っ張られていたネクタイ(スカート)のテンションが緩んで一瞬フワッとフレア。すると瞬時にスッと動いてノーシンカー状態のまま海底付近を這いヘッドと密着。するとヘッドの反転流を受けて、また動きを変えて上昇していく。
これが私の考える着底からリトリーブ直後の水中イメージである。マダイに口を使わせるネクタイ(スカート)がシルエットやスピードを大きく変えている。マダイはこの変化に堪らず口を使ってくるのだと思う。
遊動式の場合
こちらは微波動を意識した遊動式。ルアーチェンジをする際はどこかひとつのパーツの色やサイズや波動の出方を変えることが大事
タイラバとネクタイは水流の影響や水の抵抗を受けながら沈んでいく。水深が深くなるほど沈降時間は長くなり、その影響は大きくなる。遊動式の場合、フックに装着したワームの大きさなども大きく沈降姿勢に影響し、極端な話をすればヘッドとネクタイは数㎝から30㎝以上離れる。さらにスカートを装着していれば着底後にフワッと広がって魚を自動的に誘う。
タイラバは着底後すぐにヒットすることが多いのは、こうしたタイラバの動きとその効果が出ているためであると考える。エビなどのエサは落ちているときも着底直後もそうした変化はあまりないが、ルアーの場合は別物のシルエットになって誘うことをイメージしておきたい。
半固定式の場合
こちらは半固定式。専用パーツをプラスして、ヘッドとネクタイ部を圧着させる
半固定式とは遊動式仕掛けに専用パーツをプラスして、ヘッドとネクタイ部を圧着することで通常は一体化させ、ヒットしたあとは魚の首振りなどによって分離するリグのこと。フォール中から着底の瞬間、また巻き始めまで、ネクタイはヘッドに固定されている。その結果、常にヘッドからの反転流をネクタイが受け、絶えず同じ動きで波動を出し続ける。同じ波動に興味を示したマダイが反転の瞬間に口を使うことも多い。
この場合でもやはりバイトが多いのは巻き始めから2~3回転の時である。これは同じ波動でも移動速度の違いという変化が捕食スイッチを入れるのではないかと考える。着底からスッと跳ね上がる甲殻類に似たイメージである。
これまでの経験では、着底前のフォール中にマダイがタイラバに興味を示していることも多く、それらを含めると着底前後のわずかな時間はマダイを誘うリアクションのオンパレードと言っていいかもしれない。
もともとマダイは上から落ちてくるものに興味を示すといわれている。目の構造も水平に泳いでいる状態の視軸線は下方を向いている。これは落ちてゆくものに対し長く見えて興味を示す根拠にもなっている。
遊動式と半固定式の着底前後の動きは知っておいて損はないし、その違いを活用しないとモッタイナイと思っている。
半固定には専用のパーツがあるので、それを装着するだけで簡単に使い分けることができる。シンプルなタイラバの構造の中で大きな効果の違いを演出できる方法なのでお試しあれ。
後編:フォールとローテーションへ続く……
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