アジングのタックルや釣り場は、誰かの狂ったようなこだわりが切り拓いてきた。南紀にあるドリームアップもこだわりを本気で形にし続けてきた人気のルアーメーカーだ。黎明期からアジングに魅せられてきた倉本啓二さんから、アジングの歴史と上達のコツを学ぶ。

語り◎倉本啓二
まとめ◎月刊つり人編集部
紀南釣具センターの店主であり、ソルトルアーメーカー・ドリームアップの代表。ソルトルアーだけでなくアユやフカセなどさまざまな釣りに精通しており、経験をもとに製品開発を行なっている。
黎明期の専門誌「アジングジャパン」創刊号を尺アジで飾った
倉本啓二さんは紀南釣具センターの店長であり、ドリームアップというソルトルアーメーカーも立ち上げています。アジングという言葉が広がりつつあったころに作られた『アジングジャパン最前線』(2010年創刊)では、創刊号の表紙を尺アジで飾っていただきました。当時、東京の編集部では「アジはサビキで釣るものだ、誰がルアーで釣るんだ」という感じだったんですが、当時すでに、関西や中国地方ではこの釣りすごいぞって話が広まりつつありました。しかもサビキで釣る小型ばかりじゃなくて、尺アジもルアーで釣れる。巻頭を飾る候補として、紀伊半島南部で熱心にアジングをしていた倉本さんに声がかかりました。
倉本 連絡もらって、新宮のポイントやったら1月の大潮回りなら尺アジの可能性はありますよって答えたんです。そうしたら、「じゃあそのタイミングで行きますわ!」となって取材が実現しましたね。キャロで磯のスリットにいるアジをねらう釣りだったんですが、カメラの前で釣ることができてホッとしたことを覚えています。
ライトソルトはメバルからアジへと広がった
紀南釣具センターは淡水の釣りも扱う総合釣具店ですよね。その店主であり、さまざまな釣りをされてきた倉本さんが、なぜアジングにのめり込んでいったんですか。
倉本 それは毎日釣りに行きたいからですよ(笑)。磯釣りやと休みの日しかできないけど、アジングやったら店閉めてからでも行ける。それはお客さんも一緒で、仕事前や仕事終わりにちょっとサオだしたいっていうニーズはずっとあった。エギングが出てきて、そのスタイルが成立して、次にライトゲームって言葉が広まってきた頃に、天龍の営業マンやった弓削和夫さん(エギングやライトソルトの第一人者)がうちに来るたびに尺メバルをボコボコ釣ってたんですよ。それが僕らの始まりですね。
当時はどんなタックルで?
倉本 ジグヘッドを自分で作って、ガン玉に夜光塗料を塗って釣っていました。ワームはガルプのベビーサーディン。最初は尺メバルをねらってたけど、ある時アジがボコボコに釣れて。「アジも釣れるんや」ってなって、みんなでやりだしたんですよ。アジングジャパン創刊の3、4年前くらいの話ですね。
和歌山はもともとメバルの釣りは盛んだったんですか。
倉本 それが、メバルの存在すら知らんかったんですよ(笑)。弓削さんが一人で「釣れる釣れる」ってずっと騒いでた。それが全国的なライトゲームブームの走りやったと思います。メバルをルアーでねらうようになり、そこからアジも釣れるんやということに気づいて、アジ専用ロッドやワームが生まれていった。JJマックが一番早かったですね。1万円台で買えるアジング専用ロッドということもあって、むちゃくちゃ売れましたよ。
強い波動をオンオフできる唯一無二のワーム「マッカム」
倉本さんがドリームアップを立ち上げた経緯を教えてもらえますか。
倉本 ちょうどSNSが強くなってきた時期に、お客さんが情報をそっちで取り出したんですよね。お店の力がだんだん弱くなってきた時代で。そこで「自分で作って自分のとこで売ろう」って発想になったんです。最初はアジングだけでやるつもりでした。自分がハマってる釣りやから、こだわって作れると思って。
火がついたのはどこからですか。
倉本 完全に地元、和歌山です。ご当地メーカーができたっていうことで。そこから徐々に卸先が増えていって、各地に営業にも行くようになりました。小売店もやりながらメーカーもやるって大変ではあるんやけど、逆にお客さんと直接顔合わせてるから、何が売れてるかトレンドがものすごくわかるんですよ。情報が入りやすいのはメリットですね。
ドリームアップで一番人気のワームはマッカムですよね。あの特徴的な形のこだわりを教えてください。
倉本 ハンポワ(ハンドポワード)で波動が強いのが一番の特徴です。アジング用のピンテールワームって微波動が特徴なんですよ。でも、マッカムは波動がむちゃくちゃ強い分、海の中でアジに見つけてもらいやすい。でもシャッドテールみたいに常に波動が出っぱなしちゃうんですよね。シャッドやと食わせるタイミングで波動を消せない。マッカムは強い波動のオンオフができる、それが唯一無二のところです。波動が強くてもハンポワやから柔らかくて吸い込まれやすい。でかい波動やからでかいアジが釣れるとかではなくて、アジの活性を上げてスイッチを入れる、気づいてもらうための強い波動ですね。
感度の本質は、ラインをきっちり張れるかどうか
アジング用太軸ジグヘッドの先駆けはドリームアップのモサヘッドと聞きました。
倉本 当時、サーフで40cmを超えるアジを釣ると、従来のアジング用ジグヘッドやと伸びちゃうことがほとんどだったんですよ。それで伸びない線径にした。がまかつさんで作ってもらって、ナノスムースコートで滑りをよくしてフッキング率上げて。形も全部自分で考えました。オープンゲイプが多いアジング用のハリやけど、でかいやつを確実に掛けて獲るためにクローズドにした。アイは暗闇でもラインを通しやすいよう大きくして、ヘッドのくぼみは魚外したり交換したりするときに持ちやすいようになってる。こだわりを全部詰め込んだハリです。
アジングロッドについては「感度」というキーワードがよく出てきますが、倉本さんが言う感度のよさとは具体的にどういうことですか。
倉本 アタリが取りやすいサオということなんですが、ドリームアップのサオはどちらかと言えば、曲がるサオです。アジング用のサオってパリパリに張りがあって曲がらんものが多くて、みんなそれが感度につながってると思ってる。でも実は違う。感度の本質は、ラインをきっちり張れるかどうかなんですよ。そもそもイトが張られてへんかったら、どんな高感度なサオでもアタリは伝わらへん。パリパリに硬いサオは、軽いテンションではたわまないからトップガイドより手前のラインがたるみやすいんです。誰でも使いやすいわけではない。
それが、ドリームコンスリー62L菫が軟らかいのに感度がいいという理由ですね。
倉本 そうなんですよ。しんちゃん(藤原真一郎)はイトフケでアタリを取る釣りをようやってるように、アジングではサオに伝わるアタリの前にイトの動きをとっていかんと掛けられない場面も多い。ドリームコンスリー62L菫はソリッドティップの下のベリー部分が軟らかいことで、どの重さのジグヘッドでも、カーブフォールでも、ラインが張るようなセッティングになってる。だからディープを探っても感度が失われない。
とにかくポイントを開拓することが上達に繋がる
倉本さんは藤原真一郎さんをはじめとしたアジング黎明期のメンバーで集まることは今でもありますか?
倉本 最近はないですね、でも今集まったら絶対おもろいですよ。特に黎明期メンバーの一人である岩本憲司さんは負けず嫌いやから、みんなでサオだして大会みたいにするの大好きでしょうね。あの人、土曜に大阪から来て南紀でメバル釣りしてから愛南まで移動するようなクレイジーな人ですもん。弓削さんも南紀に泊まり込みで2日目、3日目って釣りしてたし。ああいう人たちがおったから今のアジングがあると思う。
倉本さんからアジングファンへメッセージはありますか?
倉本 みんな変態になってほしい(笑)。SNSの情報に頼りすぎずに釣りしてほしいって話です。釣れるか調べてから行くんやなくて、とにかく通って開拓していくような人間がおらんと新しい釣りは広がらへん。僕らも同じポイントに50回通って2匹、なんてことをやってきましたから。でもそういう積み重ねが技術になっていくんですよ。どうせ海の近くに住んでるんやったら、仕事前でも仕事終わりでも楽しめるのがアジングの一番いいところです。磯釣りや船釣りみたいに構えんでええ。まずは海に行ってサオをだしてみてほしいですね。
※このページは『つり人2026年5月号』を再編集したものです。


169%20(2).jpg)
