不安定な足場で大型魚と対峙するロックショア。釣技以前に、安全への意識と事前準備こそが重要と瀬川良太さんは言う。長年の経験から得た安全意識と実践的なファイト術を教わった。

解説◎瀬川良太
ロックショアでのヒラマサゲームを得意とするアングラー。安全意識を最優先にしながら、磯での大型魚とのファイト術を長年にわたり磨き上げてきた。機動力重視の磯靴のプロデュースも手がける。
ロックショアのファイト術:釣り場に着いたらまず確認すべきこと
──ロックショアでは身の安全を意識せざるを得ない状況も多いと思います。瀬川さんが大切にしていることを教えてください。
一番重要なのは事前準備ですね。利き足をどちらに出すかとか、ファイト中の足の運びとか、技術的なことに目が行きがちですけど、まずは自分が乗った磯がどんな場所なのかを把握することが全ての土台だと思っています。
僕は初めての磯に乗ることが多いので、必ず最初に確認することがあって。水がどう流れてくるのか、落水した場合にどう動けばいいのか、グリップが効くのかツルツルなのか、スパイクが勝てる磯か、磯際に海苔やフジツボはあるか。そのうえで、ランディングできそうな場所を先に決めておいて、そこまでどんな動線でたどり着けるか。実際にロッドを持ったまま歩いて、動作確認までやります。
──そこまで徹底しているんですね。
よく言うんですが、「釣り場に着いていきなりサオを振るような人は怪我をする」んですよ。みんな釣る気が先に勝っちゃうんですよね。渡船で渡ると大体夜明け前後ですが、暗いうちから僕は確認作業をしています。もちろん、落水も想定しておきます。そうならないに越したことはないですけど、事前に把握して想定しておけば、いざという時にある程度落ち着いて行動できる。
一番ヤバいのはパニックになることで、頭が回らなくなるし、余計な体力を使うし、どこから上がればいいかもわからなくなる。でも想定内の出来事なら「ひとまず大丈夫」と思って行動できるでしょ。他の人が落水した場合も、自分が落ち着いていればどうにかできますから。
「ビビリ」であることが無事故に繋がる
──安全に対する意識は、どうやって育まれてきたんですか。
僕の基本的な性格がビビリなんですよ(笑)。決して無鉄砲じゃない。磯で大きな怪我をしたことがないんですが、それって、よくビビっているからだと思っています。地磯を歩くにしても、みんな早く歩こうとするじゃないですか。浮石でグラついたり、少し滑ったりしながら。僕は意識してゆっくり歩くんです。「意外と磯歩きゆっくりですね」って言われることがあるんですけど、磯歩きが早いと褒められても怪我したら元も子もないでしょ?
足の運びも普段からかなり気をつけていて、岩に足をぶつけないんですよ。数年前に機動力重視で薄くて軽い磯靴をプロデュースしたんですが、痛いという反響が多くて……。それだけみんな靴を当てながら歩いているということなんですよね。痛くならないように歩くだけで靴も長持ちするし、安全意識も変わってくる。ファイト中だけじゃなく、磯に立っている時間全体の意識の問題だと思います。
安全な立ち位置の選び方
──危険だと感じる地形はありますか。
斜めの磯とウネリがせり上がってくる場所は近づきたくないですね。ウネリのある日なら最初からそこでのファイトは考えない。凪の日でも船が近くを通るだけでせり上がってくることがあるので、基本的には斜面状の場所ではやりません。そういう場所に渡された場合は水際には行かず、かなり後ろでやります。
「なんでそんな高いところで?」と言われるような位置ですね。足場が高いとロッド操作は難しくなりますけど、安全には変えられない。万が一が起こりうる場所で釣りをしているということを忘れないでいてほしいですね。
ドラグ設定は余力を残すことが大切
──具体的なファイトの話を聞かせてください。ドラグ設定はどう考えていますか。
自分の扱える範囲の中で、大分弱い状態にしておくのがいいと思います。人によって扱える範囲が違うので、数字で言うのはあまりよくないかなと思います。僕の場合は8kgから入って12kgくらいが基本ですが、それが弱いと感じる人もいれば強いと感じる人もいるから。とにかく初期ドラグは弱めにして、あとから調節していく考え方です。
それに加えて僕はハンドドラグを多用しています。ロックしているわけじゃなくて、たとえばデカいヒラマサが走る時、どの段階でスピードを緩めさせるかを考えながら手で調整している。ヒラマサって最初は海底に向かって突っ込んでいくでしょ。そのスピードが弱まってきた時は海底との距離は近い状態なんです。止まった時はもう進めない、つまり海底にいる。そこで間髪入れずに頭の角度を1度でも2度でも上に向けておけると、その後のやり取りが全然楽になる。
──ドラグを弱めにしておくことは安全にもつながると。
そうなんです。強引に止めようとすると体がこわばって、ラインブレイクした瞬間に後ろに飛んでしまう。これが危ない。しっかり自分のバランスを保って制御できるドラグがどのくらいかを体に叩き込んでいくことが大事で、そのためには練習が必要です。
昔は友達に引っ張ってもらったり、何かに結んでドラグをじりじり出したりして、このプレッシャーなら余裕を持って動けると確認してきた。頭を使える状態を残しておくことがファイトでも安全においても共通して大切なことだと思います。
体をロッドの一部にするファイトポジション
──磯でのファイトポジションについてはどう考えていますか。
オフショアでよく言われるのがゴールデントライアングル。フルベンドさせて腕を伸ばし、ロッドと腕と体で三角形を作るポジションがあるんですけど、磯ではほぼやりません。あのポジションは重心を後ろに持ってきて、膝を曲げて空気椅子状態、なんなら後ろにのけ反る体勢になる。そこで切れたら回転しますよ(笑)。確かに魚に最大限プレッシャーはかけられるけど、磯では危なくてできない。
磯ではロッドのポテンシャルの6~7割のプレッシャーしかかけられないと思っています。でも制御できているのは、体をロッドの一部にするイメージでファイトしているからです。腕で引っ張るんじゃなくて、体幹を使って体全体がロッドと一体になる感じ。リールを体に近づけて、体幹で支える。そうするとすごく楽で、パワーも出るし、ロッドも立てられる。前側の足に負荷がかかる分、ラインブレイクしても後ろに吹っ飛ばなくて、せいぜい少し尻もちをつくくらいで済みます。
ポンピングはショートストロークで安全に
──ポンピングのやり方にも安全が関係してきますか?
サオを立てた状態の姿勢を崩さない細かいストロークのポンピングを意識しています。ロングストロークのポンピングは、せっかく魚の頭がこっちを向いて寄ってきているのに、ロッドを下げた瞬間にプレッシャーが解除されて、魚がどこでも向けるようになってしまう。ファーストランを乗り切った後にのされる時って、ほとんどポンピング中にロッド先を下げすぎて、リーリングを欲張った時にやられるんですよ。
ロッドを下げた状態は人間にとって不利。だからなるべく自分からそんな状態を作らないようにコントロールする。万が一ロッドを下げた状態で走られても、力んでいなければ安全で、体幹を残しておいて腕だけ前に引っ張られる状態にすれば衝撃を逃がせる。残すところと引っ張られるところを分けておくイメージですね。
──ファイト中は一貫して頭を使える余裕を残すということが重要ということですね。
そうですね。力も頭もガチガチな状態は、あまりいいことがない。ある程度デンジャーゾーンを過ぎたら魚も体力を奪われていますから、そこからのセカンドランは怖くない。もう少し自由にファイトしても大丈夫です。ランディングも、最初に確認した動線通りにやれれば問題ありません。結局、事前準備が全てにつながっているんです。
※このページは『つり人 2026年6月号』に掲載した記事を再編集したものです。


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