1mオーバーにもなる大魚「レイクトラウト」が泳ぐ中禅寺湖はトラウトアングラー憧れの地だ。スライドスプーンという釣り方のパイオニアである阿部博和さんが、今主流となっている中禅寺湖の釣り方を紹介してくれた。

解説◎阿部博和
写真と文◎つり人編集部
レイクトラウトを30年にわたり追い続けているエキスパート。M.T.レイクスという専用スプーンを開発し、「スライドスプーン」と呼ばれるメソッドを確立させた、この釣りのパイオニアの一人。
目次
トラウトの聖地・中禅寺湖の魅力と釣り場の特徴
栃木県の奥日光の入り口、標高1269mに位置する中禅寺湖は、湖畔にそびえる男体山が約2万年前に噴火したことで川が溶岩でせき止められて形作られた湖だ。そんな中禅寺湖には、ニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウト、ブルックトラウト、ホンマス、ヒメマス、イワナの7種類のマス類が生息しているが、特筆すべきはやはりレイクトラウトだろう。
最大で1mを超す大型魚であり、日本では中禅寺湖でしか楽しめないこの魚は、カナダなど北米大陸北部が原産。1966~1969年に当時の水産庁淡水区水産研究所日光支所に移入され、その一部が栃木県中禅寺湖に放流されて定着した。
レイクトラウトの釣法の確立と発展
そんなレイクトラウトを30年も追い続けているのが阿部博和さん。レイクトラウトを釣るために「ロデオクラフト・M.T.レイクス」という専用スプーンを作り、スライドスプーンという釣法を確立させたパイオニアの一人だ。
「M.T.レイクスが発売されたのが12、3年前ですかね。それまでは年間で6匹程度しか釣れなかったのが、道具の進化もあって今では比べ物にならないくらい釣れるようになりました」
最大深度は163mという深さを持つ中禅寺湖は国道側と山側に釣り場が大きく分けられる。国道側はその名の通り湖畔に沿って伸びる国道120号沿いの各ポイントで、シャロー帯が続く。駐車スペースからすぐにエントリーできるためアングラーが多いのが特徴だ。
一方、山側はいわゆるドン深の地形であり、駐車場からポイントまで山道を歩いてアプローチする必要があるため、アングラーは比較的少ない。周年禁漁区との境目である松ヶ崎と呼ばれるポイントまでは概ね2時間ほどだ。近年は熊の目撃情報も多発してきているので備えは万全にしたい。
中禅寺湖の遊漁券は当日売りのみで、朝の3時から湖畔の2ヵ所で発売される。土日には受付に100人並ぶこともよくあるそうだ。(遊漁券詳細は中禅寺湖漁協にて確認)
チャンスタイムは日が昇る前
5月上旬、阿部さんは「菖蒲ヶ浜レストハウス」から出る渡船を利用して山側の松ヶ崎へ向かった。
「中禅寺湖で最大のチャンスタイムは夜明け前です。まずはミノーを投げます。岸沿いでアイソ(ウグイ)やワカサギを探している魚がいれば一発ですから。ダメだったら沖のブレイクをねらってスライドスプーンの釣りをします」
レイクトラウトの釣り方3種
中禅寺湖で現在主流となっている釣り方は3種類。ミノーやビッグベイトを使うプラグの釣り、スライドスプーンによるリアクションの釣り、シャロー帯でのボトムの釣りである。スライドスプーンやボトムは日中でもチャンスは充分にあるが、プラグは強風が吹き荒れていたり、ベイトフィッシュが溜まっていない限り、明るくなってしまうと厳しい展開になるそうだ。
阿部さんは岸沿いにルアーを投げていくものの反応はない。しかし、すぐそばで静かなライズリングが広がった。阿部さんは小魚ではなくユスリカを食べていると判断し、プラグを諦め、スライドスプーンへ切り替えた。
スライドスプーンで誘い上げて横に逃がすテクニック
スプーンは基本的にフォールさせるとヒラヒラと真下に落ちていくものだ。しかし、スライドスプーンと呼ばれるものはクルクルと回転しながら左右どちらかへ斜めに落ちていく。
「レイクトラウトは横に逃げる動きが好きなんですよ。魚を上に誘い上げ、フォールで横に逃がす動きを出せるのがスライドスプーンの特徴です」
この釣り方はかなりシステマチックだ。『2・2・5』や『3・3・9』などの巻きパターンがあり、カケアガリに沿ってトレースしながらバイトのタイミングを意図的に作り出せるようになっている。ルアーウエイトやラインの太さでフォール速度を調整することもでき、奥が深い。
大切なのはカラーローテーション
明るくなるまでこまめにカラーローテーションをしながらスプーンを投げていたが反応はない。この日は岬の先端よりも、よいカケアガリをキッチリとトレースすることが重要と考えた阿部さんは、隣に見えるワンドへ移動した。
ここでスライドスプーンの威力を目の当たりにすることとなった。回収の早巻きに足もとまでレイクトラウトがチェイスしてきたのだ。魚が泳いでいった方向に少し投げ、沈めてからトゥイッチをかけつつ巻き上げてくると再びチェイス。スプーンに接近したところで阿部さんがリトリーブを止めた。それと同時にスプーンが左にスライドすると、レイクトラウトが大口を開けてバイト。すかさず合わせてランディングに持ち込んだのは63cmの立派な魚体だった。
「移動してきてから一度バイトがあったんですが、掛からなかった。レイクトラウトはカラーで反応がかなり変わるので、カラーローテをしつつ同じコースをトレースするようにキャストを繰り返していると、同じような色合いでまたチェイスがあり、ヒットに繋げることができました」
阿部さんが使っていたカラーはアイソを意識したゴールド系。ワカサギの群れが見られないことから、ここにレイクトラウトがいるならアイソを食べているだろうという読みが見事に当たった結果だ。ちなみにワカサギを食べているときはシルバー系に反応がよい。
高感度重視のタックルセッティングを支える9本組みPEライン
阿部さんのタックルは感度を最優先にしたセッティングだ。
「湖の釣りに感度は欠かせません。たとえば湖流。魚は流れのある所を回遊してくるので、流れの存在や向きに気付けるかで釣果は変わります。今年は30年来の大減水で2mほど水位が低く、華厳の滝で放水量をかなり抑えています。つまり普段よりも流れがないのですが、それでも感知できる高感度が欲しいですね」
阿部さんの求める感度を支えているのがスーパートラウトアドバンス マックスパワーPE X9 S-spec(バリバス)である。

「もはやX9 S-specの存在は不可欠です。お世辞抜きに、この9本組みPEがないと釣りが成立しないほどです。X9の3%台という低伸度に加え、S-spec加工という高撥水処理によって滑りがとてもいいんです。水中でもラインが引っかからないというか滑っているような感じでリトリーブが軽い。しかも、魚が後ろに着いた時はさらに巻きが軽くなるんです。この感覚がより分かりやすくなりました。
おかげで、どのタイミングでバイトさせるか作戦を立てやすい。また、S-spec加工によって浮力も高くなっているのでラインの太さでもスプーンのフォール速度を調節できるようになりました。今日は、山側ではブレイクが近いので飛距離もいらないし、ラインの浮力を使って刻みつつフォール時間を長くとりたかったので1.2号に、国道側のシャロー帯でのボトムの釣りでは飛距離重視で1号を使いました」
国道側のシャローではヨシノボリをイメージしたボトムの釣りが有効
山側での釣りを午前中で終え、午後は国道側でサオをだす。フルキャストしてもブレイクに届かないような広いシャロー帯だが、そこにも魚は入り込んでくる。そこでよく捕食されているのがヨシノボリだ。レイクトラウトは点在する岩や手前の敷石などの地形変化にヨシノボリを追いこんで捕食するため、そのようすをイメージしてスプーンを底で躍らせるのがシャロー帯での鉄板パターンなのである。
この時使うルアーは一般的な15g前後のスプーンだが、カラーはヨシノボリに似た茶色系が基本となる。動かし方はロッドシェイクでもデジ巻きでもよい。ただ、遠投して広く探るため、気が遠くなるほど一投にかかる時間が長いのが難点と阿部さんは冗談めかす。
ローライトはチャンス
午後は雲が一面を覆うようになり、ついには雨が降ってきた。
「国道側は浅いので雨の影響を受けやすい。この雨、ローライトは間違いなくチャンスです」といったそばからコツコツとついばむようなアタリが出た。大きくアワセを入れてヒットに持ち込んだのはナイスサイズの60cmオーバー。その後も同じ立ち位置から夕マヅメの一尾を期待したが、天候が急変。土砂降りと強風で撤収を余儀なくされたのだった。
多彩なアプローチが可能
「意図した釣り方ができるスライドスプーンの釣りが、最近は個人的には一周まわってまた面白くなってきましたが、中禅寺湖はビッグベイトやハルゼミの釣りなどいろいろな釣り方が楽しめるのがいいところです。あまり縛られずにいろいろな考え方でやってみてほしいですね。スライドスプーンの釣りだってオフショアジギングからヒントを得た釣り方ですから」
レイクトラウトの適水温は4~10℃ほどと言われている。中禅寺湖では解禁日の4月1日から6月までが好期となるそうだ。近年はアングラーの増加とともにトラブルも増えてきているようだが、挨拶をかわし、マナーを守って中禅寺湖の釣りを楽しんでほしい。
※このページは『つり人 2026年7月号』に掲載した記事を再編集したものです。



