2022年のBasser Allstar Classicを制した帝国のキング・清水盛三さんのウイニングロッド「スーパーノヴァXT」。全銀河に放った探査ドロイドR2-T2の働きでやっと手に入れたこのロッドは、クランキンロッドをめぐる宇宙戦争を終結に導く新たなる希望だったのです。
極私的クランキンロッド10年戦争に終止符か!?
文◎佐々木徹
2022年のBasser Allstar Classicを制した帝国のキング・清水盛三さんのウイニングロッド「スーパーノヴァXT」。銀河に放った探査ドロイドR2-T2の働きでやっと手に入れたこのロッドは、クランキンロッドをめぐる宇宙戦争を終結に導く新たなる希望だったのです。
筆者プロフィール
佐々木徹/銀河系バス釣り雑誌『月刊Basser』編集長。盟友R2-T2とともにバスフィッシングの秘密を探る旅の途中。
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アイチューンが決まっていないクランクが真っすぐ泳ぐ。フォースの導きなのか?
先日、伊藤巧さんのガレージで衝撃的なものを見ました。
ヴォン……!
バスフィッシングの母国ではすでにバスフィッシングにロッドは使われていませんでした。このポスターを見て僕の脳裏に浮かんだのは2023年に購入した一本のロッド。その名は“スーパーノヴァXT”。直訳すると「超新星」。このロッドが発売されたのは15年前のことですが、すでにこのとき帝国のキング・モリゾーはバスフィッシングが宇宙的なものであることを理解していたのでしょう(スーパーノヴァXTは清水盛三さんモデルのクランキングロッド)。
スーパーノヴァXT(エバーグリーン)。これは清水さんがオールスターでも使っていた限定復刻モデル。7ft、ミディアムライトパワーのグラスコンポジットロッド。超先調子
思えば清水さんがオールスタークラシックを制したフラットサイドクランクの名は「フラット“フォース”」。点と点が線に――。僕のなかですべてが繋がりました。やはりバスフィッシングはスペースオペラだったのです。
2022年のオールスタークラシックでは清水さんがウイナーに。これはフラットサイドクランク「フラットフォース」でキャッチした1尾。Use the force.
とくにオールスター2日目にキャッチした2尾はスレスレの薄掛かりでした。スーパーノヴァXTのグリップエンドを持ち、ロッド全体のしなやかさを活かしたファイトでバスを逃がさなかったキングの姿が脳裏に焼き付いています。か、かっこええ……。
僕はすぐさま探査ドロイドR2-T2を全銀河に放ちました。そしてR2がそのライトセーバーを古物商で見つけてきたのは2023年に入ってすぐのことでした。もちろん即購入。
デビュー戦は3月の三島湖でした。この日はスーパーノヴァXTで朝からクランクを引き倒しました。僕は驚きました。そのキャストフィールに……。
自分で使ってハッキリわかったのですが、スーパーノヴァXTは特殊なロッドです。スーパーノヴァXTはグラスコンポジットロッドで、ティップに極めてしなやかなグラスを採用しています。ベリー以下は比較的しっかりしているので、テーパーは極端な先調子。あくまで個人的な実感ですが、ロッド全体にルアーウエイトを乗せるイメージのキャストはうまくいかず、ティップだけを回すサークルキャストでないと上手くキャストが決まりませんでした。
要は先っちょだけがベニョンベニョンなのです
これまで10年以上にわたり僕はクランキングをグラスロッドで行なってきましたが、こんな癖のあるサオは所有していませんでした。ちなみにこれまでの愛竿はエッジのVグラスシリーズ。「クランキングは全体的にしなやかなグラスでやるもの」というイメージが僕にはありました。
正直午前中はキャストがまったく決まりませんでした。しかし、ようやく身体がスーパーノヴァXTに慣れてきたそのころ、僕はこのサオにふたたび驚くことになります。微妙にアイチューンが決まっていないはずのクランクがスーパーノヴァXTで引くと真っすぐ泳ぐのです!
「そんなはずがない!」と思い、ほかのロッドと引き比べてみました。いや、やはりこのサオで引くと妙に真っすぐ泳ぐぞ……。もちろんアイチューンがズレまくっているものはダメですが、「微妙にブレる」くらいのレベルのものは補正してくれるのです。そしてティップのあまりのしなやかさゆえにクランクの泳ぎが生き生きしやすいことにも気づきました。
なぜそんな現象が起きるのか。R2に問うたところ、この優秀なドロイドは「しなやかなティップのわりには強めなベリーセクションがクランクの軌道を適度に制限しているからではないか」という仮説を授けてくれました。さすがR2。説得力あるなぁ。僕はこの現象を「ノヴァ補正」と名付けました。僕のクランキングロッド観にビッグバンが起きた瞬間です。
この極端なテーパーの恩恵はほかにもあります。一般的に軟らかいグラスロッドは手元にクランクのプルプル感が伝わりにくいですが、スーパーノヴァXTはベリーから急にハリがある設計のためか巻き感度が高い。クランクの挙動やボトムとのタッチ感がハッキリわかるのです。
これまで僕はグラスロッドにナイロンを組み合わせることは避けてきました。あまりにプルプル感などがわかりにくくなるからです。しかし、スーパーノヴァXTだとナイロンセッティングがとても気持ちよい。あくまで僕の場合ですが、シャロークランキングでは「もっと潜らせたい」より「ちょっと潜りすぎ」と感じる機会が多かったので、太いナイロンを気持ちよく常用できるメリットはとても大きなものでした。
7ftという長めのレングスなのでコース取りを調整しやすいことやグラスコンポジットなのでバレにくいことは言うまでもありません。
もちろん、極端なテーパー&7ftなので、キャストが決まるサオかと問われればイエスとは言い切れないのが正直なところ。しかし、その欠点が気にならないくらいの魅力がこのサオにはありました。というか、キャストは慣れと練習でなんとかすればよいのです。
結果的にこの日はスーパーノヴァXTで2尾をキャッチ。どちらも弱いバイトでしたが無事ランディングに成功。ロッドに釣らせてもらった感のあるバスでした。
スーパーノヴァXTのデビュー戦(三島湖)ではまだ3月なのにクランキングで2尾も釣れました
ヒットルアーはワイルドハンチとRC1.5DD
これまでクランキングに愛用していたエッジEVC-602。全体的にしなやかで気持ちよくキャストが決まる名竿です
その日から9ヵ月。今では僕は小~中型クランクのすべてをスーパーノヴァXTで引くようになりました。
2023年は多くのクランキンフィッシュをスーパーノヴァXTで釣りました
クセがあるので好き嫌いはあるでしょう。しかし、スーパーノヴァXTが唯一無二のキャラクターをもつ「釣れるクランキングロッド」であるということは断言できます。
最後に重要な事実を書いて終わります。2023年、このサオで掛けたバスは1尾もバラしておりません……。
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