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つり人編集部2025年9月22日

【“大アユ”をオトリにする技術】ジャンボアユの里「馬瀬川下流」でエキスパートたちの攻略法を探る【岐阜】

「友釣りビギナーにぜひ釣ってもらいたい」と猿渡俊昭さんが太鼓判を押す川が板取川上流だ。浸かるだけで癒されるほど透明度が高く、天然遡上の多い今夏は追い合うアユの姿が各所で見られる。

9月に入ると「25cm以下が掛からない」と言う岐阜県・馬瀬川下流。大淵に温存されたアユがワラワラと食みに出て、巨岩の周りでオトリを追っては痛快にサオを絞り込む。そんなジャンボ鮎の里をエキスパートたちはどう釣るのか?

写真と文◎編集部

7月中旬に27.5cm、ジャンボ鮎の里「馬瀬川下流」

8月も20日を過ぎれば大アユの季節である。しかし長良川、九頭竜川、神通川と人気の天然アユ河川は今期、遡上が多すぎで小型ばかりが掛かってしまう。8月に入っても20cmクラスを揃えるのが難しく23cmクラスはなかなか混じらない。おそらく終盤も大アユとのファイトをたっぷりとは味わえない感じの釣況である。一方で岐阜県内の放流河川は7月半ばから巨大化しているという情報も。良型の手応えを求めて中部のエキスパートが通い込んでいる川のひとつが馬瀬川下流である。

馬瀬川といえばビッグトーナメントの競技会会場になる馬瀬川上流漁協管内の釣り場がよく知られるが、ダム下の馬瀬川下流漁協管内はアユの生育がよく、金山町では古くから「ジャンボ鮎の里」を謳って釣り人を呼び込んでいる。アユが大きいだけでなく川の水質もよいため味がよいとされる。昨年の清流めぐり利き鮎会では支流・弓掛川のアユが準グランプリを取ったことでも話題を集めた。

今シーズンの放流は岐阜県の人工産と宮城鮎工房の背掛かりDNAの種苗を合わせて2200kg。オトリ店「クラブハウス馬瀬川」の店主、大前博敬さんによれば「7月中旬に27.5cm198gの大アユが釣れていました。メスのアユでお腹がパンパン。異様な成熟個体ですがこの夏は7月半ばからえらく大きいのが掛かっています」と話す。

「この4、5年、よく釣りに来る川のひとつです。昨年は9月になるとどこからアユが湧いて来たのかと思うくらい急に掛かり出して25cm超が入れ掛かりになる楽しい釣りが何度もできました。今シーズンも終盤はかなり熱くなると思います」

そう語るのは三重県鈴鹿市在住のエキスパート、加藤達士さんである。「クラブハウス馬瀬川」には加藤さんをはじめ牛島一将さん、山田和成さんと凄腕揃いの釣りクラブ「オールウェイズ」の面々がいた。ここでは加藤さんを中心に3人の馬瀬川下流の攻略術を取材していく。

クラブハウス馬瀬川
各地から凄腕が集まる馬瀬川下流の名物オトリ店といえば「クラブハウス馬瀬川」。店主の大前博敬さんは金山町で生まれ育ち、オトリ店は先代から数えて50年近く経営している。大前さんはレジェンド小寺太さんが会長の「巴川遊鮎遊」で技術を磨き、ビッグトーナメントの全国大会に何度も出場経験がある。明るい性格で大会を盛り上げる人気者だ

和良川下流部から探釣するも……

水況は平水よりマイナス30cm。渇水の馬瀬川下流はアカがドロドロに腐ったエリアも多い。加藤さんの提案でまずは和良川筋に行こうと相成り、入川したのは「シカトビ」というポイントである。

「馬瀬川に比べ和良川筋のほうが比較的にアカが腐っていません。数日前には牛島君が82尾と凄い釣果をあげました。その後も40尾超が連日掛かっている魚が濃密なエリアです」

和良川といえば利き鮎会で4度のグランプリを受賞した美味アユ河川である。中原頭首工より上流は和良川漁協管轄となるが、下流は馬瀬川下流漁協が管轄し下流のアユもまた美味である。巨岩が織り成す落差のある瀬が連続している中で加藤さんが真っ先に入ったのは段々瀬の瀬肩に続く深みであった。

和良川

「朝のうちは魚の活性も低いです。まだエサ場に付いていないので深みやヨレを中心に泳がせて探っていきます」

加藤さんの道具立ては極端な太仕掛けではない。水中イトはダイワ「メタコンポデュラヘビー」0.07号(25cmクラスが多く掛かるなら0.12号)、中ハリスはダイワ「鮎タフロン中ハリス」の0.8~1号が基準。サオはダイワ「銀影エアショートリミテッド TH 808m」で短ザオなのも特徴的である。

「大石の川なので細かい操作がしやすい8mは釣りが楽です。普段はソリッド穂先を愛用していますが、大きなアユだと動かしにくい。このサオは先調子の短ザオですがソフトによく曲がってくれる。オトリが弱りにくく、掛けてからの安心感も充分にあるんです」

そう言う加藤さんは立てザオで手前からじんわり泳がせていくと、すぐにゴン!と衝撃が走る。どうやらケラれたようで逆バリが外れている。反応が出たのは黄色く見える小砂利底の手前の筋だ。2回ケラれてからの3度目のアタリで川底にギランと閃光が走る。抜き上げたのは20cmほどのサイズ。

これをオトリに替えれば群れに馴染んでスイスイ泳ぐ。再びアタリがあって追加するも掛かりどころが悪い。もう一度同じオトリにハナカンを通すと小さな反応が出た後にグイグイとサオを絞る良型が来た。タモに収まったのは24cmほど。しかしここからはペースが上がらず6尾で止まる。ポイントを流れの通った筋に移して探るも無反応だ。反応が遠いことから場所移動を決断。牛島さんも山田さんも「渋い」と言って戻ってくる。

和良川でアユの釣れた瞬間
浅場の明るい川底にねらいを絞って次々に良型をタモに飛ばす加藤さん

大アユが潜むポイントとは?

移動したのは馬瀬川下流の池の島公園だ。駐車場の目の前には300mほど続く長い瀬が広がるもアカ腐れがひどい。あらためて型を揃えるポイント選びを加藤さんに聞く。

「型のよいアユは基本的に釣りにくい所に残ります。だから自分がやりにくいと思った所は積極的に探ってください」と明快な答え。たとえば加藤さんが挙げるのは次のような場所である。

・深い所
・荒い所
・水当たりのよい所
・チャラ瀬の流心

いずれもオトリを留めておきにくい場所をきっちり通していくことが大切である。ただし渇水状況では魚の付き場が限られるから難しい。

「渇水期はどうしても魚が動きにくいのでポイントが浅場やトロ場に集中します。水が出れば流心でもしっかりと掛かるようになるんですがね」

そう言うと加藤さんは瀬肩付近の浅瀬から探っていく。明るく見える川底を重点的に泳がせるのだが、概ね水通しのよい流れの落ち口や白泡の周辺が石色はよい。足を使って丁寧に探ると飛び付くような勢いで掛かるアユがいた。孤を描いたサオが反発し、舞い上がったアユがタモに飛ぶ。ズンと入ったのは目測で25cmはあろう。

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真っ黄色の25cmクラスの良型魚

大アユのオトリ操作のコツ

今度はこの大アユをオトリにするが、大型ほど泳ぎが鈍く操作もしにくい。これも大アユ釣りの難点である。加藤さんは何を注意して操作するのか。

「オトリの頭の向きを少し変えるような意識で操作します。沖に出したいのならサオを突き出すようにしますが、行かせたい方向に少しテンションを強めて引くと自然と頭が向きます。すると側面に水を受ける。大きなアユほど側面の面積が広く、その水受けを利用して向きを変えるイメージです」

また、加藤さんは上飛ばしも多用する。こと短ザオ使いの近距離戦はアユが警戒しにくい上飛ばしの効果が高い。

「歩きやすい浅場はポイントを潰しがちです。上流に動いて釣る時はまず上飛ばしで探ってから移動するようにしています」

見切りが早くテンポよく探る加藤さんはピンポイントを次々に撃つのが得意技。オトリを入れにくい細かい筋や石の側面、石の頭も探って釣り残さないようにする。しかし「渇水期はバタバタと動いてもオトリが弱るだけ」と言って落ち着いた足取りで丁寧な拾い釣りを心がけ最大26cmまでキャッチした。

大アユをオトリにして操作する加藤さん
大きなアユをオトリにしても動きが鈍い。顔の向きを上手く変えてやることが操作のコツと加藤さん

じっくり釣るか、動いて釣るか

今度は牛島さんの釣りのようすを見に行った。牛島さんはこの日の数日前に行なわれた「第15回郡上杯争奪清流長良川アユ釣り大会」で優勝。「ひとつのタナにいるアユをすべて掛け取ってしまうくらい丁寧な釣りをする」と加藤さんは話す。

その仕掛けはサオが「銀影競技TH85」、水中イトがアーマード0.2号で中ハリスがフロロカーボンの1号と太め。背バリを常用しており、手尻は短くサオ尻ぴったりに逆バリがくるように調整している。

「僕の釣りは背バリがなければ成立しません。仕掛けが太くてフワフワするアーマードを使うので背バリがないときちんとオトリが沈みません。ただ強度は高いし感度もあるイトなので慣れるときちんとコントロールできます」と話す。

大鮎を管理するための太い背バリ

ガタガタした瀬は石色があまりに悪く下流の平瀬に移動した。明るい石色の流れにオトリを放す。スッと泳ぎ出したオトリが群れに入ってついていく。そのまま対岸の筋を上らせるとゴツゴツと反応が出る。さらには上飛ばしで探っていくと「この辺で掛かりそうですね」と言った瞬間バキュンと目印がすっ飛んだ。これをオトリにすると3連荘。ほとんど立ち位置を変えず瞬く間に掛けてしまった。

「動かずに目の前のアユをどれだけ掛けられるかが面白い。ただ群れねらいは好きではありません。基本的には瀬の中で掛けたい。九頭竜川なんか大好きですよ。ただ今年の中部の天然河川はどこもサイズが小さいので型が揃う馬瀬川下流にばかり来ていますね」

今度は上流の山田さんを見に行く。加藤さんは山田さんの釣りを「あちこち動きまくって数をかき集めるタイプ」と言う。ところがこの日の午後は瀬肩周辺に立って粘りの釣りを見せていた。

「動けば動くほど数は出るという考えで釣りをしていますが、今の馬瀬川下流はそうでもなさそうです。瀬肩周辺のみ石色がやたらとよいんですよ。群れが回遊するのを待っているとバタバタ掛かる。そんな状況だと思っています」

そう話す山田さんのロッドはダイワ「銀影競技TH85」、水中イトは複合メタル0.08号、下付けイト0.6号、中ハリスが1号という仕掛けである。15時を回った頃から淵にいたアユが動き始めたようで石色のよい場所でオトリをウロウロさせているとポツポツと掛かる。そして16時を回った頃にはペースが一気に上がって大型も混じり山田さんも26cmクラスをキャッチしたのである。

終わってみれば3人とも30尾ちかい大アユを舟に溜め、タモに開けると大きなヒレが放つ水飛沫が立つ。牛島さんはラスト30分の入れ掛かりが凄まじかったと言って目を細めるのだった。

山田さん
「動けば動くだけ釣れる」という機動力を活かした釣りが持ち味の山田和成さん。ぶら下げているのは26cmの良型だ
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※このページは『つり人 2025年10月号』に掲載した記事を再編集したものです。

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