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編集部2025年4月10日

Basser400号記念!編集長・ササキが選んだ心に残る記事 ~バスをとことんバスらしく釣りたい~

PICKUP ブラックバス Basser バス釣り

日本初のバスフィッシング専門誌「Basser」。その400号を記念して、心に残った思い出の記事を編集部員および営業マンに語ってもらった。

苦しい1か月間でした。「400号のなかで心に残る記事を選んで」というお題をもらったのが3月4日。締め切りは3月17日でした。今日は4月8日です。ChatGPTであれば数秒でいけしゃしゃと答えを出してくるでしょうが、「選べない、選べるはずがない」と僕は悩みに悩んでしまったのです。それには理由があります。

バス釣り 文◎佐々木徹(ササキ・トオル)
Basser編集長。2006年にアルバイトとしてBasser編集部に入る。上司はバスでギルが同僚。2012年にH-1グランプリをバドで優勝したのとAOYになったのが一生の自慢だけど、そろそろ次の自慢を作りたい40歳。

▼ピックアップ記事 「…選べませんでした。」

若かりし頃の苦い思い出

大学4年生のとき(19年前)にBasser編集部にアルバイトとして入った僕。最初の5年は「原稿」という苦手分野に徹底的に苦しめられました。1本の記事に1週間かかることなどザラで、編集後記を書くのにひと晩かかってしまい、しかも朝イチにチェックをお願いして全ボツを頂戴するということもありました。

もちろん釣りは好きでしたが、右手に弁当、左手にロッドと箸を持ってテキサスリグをシェイクする堀部先輩の姿を見て「とてもついていけない」と入社を後悔したこともあります。車を100km以上運転して朝5時から17時まで釣りをする行為も当時は意味がわかりませんでした。眠いよ。

同期もおらず、周りには釣りに狂った怖い大人たちしかいなかったため、ひとり思い悩んだ時期でもありました。そんな僕が救いを求めたのが『Basser』です。先輩たちが書いた原稿にヒントはないだろうかと夜な夜なバックナンバーを読んでいました。日本で一番『Basser』を読んでいるのは僕かもしれません。

 

たったひとつのことを生涯やり通す

釣り雑誌を読んでいて涙が出る経験をしたのはそのころがはじめてです。たとえば雨貝健太郎さんが書くアメリカの記事。2011年1月号に掲載された「あるB.A.S.S.プロの35年。」は、当時71歳で引退を決めたガイ・エーカーの話です。その締めくくりの一文は僕の心にずっと残っています。

「60歳を過ぎて現役を続ける生き方は、若い世代のバスプロたちの理想像では決してない。現にスキートやアイコネリらは早期の引退を明言している。老体に鞭打ってまでやりたくない、と。生き方としては、たしかにそのほうがスマートだろう。だが、たったひとつのことを生涯やり通す生き方には、心に響く何かがあるように思える」

いつか自分にもこんなふうに人の心を動かす記事が書けるのだろうか……。そんなことを不安に思いつつも、釣り雑誌記者というわりに合わない大変な仕事を一生のものにしてみようと薄く決心したのもこの瞬間でした。

こんなふうに感動した記事はほかにもたくさんあります。ひとつ選べと言うのは無理な話なのです。

Basser

Basser

 

バスフィッシングを愛してやまない理由

ただ、「ワンフレーズ選んで」と言われれば、僕はすぐに決めることができます。それはBasserの二代目編集長・三浦修さんの記事に時おり登場していた言葉です。

「バスをとことんバスらしく釣りたい」

100以上の釣りの対象魚が泳ぐ日本で、僕がバスフィッシングを一番に愛しているのはナゼなのか。それがこのワンフレーズに集約されていると思います。

「バスらしさ」とは何か。水面のルアーを勇敢に襲うのもバスらしさだし、物陰に隠れる臆病者の姿もバスのものです。1inの違いで反応をガラリと変えるワガママさもそうでしょう。その答えは人それぞれです。

この言葉を見たとき、なぜ自分がこんなにバスフィッシングが好きなのかがわかった気がします。そして「Basser」はバスをバスらしく釣るためのお手伝いができる雑誌でありたいと思いました。もっと言うと、自分はバスをバスらしく釣るために生きていることを確信した瞬間でもありました。

 

俺は奴に勝ったことがある

せっかくの機会なので自分が書いた記事もひとつピックアップしたいと思います。あれは2012年。会社の帰りに中央線に乗ると、目の前の席でBasserを読みふけっている青年がいました。僕は吊り革を持ち立っていたのですが、その人は本当に目の前に座っていたので何の記事を読んでいるのか丸わかり。なんとそれは僕が書いた記事だったのです。

それは2012年11月号の「素人がトーナメントに出たらどうなる!?」でした。僕のH-1グランプリ参戦記です。この号に載っていたのは新利根川での最終戦。

Basser

 

この年の開幕戦、春の牛久沼でビッグバドを引き倒し1.4kgと2kgを釣って優勝した僕はその後もコツコツと釣り続け、年間レースで首位を走っていました。最終戦次第でAOYを獲得できるという状況。恐ろしいことに暫定2位は伊藤巧さんでした。その差は790g。1匹分です。

Basser
ウイニングルアーはビッグバド

 

当時の伊藤巧さんは売り出し中の若手という感じでしたが、TBCでは年間上位の常連であり、H-1グランプリでも前年にAOYを獲っていました。2012年も印旛沼戦はパラガマのクランキングで優勝したり、相模湖戦ではビッグスプーンを水面で高速引きしてデカいのを掛けていたり、非凡なのは明らかでした。

試合前にアップされていた伊藤さんのブログ「釣り漫才」(現いとうたくみのお部屋)もセンセーショナルな内容でした。

「新利根川プラに行ってきました。チップでドン☆ シャローロールでも追加。10本近くのバイトをとったかな?? そしてショットで川の真ん中の沈船から55cm!(画像付き)。明日も出る予定でしたが、帰ります!(^^)!」(8月27日のブログを要約)

キュートな顔文字などで巧妙にカモフラージュされていますが、これは漫才ではなくハラスメントです。ルアー名などが不自然なほどに具体的なのは僕に対するサイバーテロ的な意味合いでしょう。

僕は僕でプラに励んでいました。試合直前はだいぶドキドキしていて仕事など一切手につかない状況でした。このときもらった言葉で忘れられないものがふたつあります。ひとつ目は堀部先輩。「プラでは釣れたけど当日釣れる保証はないんですよね」という僕の言葉に対し、堀部さんは「釣れない保証もないだろ」と即答。この言葉はいまだに心の支えです。

もうひとつは試合前日、津輕辰彦師匠が送ってくれたメールです。「明日頑張ってください。結局最後は好きなルアーだと思いますよ」。

そして迎えた当日。期待の朝イチを外して若干慌てた記憶がありますが、ふたつの言葉を思い出しつつ結んだのはクリスタルS1/4oz。一番好きなやつです。冠水した草の脇を高速引きするとナイスバスが飛び出してきました。ネットインの瞬間にフックが外れた光景は一生忘れられません。あのバスがあと1秒早くフックを外していたら、おそらく僕は今ここにいないでしょう。

その後、「伊藤巧はリミットが揃っているらしい」「40cmアップが入っているらしい」と聞きたくない情報がズバズバ入ってきますが、当時の僕には麻雀で鍛えた強心臓があり問題なし。雷雨がきて一時避難したあと、晴れ間が出て最初に握ったルアーがビッグバドでした。下流域のブッシュのど真ん中に撃ち込むと着水と同時に水面が割れて2匹目をキャッチ。

結果は2匹・1470gで8位。伊藤さんは1660gで6位。600g差でAOYレースを逃げ切ることに成功したのです。

当時の記事にはこうあります。
「10年後くらいに伊藤さんが超大物になったら、僕は『俺は奴に勝ったことがある』を口癖に生きていきたい……」

Basser

Basser

 

伊藤さんがB.A.S.S.エリートのセントローレンスリバー戦で初優勝を決めたのは、予想より1年早い9年後の2021年のことでした。

あれから13年が経ち思うことがあります。あれからH-1グランプリに出続け、日々の取材に全力投球し、バスフィッシングの引き出しや知識は飛躍的に増えました。技術も別人のごとく向上していることに疑いの余地はありません。

では、今の自分は2012年の自分よりバスをバスらしく釣れているか? あと1匹釣らないと逆転されることがわかりきった状態でバドをブッシュにぶち込めるか? 4月の牛久沼でバドを引き倒せるか……? そう。今の自分では27歳の佐々木徹にかなわない気がします。その事実もバスフィッシングの深すぎるところであり、だからこそ最高なんです。上手ければいいというものではないんです。だからこそ一生楽しめることを確信しています。

さて、中央線でBasserを読みふける青年を僕はずっとチラチラ見ていました(携帯電話を見ているフリをしつつ)。ありがたいことにその方は僕の記事を本当にじっくり読んでくれていました。心が動く部分があったかどうかはわかりません。できれば僕に気付いて「おめでとう」と言ってほしい気持ちもありましたが、なんとなくそっとしておきたい気がして僕から声をかけることはなく下車しました。

Basser

 

まだまだこれから……

最後に付け加えたいことがあります。H-1グランプリに出続けるなかで、本当にたくさんの同好の志に出会えました。大会後や日常で「ああでもないこうでもない」とバス釣りの話ができる友達がたくさんできたのです。大会のライバルというより、バスフィッシング研究会のメンバーという表現が僕にとっては正しいかもしれません。原稿が書けなかった若かりし僕は、同期という存在がある大企業をうらやましく思っていましたが、気付けばたくさんの同期に囲まれていたのです。感謝。

これからもバスフィッシングの研究を生涯やり通していくつもりです。

 

 

心に刻まれた6つの記事:Basser 400号記念特集

■挑戦的すぎた特集「エドガワは、チバガワ。」が僕の原点
■あの人がオラオラ系!? 伊藤巧さんの熱血バズベイト指南
■人気連載奪取劇!49cmのビッグバスが導いた新たな挑戦
■無謀と思われようと――大森貴洋さんがつかんだ14年越しの栄光
■「ソルトの知見×バス釣り」記憶に残る“異色”の記事

 

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