ハゼのボート釣りのメッカといえば江戸川放水路が有名だが神奈川県側にも負けないくらい魅力的なボート釣り場がある。それが金沢八景の平潟湾だ。以前に比べるとボート屋さんは激減したもののこのエリアなら釣ったハゼでマゴチをねらう魅惑のプランも見逃せない。
ハゼのボート釣りのメッカといえば江戸川放水路が有名だが神奈川県側にも負けないくらい魅力的なボート釣り場がある。それが金沢八景の平潟湾だ。以前に比べるとボート屋さんは激減したもののこのエリアなら釣ったハゼでマゴチをねらう魅惑のプランも見逃せない。
写真と文◎編集部
平潟湾のボートハゼ釣り
ハゼ釣りは、練り船はもちろん、大型乗合船、手漕ぎボート、オカッパリとすべて嗜むハゼ好きが、東京芝浦で170年続く老舗のおかめ鮨の五代目店主・長谷文彦さん。
「ボート釣りも好き。江戸川放水路は年末まで行くし、10~11月は平潟湾に行くのも楽しみだよね~」
千葉県と神奈川県を代表するボートハゼ釣りのメッカだが、平潟湾に関してはボート屋さんの廃業などにより、楽しめる時期がかなり限定的になってしまっている。
「平潟湾に架かる夕照橋のたもとにある『みつだボート』さんは、ボートを浮かべたら目の前が絶好のハゼ釣りポイントだし、スタッフの方たちも親切でめちゃめちゃ気に入っているんだけど、兼業ということでハゼ釣りシーズンの10月と11月の日曜と祭日しか営業していないんだよね。しかも人気が高いから、たまの休みに日和もいいと思い立って出かけてもボートはすべて予約で埋まっていて、なかなか乗れないんだよ」
と残念がる長谷さんだが、かつてはこの界隈に十軒以上あった貸しボート店も現在はほとんどが釣船店への転業または廃業してしまい、だからこそ秋の日曜祭日だけでも開業してくれるみつだボートさんはなくてはならない存在という。
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「相川ボート」で船外機付きボートをレンタル
そしてもう一軒、今なお金沢八景にて開業し続けているボート店が金沢漁港の『相川ボート』である。
奥まった平潟湾が秋のハゼ釣り場なのに対して、目の前が八景島のこちらはアジ、シロギス、マゴチなどが人気ターゲットだが、ボート店のホームページ内にある釣り物カレンダーにはハゼの記載があり、おすすめの時期は9~11月と書かれている。
スタッフに尋ねると、やはりハゼの釣り場は平潟湾とのこと。ちなみに手漕ぎボートで向かうなら、慣れた人なら20分、通常は30分ほど。直線距離は八景島や日産側へ行くのと変わらず、波のある外海と違って波の穏やかな内湾に向かって漕ぐため、それほどの労力ではないだろう。と言いつつも、今回利用したのは9.9馬力の船外機付きのボート。相川ボートには定員3名が2艇、定員2名が1艇ある。
長谷さんも相川ボートの存在は知っていたものの、平潟湾は範囲外と思っており、これまでこちらを利用したことはないという。
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6時に受付をすませ、6時半に出船すれば湾内をスロー走行しても6時40分には見慣れた夕照橋に到着する。
「こりゃあ楽だわ。船内も広いし腰も痛くならないし。それになんといっても定休日の木曜以外ならいつでも利用できるのがいい!」と、ご機嫌な長谷さん。
みつだボートが営業を開始する10月はハゼ釣りのトップシーズンとあって、湾全体がポイントになって釣れ盛る。長谷さんによれば同じ時期の江戸川放水路よりもハゼの型がひと回り以上大きく、1日釣れば束釣りも難しくないそうで、一昨年のような当たり年なら2束超えも連発したというからすごい。
「ただ、2024年はあんまりいい年じゃなかった。営業初日に一応サオ頭でしたけど56尾でしたからね。シーズンを通じて束釣りがほとんどない年でした」
だからこそ気になるのが今年の平潟湾の釣況だが、相川ボートのスタッフも「こればっかりは秋になってみないとわかりません」とのことだった。
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やっぱりハゼは秋から始まる?
まずはみつだボート対岸の夕照橋上流へ。今は潮が高いので岸際までボートで侵入できるが、潮が下げると干上がってしまう浅い干潟になっており、秋の有望数釣りポイントという。が、アタリはほとんどない。7月末というタイミングからして深みを探る必要はないと岸寄りの浅い泥底を中心に探ってみたが、散発的なアタリで今ひとつ盛り上がらない。昨年の不調を引きずっているのか、それとも平潟湾そのものが秋に入ってから始まる釣り場なのだろうか。
平潟湾の釣りに詳しい釣具のポイント・金沢文庫ユニオンセンター店スタッフの話によれば、「このあたりで7月にハゼ釣りの話は聞きませんね。やっぱりボート釣りが始まる10月からオカッパリでも盛り上がる感じです。8月や9月にハゼをねらうなら流入河川でやる人が大半ですが、その情報もまだ今のところ入ってきていません。おそらく秋が深まればハゼも落ちてくるのだと思いますが」とのこと。
平潟湾には宮川、六浦川、侍従川、鷹取川の4河川が流入しており、その多くは岸からの夏のハゼ釣り場であることから、現時点では秋の平潟湾のハゼ釣り状況を予測することは難しい。しかも河口にオイルフェンスが張られていることから河川内にハゼが多いかを調べることも不可能だった。
「せっかく機動力のある船外機船ですから広くランガンしてハゼの溜まり場を探しましょう」とあくまでもポジティブシンキングの長谷さんであった。
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平潟湾の端から端まで探るも……
結果からいえば、湾全体のどこを探っても1~2尾は釣れるもののあとが続かなかった。特に、秋の有望ボートハゼ釣りである夕照橋周辺ならびにマンション前はたまに釣れてもウロハゼのほうが多かった。
「でも、エサにするにはちょうどいい大きさだよ」と言ってマハゼもウロハゼもキープする長谷さん。マハゼに関していえば、一番反応がよかったのは最上流にあたる金沢八景駅前の琵琶島周辺だった。琵琶島を挟んで八景駅寄りは牡蠣殻の多い底質で、反対側のイオン寄りは砂質。どちらもハゼは釣れたが、より反応が多かったのは八景駅寄り。
「夏のハゼってこういうドンツキの水溜まりみたいなところが好きなんだよ。それにしても意外なところにいたね。さすがに手漕ぎボートでここまでは来たことないもんね」と言って気持ちよさそうにサオを曲げる長谷さん。
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ちなみに平潟湾の主だったポイントの水深は満潮時で3.5mほど。初期はそれよりも浅い側を、晩期は深い側をねらうとしても、4m弱のノベザオなら沖に振り込んで底を探る釣りは可能。ただし、干潮時や浅場ねらいでは長さが合わず、ミチイトを短くすれば取り込む際に寸足らずになってしまう。
「なのでボートであってもハゼ釣りはミチイトを最適な長さに調整でき、サオ下を探れてリールの重さも感じない手バネザオがおすすめです。竹製の和ザオもいいけれど、もっと手軽なカーボン製で入門するのもいいですね。私はヘラザオに糸巻きを取り付けて中通しにした自作ですが、最近では同じようなカーボン製の中通しのハゼザオが都内の大型釣具店で販売されていますから探してみてください」と長谷さん。
平潟湾内であればオモリはタイコ型などの1~2号があれば充分。ミチイトは色付きナイロンの1.5~2号。ハリは好みでいいが、長谷さんは袖や赤ハゼの4号を使用。エサは相川ボートでハゼに適した細目のアオイソメが購入できる。
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八景島周りの泳がせでマゴチが連発!
こうして各所で20尾ほどのハゼを釣ったところで「じゃあ、ハゼをエサにマゴチをねらいましょう」と平潟湾を後にした。
平潟湾からは帰帆橋をくぐって野島公園駅前の水路を抜けると近道だが、ハゼを求めて平潟湾の最南端にいたため、夏島町に面した南側の水路を抜けて野島公園の沖合へ。当初の目論見では朝イチで50尾ずつ100尾もハゼを釣ったら午前中にはマゴチねらいに切り替えるつもりだったが、思いのほかハゼで苦戦してしまったことと湾全域をくまなく探ったことから、すでに正午過ぎ。帰港は15時(8月は14時)までなので、移動を考えると正味2時間半ほどしかない。
水路出口で釣れなかったら海の公園側に向かうか、日産前に向かうかと思案しながらの第一投。長谷さんが使用するテンビンはオモリと一体式の鋳込みテンビン15号。
「通常のL型テンビンでもいいと思いますが、やっぱり鋳込みのほうが落下時やタナの取り直しでの仕掛けの絡みが少ないので気に入っています。アームより下でオモリがブラブラしないから警戒されにくいと思います」
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水深は4mほど。タナを取り直すために大きくシャクると、鋳込みテンビンが見えてしまいそうな浅さだったが、すぐに長谷さんに「ゴンッ、ゴンゴンッ!」と明確なアタリ。ロッドを手にすると送り込む間もなく本アタリの引き込み。すかささずアワセを入れるとロッドが大きく曲がった。
浅いこともあってすぐに水面に姿を現わしたのは元気に大暴れする本命のマゴチ。よく肥えている50cmオーバーだ。
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照りゴチ最盛期!
南側の水路を出た野島公園沖で1尾釣ったあと、南風に乗ってそのままシーパラダイス方面のジェットコースター下やレストラン下を探るもアタリがなく、日産前まで戻ると仕掛けを入れた直後にもう1尾同サイズのマゴチを追加。
「いやあ、ハゼで苦戦したからどうなるかと思ったけど、マゴチ連発だね!」
この日産前では次の流し直しでさらなる大型がヒットしたものの、前の2尾でハリスに傷が入っていたようでアワセが決まった直後にラインブレイク。しかし、ハリスを張り直し、「マハゼはもったいなから」と言って12cmほどのウロハゼをエサにしたところ、またまたヒットと止まらない。
「ハゼが釣れるだけで嬉しいのに、それがマゴチに化けるんだから楽しいね」とホクホク顔の長谷さん。
船外機船なら無理なく平潟湾内のハゼ、湾外のマゴチをダブルヘッダーで楽しめる。特に8~9月は照りゴチのピークで食べても美味。産卵を控えたマゴチがどんどん浅場に集まって来る。そしていよいよ湾内に良型ハゼが落ちてくればいうことなしだ。
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※このページは『つり人 2025年10月号』に掲載した記事を再編集したものです。