野遊び・山遊びの一種である渓流釣り。小さな虫から大型の野生動物まで、怪我の予防といざという時の心構えを、秋田県森林学習交流館インストラクターの菅原徳蔵さんに聞いた。
怪我の予防といざという時の心構えをご紹介
まとめ◎編集部
こちらの記事は月刊『つり人』2019年4月号に掲載したものをオンライン版として公開しています。
菅原徳蔵
イワナ釣り、山菜採り、キノコ採りなど、一年を通じて山の恵みを享受している菅原さん。あきた森づくり活動サポートセンター所長を兼務する
Q.04:ヤマビルに注意
Q.好きな釣り場にヤマビルが出ます。よい対策はありますか?
A.昔ながらの塩はやはり効果的。川の中より外で注意。
ヤマビルの出現が多くなるのは6月の梅雨頃から。湿気を好むので、雨が降った時は特に注意します。以前、釣りを終えて駐車スペースで着替えをしたあと、近くにワラビが生えていたのでスボンに渓流タビの格好で採りに行ったところ、1時間ほど運転してからドライブインに入った時、痛くも痒くもないのに血だらけの足を見てヤマビルに気付いたことがありました。
ヤマビルは放っておくと移動した先で産卵し生息域を広げてしまうので、ハサミで切る、塩で殺すなどの処分をします。軟体動物なので踏んでも死にません。ヤマビルに噛まれないためには、肌への進入路になる足首や首回りに隙間ができないように注意します。そして、それらの周辺の衣服に塩(もしくは20%ほどの塩水)やヒル避けスプレーなどをしておくと忌避効果が得られます。「川に入ったら塩が流れてしまうのでは?」と思われるかもしれませんが、ヤマビルの被害にあうのは河原ではなくその周辺の森です。釣りをしている時よりも、途中の経路や着替えの時に気をつけます。
梅雨頃から地域により発生するヤマビル(写真:浦壮一郎)
Q.05:アブに注意
Q.夏のアブは避けられるものでしょうか?
A.これなら大丈夫という決め手はありません(笑)
北陸地方や東北地方の日本海側の渓流で、夏の一時期(お盆頃)に大発生するアブは放っておくと噛んで吸血しようとするため、とても厄介ですが、正直なところ、これという決め手となる対策はありません。顔の周りに来たものを物理的に避けるには、防虫ネットをかぶるくらいでしょう。ハッカやその他の防虫スプレーも効果には限界があります。なお、アブは早朝と夕方のうす暗い時間に盛んに活動することは頭に入れておくとよいでしょう。
釣り人に群がるアブは厄介だが、肌を露出していなければ噛まれることは意外に少ない
Q.06:マダニに注意
Q.他にも注意すべき虫はいますか?
A.最近ニュースが増えているマダニです。
森林や草むらなどに生息するマダニは、昔から一般的な害虫です。通常は噛まれても大きな被害はありませんが、最近、新たにSFTS(重症熱性血小板減少症候群)ウイルスの媒介が確認されるようになったことから、改めて注意が呼び掛けられています。渓流釣りでは、山越えなどでヤブ漕ぎをする際に、マダニに噛まれることがあります。私も手、首筋、目の周りなど、1度に4ヵ所やられたことがあります。一番の対策はヤマビルと多く共通していて、なるべく肌を露出させないこと。マダニに効果がある虫除けも忌避に一定の効果があるとされています。
ヤマビル同様、噛まれても痛くも痒くもないので、自分ではすぐに分かりません。風呂に入った時にチェックしたり、仲間と温泉に入った時に指摘されて気が付きます。山に何日も泊まっている時にやられると、そのうち噛まれたところが赤く腫れてきて痛くなったりします。無造作に手で取るとマダニの口器が肌に残って悪化する恐れがあるとされますが、除去は早いほうがよく、あらかじめアウトドア用やペット(犬猫)用のダニ取りピンセットを入手しておき利用するとよいでしょう。余裕がある時や自分で除去したが化膿や発熱が起きた時は、なるべく早く皮膚科に行きましょう。
マダニがウイルスを持っている場合も、噛んだ相手に移るまでには一定の時間が掛かるため、基本的には自分で早めに取るほうがよい(写真:浦壮一郎)
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