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たかが釣り、されど釣り。

たかが釣り、されど釣り。

つり人編集部=写真と文

先日、編集部の某新人クンと取材に行った。

取材といっても
編集者は基本的になんでも屋であり
取材によって、やることはまちまちだ。

その取材での新人クンの役割は
モデルと魚の調達だった。

釣りをしている最中
ぼくは離れた所にいたので現場は見てないが
新人クンが70センチクラスのスズキをバラしてしまったという。

釣りにバラシは付き物である。

もちろん、ぼくだってバラすときはある。

しかし、少なくとも仕事として釣りをしている以上
やっていいバラシと決してやってはいけないバラシがある。

なんと、新人クンは波打ち際でスズキにイトを切られて逃げられたという。

波打ち際まで寄せておいて
イトを切られて逃げられるとは、どういうことだ。

なぜ、ネットを用意していなかったのだ…
イトが傷ついている感触が当然、あったはずだ…
イトが傷ついているだろうはずなのに、なぜ強引に寄せた…
単なるケアレスミスではないか。

「いや~、あれはデカそうでしたね」
とニコニコ説明する新人クンを
海に叩き落とそうとするのを懸命に抑えた。

ぼくが駆け出しだったころ
当時の編集長とマダイ船に同船したときのことである。

幸先良くマダイらしき型ものがぼくにヒットしたが
途中の締め込みで、痛恨のバラシ。
仕掛けを回収すると
ハリスがチモトのあたりからスパッと切られていた。

それを見た編集長は
「お前の結びが甘かったんじゃねえか、どうやって結んだのか、今やってみろ」
と言われて、外掛け結びをやったところ
「そんな甘い結びだからハリが回っちまうんだよ、おまえは何でメシ食ってんだ!」
と、船から落とされそうな勢いで怒鳴られた。

結び方が甘かっただけで
なぜ、ここまで怒られなくてはならないのかといじけるよりも
釣りとは大の大人が、これほど真剣に取り組むものだったのか
とむしろ感動した。
その日から、ぼくが心を入れ替えたのは言うまでもない。

その後、アユ、メジナ、クロダイ、イシダイ、ヤマメ、サクラマスなどなど
いろいろなジャンルのエキスパートを取材する都度
いかに、みんな真剣に釣りに取り組んでいるのかを思い知った。

ぼくは、ベテランさんたちにかわいがられたが
それは多分、ぼくも釣りに対して真剣だったからではないか。

ネットも持たないでスズキを釣るようなスタンスだったら
ベテランさんたちが、ぼくに親身になってくれることはなかっただろう。

たかが釣り、されど釣りなのである。

(山根)




2010/7/4

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