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編集部2024年10月25日

世界一のクランクベイトができるまで。ラッキークラフトU.S.A. Behind Story 第23回 神の設計図

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リック・クランとのクランク作りにおいて、私は自身の能力・経験不足を「やり方」で補う道を選びました。具体的にはすみやかにサンプルを出すスピード感だったり、サンプルを数多く作ったりすることです。そして、リック・クランからは前号紹介した草案をもらい、参考モデルとしてのサンダーシャッドも送ってもらいました。

そしてRC1.5は静かに完成の時を迎えた

瀬川 稔(ラッキークラフトUSA社長)=語り  

この記事は『Basser』2024年1月号に掲載したものを再編集しています。Basserのバックナンバーは定期購読をお申し込みいただくとデジタル版バックナンバーが4年分以上読み放題! 詳しくはこちらをどうぞ

 目指すは「世界一のクランクベイト」。この連載では、ラッキークラフトUSAのルアーデザイナーと、大森貴洋、リック・クラン、スキート・リースら歴代プロスタッフが勝てるルアーを作るために繰り広げた知られざる切磋琢磨の歴史を紹介する。

以下、瀬川さん談。

◆前回:隠されたコンセプト

完成と疑念

リック・クランとのクランク作りにおいて、私は自身の能力・経験不足を「やり方」で補う道を選びました。具体的にはすみやかにサンプルを出すスピード感だったり、サンプルを数多く作ったりすることです。

そして、リック・クランからは前号紹介した草案をもらい、参考モデルとしてのサンダーシャッドも送ってもらいました。

つまり私は「神の設計図」を手にしたのです。しかも明確な指示付きで……。

しかし当時の私はそれでもなおメタ推理を繰り返していました。

私にとってこの仕事はアイデアと神の設計図を形にする作業ではなく、アイデアと設計図を元に「リック・クラン理想」を推理し、それを具現化するプロジェクトだったからです。

なぜそう考えるのか? ここで野球の話にお付き合いください。

ある超一流のピッチャーがいます。名前は出しませんが、アメリカでは「UEHARA」と呼ばれています。彼は非常に回転数の多い球を投げることで知られていますが、本人の頭の中ではリリースの直前に指をしならせて投げているそうです。しかし、実際にスローカメラで解析すると指は固定されているそうです。本人はそのことを知りません。

また、球史に残る某バッターにも似たエピソードがあります。アメリカでは「OCHIAI」という名で通っています。彼はダウンスイング(下方向にバットを振る)だと自身では言っていますが、連続写真を見ると完璧にアッパースイングです。

決して彼らが間違っていると言いたいわけではありません。トップアスリートが感覚で言う理想が本当の理想とは限らないことが多々あるということを伝えたいのです。

釣りの話に置き換えると、プロが「コレが欲しい」と言うものを完璧に再現した結果、実際には理想と離れたルアーになることは多々あることです。

我々ルアーデザイナーはプロの理想を聞き、科学的根拠を元にした推理や試行錯誤で現実とのギャップを埋めなければならないのです。これはルアーデザイナーの大切な仕事です。そうやって自分なりの答えを探して仕事をしないと、プロの意見に振り回されるだけになってしまいます。

そのようなことを考えながら私はリック・クランのリクエストと科学的根拠の隙間を埋めるようにしてサンプルを大量に作りました。もちろん当時の私にそんな哲学的なことを考える余裕はなく、実際には「ガチャの連続」のような日々だったと思います(笑)。

そして30個以上のサンプルからリック・クランがひとつだけ送り返してきたのは「12-A」。こうしてRC1.5は静かに完成の時を迎えたのです……。

しかし、OKが出たものの、実は私には不安があったのです。

これまで話してきたように、RC1.5はスモールプロファイル&ヘビー仕様のクランクとして作りました。でも、カバークランキングは浮力が命という側面もあります。本当に大丈夫なのか?

ルアーは完成したが、「勝ち方」は作れていないのではないか?

もう一歩踏み込んで言うと、RC1.5は60mmスモールサイズではありますが、48mmのDTNほど小さくはありません。リック・クランは本当に自分の欲しいものを作ったのだろうか? バスプロショップスの商売のための意向が入ったり、リック・クラン自身もビジネスを考えた結果の1.5なのではないか……。

完成の瞬間、私の頭をよぎったのはそんなことでした。

ルアー

30個以上のサンプルからリック・クランが選んだ現物。リップには12-Aの文字。1-A、1-B、1-C、2-A……とあり、数字は比重の違い、英字はウエイト位置の仕様を区別するためのものだった

 

 

 

◆第1回:すべては衝撃のひと言から始まった。「このルアー、泳いでないね」

◆第2回:勝つためのFAT CB B.D.S.2、アングラーに寄り添うB.D.S.3

◆第3回:プロに使われるルアーの絶対条件

◆第4回:「新しい振動」を探す旅のはじまり

◆第5回:ディープクランクを巡る熾烈 大森貴洋「やっぱりオレはディープはやらない」までの道のり

◆第6回:駆け出しのバスプロに寄り添うスモールクランク乱造時代

◆第7回:1尾への最短距離。“Heart of Young Angler”としてのフラットサイド

◆第8回:スキート・リースのAOYを決めた1尾

◆第9回:ポインター政権の始まりと終わり

◆第10回:ビッグジャークベイトの可能性

◆第11回:邪念と誠意のはざま/ライブポインター

◆第12回:勝てるジャークベイトの方程式

◆第13回:スレンダーポインターには誰にも言っていない秘密がある

◆第14回:ゲーリー・クラインが口にした衝撃の言葉

◆第15回:バスプロショップスが放った衝撃の矢

◆第16回:ライト&タフ7ftグラスコンポジットから学んだこと

◆第17回:ラッキークラフトUSAの秘密兵器

◆第18回:ルアーではなく「勝ち方」の開発。

◆第19回:ケビン・バンダムから学んだこと

◆第20回:重さがリズムを作る

◆第21回:今日の正解は明日の不正解かもしれない

◆第22回:隠されたコンセプト

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